投票の在り方も疑問視 NY紙記者がリンドーアではなく大谷翔平をMVPに推す理由「WARを神のように扱うのをやめるべき」
大谷とリンドーア。今季のナショナル・リーグのMVP争いはこの二人が中心になりつつある。(C)Getty Images
シーズン終盤に入り、大谷翔平(ドジャース)の勢いはなおも止まらない。
現地時間9月6日終了時点で138試合に出場し、打率.291、45本塁打、100打点、160安打、46盗塁、OPS.993のハイアベレージをマーク。年間51発&53盗塁ペースとし、史上初となる「シーズン50本塁打・50盗塁」の金字塔も現実味を帯びてきている。
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圧倒的な打力を見せつけている。ゆえに大谷はナショナル・リーグのMVP候補となるわけだが、ライバルがいないわけではない。目下、対抗馬と目されているのはメッツのフランシスコ・リンドーアだ。
リンドーアも今季は好調をキープ。シーズン後半戦に調子を上げており、打っては打率.273、30本塁打、84打点、158安打、26盗塁、OPS.840の好成績。さらに遊撃手としても高い貢献を発揮。「リーグで同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」を示す『UZR』は「2.2」と上々の数字を残している。
過去、フルタイムの指名打者にMVP受賞者はいない。ゆえに守備でも安定し、打撃でも好成績を収めているリンドーアこそ“総合的に上”と推す声は強い。
一方で50-50の偉業に迫る大谷の貢献を評価すべきという声もある。それは他でもないメッツの地元ニューヨークに拠点を構える現地記者も論じているところだ。
日刊紙『New York Post』のジョエル・シャーマン記者は「ショウヘイ・オオタニとアーロン・ジャッジはプレーオフ進出がほぼ確実なチームで、歴史を追い続けている。よってMVP賞を受賞するはずだ、いや受賞する」と断言。打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標「WAR」を重視するMVP投票に疑問を投げかけている。
「WARを全知全能の神のように扱うのをやめるべきだ。そうした議論に終止符を打つべきなんだ。なぜならWARを推し量る上で、そのすべての要素とバランスを心得ている投票権を持つ記者はおそらく一人もいない。ということは、結局のところ、MVPは『Valuable(価値)』を最もよく体現しているのは誰なのか、ということに尽きるのではないだろうか。答えは至って単純だ。要は接戦になった場合は、これまで見たことのない選手を選ぶべきだということである」
無論、シャーマン記者がリンドーアを過小評価しているわけではない。「信じがたい選手だ」とも強調している。しかし、同記者はこうも続けている。
「リンドーアはあらゆる意味でメッツにとってかけがえのない存在だ。しかし、唯一無二の男が歴史を変えようとする中で、ナショナル・リーグで最も価値のある選手になるにはそれだけで十分なのだろうか?」
例年以上に接戦が見込まれる今シーズンのMVP投票。その中で「最も価値がある」と称賛されるプレーヤーは誰になるだろうか。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]