工作機械株の仕込み場到来へ、世界経済の先行指標が示す波動に刮目 <株探トップ特集>
VDWが受注の先行きを楽観視する一因として考えられるのは、今年後半に回復が見込まれている半導体製造向けの需要だ。日本の工作機械業界でも、半導体製造向けのほか、自動車向けや航空機向けなどの需要が盛り上がり、25年から26年にかけて次の受注のピークが来る、と考えられているようだ。
日本の工作機械受注は、東証株価指数(TOPIX)の12カ月先予想1株当たり利益(EPS)と中期的な連動性も高い。工作機械受注の増加が見込まれるということは予想EPSの増加も期待できるということであり、今は乱高下が激しい日本株の今後を楽観視する材料と考えられる。
そのうえで工作機械株に目を向けると、中国の景気減速懸念と円高警戒を重荷に出遅れ感を強めた銘柄が散見される。CNC(コンピューター数値制御)装置で世界シェアトップクラスのファナック <6954> [東証P]の株価は年初来で0.4%安、産業用ロボットの安川電機 <6506> [東証P]は18.8%安と、TOPIXの12.0%高に対し、パフォーマンスで劣後した状況だ。この先の受注環境を踏まえると、悲観に傾いた市場の見方が修正された際には、株価の戻りに拍車が掛かることが十分見込めると言えるだろう。中期的な観点でみても、今の株価水準は「仕込み場」と捉えられそうな銘柄はいくつか存在する。
●オークマ・牧野フ・シチズンはPBR1倍割れ
DMG森精機 <6141> [東証P]は、XYZの直線3軸に2軸の回転傾斜軸を加えた5軸加工機や複合加工機の販売を伸ばしている。24年12月期第2四半期累計(1~6月)の最終損益は9億3300万円の赤字(前年同期は149億900万円の黒字)で着地。ロシア政府により現地法人の株式が収用されたことに伴う関連損失の計上が尾を引いている。ただしDMG森精機は海外直接投資保険に加入しているとあって、今後求償金額が確定し、通期の最終損益の黒字額予想(前期比6.1%増の360億円)に変更がないとの見方が広がった場合は、安心感が広がりそうだ。同社は成長が見込めるインド市場での生産拡大も図っている。
工具の自動交換機能で加工時間を短縮できるマシニングセンター(MC)で存在感を持つオークマ <6103> [東証P]は、今期は最終減益の見通しで株価は年初来で0.5%安。8月22日に1対2の株式分割を発表している。牧野フライス製作所 <6135> [東証P]も今期は最終減益の見込みで、株価は前年末終値近辺で推移。両社ともPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っている。
シチズン時計 <7762> [東証P]の25年3月期第1四半期(4~6月)決算は2ケタの営業減益となり、売上高営業利益率は悪化した。時計事業ではインバウンド需要回復の恩恵を受けながらも中国の市況悪化でアジア向け販売が低迷。工作機械事業も低調に推移している。しかしながら子会社のシチズンマシナリーでは大型機の需要拡大を背景に北上事業所の生産能力の増強に動くなど成長に向け舵を切る。PBRは1倍割れ。配当利回りは4.8%台と高水準だ。
●THKとユニオンツルは最終増益を計画
工作機械などに搭載され、物体を直線に動かす直動案内機器「リニアガイド」で高シェアを誇るTHK <6481> [東証P]の24年12月期第2四半期累計(1~6月)の最終利益は4割減益ながら計画を上振れして着地。円安効果に加え、産業機器事業の需要回復が寄与した。生成AI市場の拡大で画像処理半導体(GPU)ボードやマザーボードなどの高多層基板向け高性能ドリルの需要が増加しているユニオンツール <6278> [東証P]にとって、工作機械需要の回復は切削工具の販売を下支えする。通期ではTHKは3期ぶり、ユニオンツルは2期ぶりの最終増益を計画する。
射出成形機を主力とする芝浦機械 <6104> [東証P]はインドにおいて第2工場を開設した。成長市場で事業拡大を図る同社の株価は足もとでは年初来高値圏で推移している。CNC精密自動旋盤のツガミ <6101> [東証P]の25年3月期第1四半期(4~6月)の最終利益は前年同期比2.1倍の27億500万円。大幅増益となったほか、通期計画に対する進捗率は41%台と好スタートとなった。
放電加工機のソディック <6143> [東証P]は8月、円安効果を反映する形で24年12月期の最終利益予想を引き上げた。中国での工場集約など構造改革効果が表れつつある同社のPBRは0.5倍近辺で、配当利回りは3.6%台に上る。ツバキ・ナカシマ <6464> [東証P]は、今期は3期ぶりの最終黒字を計画。主力製品の精密セラミックボールは工作機械スピンドルなどに使われている。PBRは0.4倍台。配当利回りは5.0%近辺と高水準だ。
電子部品大手のニデック <6594> [東証P]が旋盤メーカーのTAKISAWAを買収したことも工作機械業界では話題となった。ニデックはこれまで工作機械メーカーを含め、M&Aを積極的に進めており、今後の展開が注目される。このほか工作機械株としては、スター精密 <7718> [東証P]や黒田精工 <7726> [東証S]、岡本工作機械製作所 <6125> [東証S]のほか、DMG森精機グループで親子上場というテーマを持つ太陽工機 <6164> [東証S]、加工品を固定するコレットチャックで高シェアのエーワン精密 <6156> [東証S]などがある。
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