長崎ピーススタジアムに訪れたサポーターの様子【写真:藤原裕久】

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長崎は新たなホーム「ピーススタジアム」で初陣、スタッフたちも懸命に動く

 V・ファーレン長崎は2024年10月6日、新たなホーム「ピーススタジアム」のピッチで躍動した。

 J2リーグ第34節大分トリニータ戦に意気揚々と挑んだ長崎は4-1の快勝。試合前から大きな話題を呼んだ最新のサッカー専用スタジアムは、激動の1日となった。現場のリアルな混乱と、訪れたサポーターの声を基に紐解いていく。

 大分との“九州ダービー”は、長崎の初陣で迎えることとなる。10月14日にオープン予定の「長崎スタジアムシティ」プロジェクトは、株主ジャパネットグループのリージョナルクリエーション長崎が、サッカースタジアムを中心にアリーナ・ホテル・商業施設・オフィスなどの複合施設を民間主導で開発するもの。ピーススタジアムは、その中心となる新たなサッカー専用スタジアムだ。

 6日の試合でスタジアムが先に“こけら落とし”となったなか、大勢のサポーターが各地から駆け付けた。長崎、大分のファンは、それぞれ自慢のクラブカラーユニフォームを着て会場へ。案内するスタッフが大きく声を張り上げながら、戸惑うサポーターたちを懸命に案内している様子が新鮮だった。

 正面の「PEACE STADIUM」の文字を横目に右奥に進めば、見えてくるのはフードコート。モバイルオーダーの機械が置かれ、飲食店が並ぶ室内には人が溢れかえっていた。その外でビールを嗜む長崎ユニフォーム姿の男女2人組に話を聞くと、「人が多くて結構待つから…唐揚げのために待っているんですよ」と苦笑い。「明確に何分待ちかとか書いてほしいっすよね」といった要望も上がる。運営側も、まだ試行錯誤の最中なのだ。

 約2万人を収容できるスタジアムに入れば、今度はクラブスタッフに加えシェフの恰好した人や、警備員、そして記者やカメラマンなど取材陣も含めて慌ただしく動いていた、特にクラブ広報は見つけるのも一苦労で、「今ちょっと手が離せないです!」と伝えられ、また別の仕事へと向かっていく。

 試合前の挨拶で株式会社ジャパネットたかた代表取締役社長の郄田旭人氏は「朝5時に起きた」と緊張の日だったことを明かしながら、平和への思いも明かしている。ほかにも、「ホームとアウェーロッカールームの広さが同じ」なこと、「試合中アウェーチームのゴールシーンもちゃんと平等に流す」こととも宣言。また元日本代表でクラブ取締役兼C.R.O(クラブリレーションズオフィサー)の高木琢也氏がスタジアムの上を滑空するジップラインに挑戦する姿もあり、何とも新鮮なオープニングだった。

 試合開始前からスタンドにまだ入りきっていないサポーターの歌うチャントが流れ、一部では入り口が分からず右往左往する人の姿も。そんな状況でありながらも、キックオフ前にはスタジアム席の大部分が埋まり動員数は1万9011人を記録した。試合はJ1昇格へ向け3位をキープする長崎がペースを握り、DFヴァウドの堅い守備、FWマルコス・ギリェルメやマテウス・ジェズスから始まる守備プレス、そこからのショートカウンターが見事にハマる。終わってみれば4-1で、新聖地に乗り込んだ大分を退けている。

 試合後にミックスゾーンに現れる長崎の選手たちは、ピーススタジアム初陣での勝利を噛み締めるかのように凛々しかった。新スタジアムを見た子供たちは「大きい!」と驚き、大人たちもスタンドでより近くの目線に選手の姿を映した。試合中にまだ緩さの残る芝が剥がれる様子も度々あり、新スタジアムの今後においてはより進化が可能なはず。ピッチから観客席まで最短約5メートルの臨場感も魅力な本拠地を誇りに、長崎はJ1昇格を目指しアップデートしてくれるはずだ。(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)