Photo: 武者良太

ライバルよりは大きいけど、横位置ディスプレイが見やすいというメリットもありますねコイツ。

つい先日、日本でも発売が開始された全天球カメラの「Qoocam 3 Ultra」。こちらのメーカー、Kandaoは、知らない人も多いかもしれないけど、2018年ごろからプロ用の8K全天球カメラや、立てて全天球、折り曲げてVR180の動画が撮れる面白カメラを作ってきたんですよね。

最新作のQoocam 3 Ultraは8K 10bit HDRや、4K 120fpsに対応したモデル。メーカーからサンプル機をご提供いただいたので、さっそく気になるところをチェックしていきましょう。

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本体の大きさは手で握れるギリギリのサイズ

半径180度の半球エリアを捉えるカメラ&レンズが2つ合わさった全天球カメラ。使われているセンサーは1/1.7インチx2枚で、レンズの明るさはF1.6。ハンディサイズの全天球カメラのなかでは高スペックモデルです。

写真なら9600万画素(13,888×6,944ピクセル)、動画なら8Kが撮れます。このサイズで。すごいな。

個人的にお気に入りなのが、前後左右1つずつの4chマイクを備えているところ。この写真では2つしか写っていませんが、反対側にもマイクホールがあります。

このマイクにより、メーカーいわくAudio SuperSteadyという空間オーディオ(パノラマサウンド)が録音できます。VR用の動画に仕立てた際に、向いている方向に合わせた音が聴こえるんですね。僕の記憶に間違いがなければ、コンシューマー用全天球カメラとしては2017年のRICOH THETA V以来の搭載となるはず。

専用アプリを使えばSuperSteadyという手ぶれ補正も生きるし、IP68の防塵防水機能も持っている。隙が…ない!

前後レンズの軸が揃っていないタイプ

さて、全天球カメラには大きく分けて2つのタイプがあります。前後のレンズ・センサーの軸が揃っているものと、揃ってないものがあります。前者はRICOH THETAシリーズやInsta360 Xシリーズでおなじみのやつ。後者はGoPro MAXなどで採用されたケースです。QooCam 3 Ultraも後者ですね。

前者は、最近の望遠スマホでも使われている屈曲光学系を採用しているというのが大きな違い。簡単にいえば画質が劣化しやすい方式なんです。後者はレンズとセンサーの軸をあわせられるメリットがあります。

本体サイズや見た目のなんとなくなお気持ち安定感を重視するか、物理上画質が劣化しにくい構造とするか。このあたり、メーカーごとの思想が見えてきますね。

DNGで記録できる写真画質はマジでいい

まずは写真画質からチェック。保存フォーマットは8bitのJPGのみ、もしくは10bitのDNG(RAW)+JPGが選べます。また白飛びを抑えるダイナミックレンジブースト機能がON/OFFできます。これが予想以上に差がある。

こちらがJPGで保存した写真です。盛大な白飛びに木々の影はまっくろ。全体の色彩もダークです。

そしてこっちが、 ダイナミックレンジブースト機能をONかつ、10bit DNGからWindows用の専用アプリ「QooCam Studio」を使って8bit JPGとして出力した写真です。同じカメラから出てきた絵面だとは思えない。

いくら13,888×6,944ピクセルの写真データが記録できるといっても全天球ゆえに、8bitのJPGだと細部のニュアンスが勢いよく潰れるし、色味もオーバーシュートする要素によって引っ張られちゃう。目的の被写体にではなく、世界全体に露出をあわせる全天球カメラだからこそ、10bit記録が必要なんだって感じしてくるでしょ。

後処理必要だけどブレ補正もバッチリ

動画も見ていきましょう。8K 10bit 30fpsの全天球映像の一部を切り取ったシーンでご覧ください。QooCam Studioの「ホライゾン補正」で、歩行時のブレを抑えています。180度魚眼レンズの弊害で逆光の影響が出てしまっていますが、ブレ補正の精度は最新アクションカムに匹敵するとみた。

歩いているときよりも強い衝撃を受けるEVバイクでの走行シーンもどうぞ。こちらも同じく「ホライゾン補正」。カゴから伸ばした一脚にQoocam 3 Ultraを固定しましたが、この安定度の高さ、めっちゃよくない?

スローモーションは5.7K 60fpsから引き伸ばして使いたい

残念だったのは4K 120fpsの動画を24fps化したスローモーション動画です。うーん。画質が、ね。水面も大理石の壁も、質感がかなり消えています。

5.7K 60fpsの動画を24fps化したスローモーション動画を見ると、こちらはニュアンスを感じられる映像になっていますね。2.5倍スローモーションはあまりインパクトが出ないかもしれないけど、品質を気にするならこっちの設定を使ったほうがいいかも。

失敗しにくい全天球カメラとしてオススメできる

全天球カメラの撮影データはとにかくファイルサイズが大きくなりがち。だからPCやスマホに転送する時間がかかるし、アプリで修正したあとの映像/写真を確認するのも大変です。せっかく街を練り歩いて全域を撮っても、家に帰ってからチェックしたら白飛び黒つぶれが多くて使えなかった…ということもあります。

Qoocam 3 Ultraの一番いいところは、10bitで撮影しておけば失敗しにくいこと。さらにファイスサイズは大きくなるけど、ダイナミックレンジに余裕があるからポスプロ作業も楽になるんですよね。

価格はコンシューマー用としては高価な9万6800円ですが、あらかじめ128GBのストレージも入っていることですし、高すぎるモデルではないとみましたよ。

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Photo: 武者良太, Source: Kandao