「結局、岸田。岸田がすべてを決めたというわけです」

 旧安倍派のベテラン議員が唸ったーー。

 候補者9人という大乱戦の末に誕生したのは石破茂新総裁だった。キーマンは、意外なことに茂木敏充前幹事長だったという。無派閥の中堅議員が明かす。

麻生太郎元首相に『高市(早苗)さんで勝てる』と耳打ちしたのは茂木さんです。茂木さんは早々に自分に勝ち目がないことに気がつきました。

 次に必要なのは “勝ち馬” に乗ること。幹事長ですから、地方票(党員・党友票)の情報が入り、高市優勢と判断したのです。麻生さんは茂木さんの口車に乗って、決選投票は麻生派として高市さんを推すことにしました」

 麻生派から総裁選に出た河野太郎デジタル担当相と上川陽子外務相が決選投票に進む可能性は、すでに消滅していた。岸田文雄前首相は、旧岸田派が推す林芳正官房長官が決選投票に進出しない場合、党員・党友票の多い候補者への投票を指示したとメディアに報じられていた。

 高市氏が勝てば、岸田政権を支えた枠組みである “岸田、麻生、茂木” の三頭政治が復活するーー。麻生氏の “夢想” はしかし、裏切られることになった。

「麻生さんは総裁選の前日、『高市推し』にするよう電話で岸田さんを口説いたそうですが、岸田さんは最後まで言を左右にするだけだったようです。

 そもそも、岸田さんからすれば、茂木さんは幹事長であるにもかかわらず、政権末期はまったく岸田政権を支えるそぶりさえ見せず、岸田さんのアタマ越しに麻生さんと会合を持つなどしていました。

 岸田さんには、最初から “茂木さんの描いた画にのる” という選択肢はなかったんです」(政治担当記者)

 麻生氏にとっても、岸田前首相の高市嫌いは計算外だった。実際、高市前経安相が党員・党友票でトップだったことがわかると、岸田前首相は「とにかく高市さんははずせ」と強く指示したのだ。

「岸田さんは外相経験が長いので、“外交の岸田” を自負しています。なかでも日中・日韓関係には腐心していました。高市さんのタカ派的外交方針で、これまで築き上げた関係が崩れることを危惧していました」

 と、旧岸田派の議員。さらにこう明かした。

「それに、高市さんは防衛増税では閣内不一致と取られても仕方がない内容をSNSに投稿し、能登半島地震後には、大阪・関西万博の延期を岸田首相に進言したと自ら明かしています。

 どちらも高市さんの所管外ですが、岸田首相からすれば、高市さんに余計な仕事を増やされだけです。

 実は、近しい議員の前だけですが、今年に入って岸田さんは、高市さんのことを “タリバン” とあだ名をつけて呼んでいたんです。高市さんの超保守的でタカ派な姿勢が、イスラム原理主義の武装勢力であるタリバンと似ているというところから、つけたあだ名です。

“石破自民” が総裁選で負けない限り、高市さんも茂木さんもかつての力を取り戻すことはないでしょう。これまで好き勝手に岸田政権の足を引っ張ってきた因果応報というわけです」

 高市氏の、次の一手やいかに。