「スーパーのお米売り場と米屋の違い」を解説します(写真:takas/PIXTA)

お米はかつて、政治や経済と密接に関係し、お米を巡って争いやもめ事が起きていました。 第二次世界大戦中には、「米穀配給通帳」というお米の配給を受けるための通帳が配られ、これがなければお米を手に入れられないだけでなく、身分証明書の機能も果たしていました。

時代は進み、2024年の今、米不足によりお米の値段が上がり、家計を圧迫しています。そんな状況から、日々のニュースを気にしながら見る方も少なくないでしょう。今も昔も、お米は私たちになくてはならない存在です。しかし、お米について知らないことがたくさんあります。

今こそ知っておきたい「お米の教養」について、4000種以上のお米を食べてきた「おこめ鑑定士」である芦垣裕氏による新著『米ビジネス』より一部抜粋、再構成し、3回にわたってお届けします。

3回目は「スーパーのお米売り場と、米屋の違い」について解説します。

スーパーに並ぶお米は「ほぼ同じ品種」

突然ですが、皆さんはお米をどこで購入されますか。

スーパー、米屋、デパート、通販など、人によってそれぞれだと思いますが、最近のお米売り場はこれまでとは違い、かなり面白くなっています。まずは、皆さんが最も使われるであろう、スーパーのお米売り場と米屋の違いを見ていきます。

スーパーのお米の売り場に並んでいるお米のほとんどは、卸会社で精米したものです。

特に、都市近郊のスーパーでは、全国の銘柄米を取り揃えています。また、大手チェーン店のスーパーは、主たる納入先が決まっているので、地区ごとに同じお米が並んでいます。

例えば、「新潟県産コシヒカリ」「魚沼産コシヒカリ」に加えて、東日本で定番なのが「あきたこまち」「ひとめぼれ」などです。これらは、ほぼどこのスーパーにも置いてあります。また、西日本で多く並んでいるのは「ヒノヒカリ」です。

売り方としては、スーパーには2kgや5kgの小袋に入ったお米が何種類か置かれています。特売品になると、5kgや10kgの袋で売っているお米も見られます。 また、地方のスーパーでは地元の銘柄米や、地元の米業者のお米もよく並んでいます。

米屋でお米を買うメリット

一方、お米屋さんはどうでしょうか。昔のお米屋さんでは、5kgの袋に入れたブランド銘柄米を前面に出し、おすすめ品として最前列に並べるケースがよく見られました。

昔ながらのお米屋さんは今でもありますが、世代交代がなかなかうまくいかないなかで、大変苦労をされているようです。

最近のお米屋さんは店舗を清潔にして、袋に詰めたものはあまり並べていません。特売品や価格の安い業務用白米を並べることはありますが、お米だけではない産地の農産物や畜産物が売られたりもしています。

おすすめ品やこだわり品は玄米で展示しており、コーヒー豆を売る専門店のように樽に入れたり、透明のケースに入れたりして、来店したお客様にお米の説明をしながらその場で精米する、といったお米屋さんも増えています。

こうすることで、精米したばかりの新鮮なお米が提供でき、大きさや色などの違いも魅せやすいメリットがあります。

また、最近では生産者から直接お米を仕入れているお店も多く、生産者自らお店に訪れイベントを開催するケースも出てきています。もちろん、米農家直送のお米は米屋の店主自らが買い付けに行っていて、生産者の写真が店舗内に貼られていたりします。

対面販売の場合、お米へのこだわりなどの話も聞けて、お米選びの幅を広げることができます。

さまざまなお米が並んでいるなかから自分で選ぶ際、皆さんは何を基準に選びますか。

「コシヒカリ」をはじめとした銘柄、産地、値段、量など、何を見れば良いのか難しいところだと思います。そこで、安くておいしいお米を選ぶためのポイントをご紹介します。

おいしいお米を選ぶポイント

ポイント1 お米の粒を確認する

まず、直感でも良いので、気になるお米を2〜3つ選んでよく見てください。このとき、袋を見てお米の粒が見えるかどうかを確認しましょう。中が見えないとお米の状態がわからず、情報不足ななかで買わなければならないので、あまりおすすめしません。

中が見えたら、次はお米の粒を見てください。割れていたり、ヒビが入っていたり、着色していたり、白いお米が多かったり、粒が揃っていなかったり……そのような状態だとおいしいお米ではありません。

お米は、同じ産地・銘柄でも、ときに状態が悪いこともあります。買おうとしている商品そのものの状態は、必ず自分の目で確認するようにしましょう。

ポイント2 好みを確認して銘柄を選ぶ

自分自身、もしくは自分の家族は、どんなお米をおいしいと思って食べているのか、それを思い返してください。

柔らかいお米、粘りのあるお米、しっかりした硬めの食感のお米、甘い香りのするお米……などといった感じです。そして、それぞれの好みに合ったお米を選んでみてください。

おいしいお米を食べたことがないという方は、山形県産の「つや姫」をまず食べてみてください。このお米は万能品種でどんな食材にも合いますし、食感はモチモチして、ちょうど良い甘味とうま味が味わえます。そのうえで感じたことをもとに、次のことを参考にしてお米を選ぶと良いでしょう。

まず、甘味やうま味といった味の濃さを求める方は、「コシヒカリ」や「ミルキークイーン」などの甘くて粘りのあるお米がおすすめです。反対に、あっさりしたお米を求める方には、「ひとめぼれ」や「ササニシキ」が良いでしょう。

お米のタイプとしては、「甘くて粘りのある、白飯で食べたいお米」「あっさりしたご飯が好きで、食材を活かせるお米」「どんな食材にも合うお米」の3つで考えると選びやすいです。

玄米を購入する場合は?

ポイント3 栽培方式を確認する(特に玄米の場合)


場合によっては、JAS有機米(無農薬栽培)や減農薬栽培、自然栽培など、栽培方式を見ることも大事です。特に、玄米のまま炊いて食べる場合は、この点にお気をつけください。

糠の部分に農薬などが残っている場合があります。白飯で食べる場合は、農薬はほぼ精米によって除去されるので、そこまで気にする必要はありません。

なお、レストランや飲食店で扱うご飯の場合は、その食事の方向性に合うもので決めてみてください。少しでも安いからといって選ぶと、料理全体の価値が下がります。

料理に合ったおいしいご飯を選ぶことがお店の繁盛にもつながるので、お米選びにはぜひ慎重に取り組んでみてください。

(芦垣 裕 : 有限会社初音屋 代表取締役/ 米・食味鑑定士/水田環境鑑定士/調理炊飯鑑定士/おこめアドバイザー)