視察先の食堂で海産物などを試食する岸田首相(中央)(8月24日、福島県いわき市の小名浜魚市場で)

写真拡大

 日中両政府が、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡る対立を解消する方向で一致したことが19日分かった。

 国際原子力機関(IAEA)が海水や魚類の調査といったモニタリング(監視)を拡充することで日本政府と合意する。調査範囲の拡大を求めてきた中国は歓迎する見通しで、これにより、中国の日本産水産物の輸入再開に向けた動きが加速する。

IAEAが監視態勢を拡充

 複数の日本政府関係者が明らかにした。岸田首相が20日にもIAEAのラファエル・グロッシ事務局長と電話会談し、モニタリング拡充の方針を申し合わせる。

 処理水放出に合わせて中国は、日本産水産物の禁輸措置を取り、日中両国は専門家なども交えて協議を続けてきた。中国は原発周辺の土壌など調査範囲の拡大を要求する一方、日本はIAEAの基準に沿って必要な調査を行っていると反論するなど、両国の主張は平行線をたどってきた。

 今回の拡充は、IAEA主導の枠組みの下での監視態勢を重視する日本の立場に沿った一方、中国の立場にも一定の配慮をした対応となる。中国は拡充措置が取られたら、輸入を着実に回復させる方針という。

 IAEAは、放出直前の処理水の安全性を検査している。新たな対応として、中国を含めた各国の分析機関を加えて監視態勢を拡充する案が有力となっている。

 IAEAは各国の分析機関と連携し、福島第一原発周辺の複数の海域で海水や海底土のサンプルを採取するなどして、放射性物質の数値に異常がないかどうかの監視も行っている。今後、採取地点を増やすことなども検討するとみられる。