[9.13 J1第30節 川崎F 3-2 鳥栖 U等々力]

 試合後の涙は手応えがあったからこそだった。サガン鳥栖MF久保藤次郎はチーム1点目やPKの2点目につながるハンドを誘発するなど躍動。試合後には「久しぶりにへし折られたような感じがした」と思いを語った。

 加入から二度目の先発で奮起した。前半11分に先制を許したが、久保は右WBで果敢に攻め立てる。その動きが結実したのは後半5分。敵陣内の左サイドから上がったクロスがファーサイドにこぼれると、そこに久保が詰めた。「とにかく入ってくれと祈るような感じで打った」。ミートさせることに集中して打ったボールはゴールに突き刺さった。

 ようやく追いついた鳥栖だが、前節同様に再び勝ち越し点を決められる。しかし後半終了間際に久保のシュートが相手のハンドを誘発し、PKを獲得。MF清武弘嗣が決めて2-2とまたしても試合を振り出しに戻した。

 後半アディショナルタイムで勢いに乗ったまま勝利を目指すか、勝ち点1を取りに行くか。久保は「そこが曖昧だった」と振り返る。さらに得点を目指すなかで「最低限のリスク管理は監督も指示をしていたので、シンプルに行ければよかった」と後悔をにじませていた。

 今夏に名古屋グランパスから期限付き移籍で加入し、8月11日にデビュー。まだ鳥栖でのプレーは約1か月。しかしレンタルで入ってきた立場にもかかわらず、久保は敗戦後に涙を流した。

「神戸戦(●0-2)みたいに自分たちが何もできなかったわけではなく、しっかり自分たちが準備してきたものを発揮しつつ、あそこまでの試合展開にできたのに。それを自分たちで崩すというのはけっこうダメージはありました」

 最下位に沈むなかで4連敗と苦しい時間は続く。今節は勝利こそなかったが、久保は「着々と成長はしている」と手応えも感じていた。「ただ、その成長スピードをもっと上げていかないと。このサッカーを貫くならもっと成長スピードを上げていかないと残留は厳しい。そのサッカーを貫くプラス仕上げの部分」。残り8試合で勝ち点を積み重ねるために、この敗戦を糧にしていく。

(取材・文 石川祐介)