(写真:kouta/PIXTA)

「結婚相手を選ぶ際、やはり収入の高い人を選んだほうがいいのでしょうか? でも相手の収入を聞くのが失礼な気がして……」

都内にある某有名結婚式場の「花嫁講座」で講師を務めた際、こんなご質問をいただいたことがあります。もちろん、結婚生活を送るうえで、経済的に安定していることは大切な要素になるのは言うまでもありません。

しかし、経済的な安定は収入だけでは決まりません。多くの人が見落としがちな、別要素が思わぬ落とし穴になるケースもあるのです。

稼ぐ力、貯める力、殖やす力

実は、収入の高い人=経済的に安定している人かというと、そうとは言い切れません。いくらお金をたくさん稼いでいても、たくさん使ってしまい、毎月の残金がほとんどないという人、もっと言えば借金を抱えている人もいます。

一方で、稼ぎはそれほど多くなくても、貯められる人、上手にお金を殖やせる人もいます。

お金を稼ぐ力、お金を貯める力、お金を殖やす力は、それぞれまったく別物なのです。

そこで、大事にしたいポイントの1つ目は、収入(稼ぎ)よりも支出(使い方)に注目することです。相手の支出、すなわち“お金の使い方”を見ることはとても大切です。

“お金の使い方”の中には、単純に使う(消費)のほかに、貯める(貯蓄)、殖やす(運用)といったお金の使い方も含まれますので、その人が何にいくら使っているのかを見ることで、おおむねその人の価値観や金銭感覚を知ることができます。

おいしいものを食べることが好きなグルメ派であれば、月々の支出の中でも食費が多くなりがちです。ファッションに興味があれば、洋服やコスメなどにお金をかけるでしょう。旅行が好きな人は旅に、車が好きな人は車に、ゲーム、ギャンブル、お酒など……、もし相手のお金の使い方や、金銭感覚に違和感を覚えることが多い場合、それは収入にかかわらず、結婚生活においてもめることも多くなるでしょう。

また、お金を使う前にしっかりとしたコミュニケーションが取れるかどうかも重要です。自分が知らない間にお金を好きなことに使ってしまった、実はお金を借りていた、なんていうこともあります。

特にお金に関しては、相手に聞きづらい、言いづらいという思いから、うやむやにしているケースもあり、お互いの価値観をしっかり話し合えるか、確認し合えるかどうかもパートナーを選ぶうえでは大切です。

ストックである資産の重要性

2つ目のポイントは、相手の資産にも注目してみることです。

結婚すれば、目先の収入だけでなく、2人で資産を築いていく必要があります。そのため、資産をもっている人、築ける人と結婚することは将来、大きな差を生みます。なぜでしょうか?

まず「資産」とは、現金や預貯金はもちろん、株式や債券、投資信託や生命保険(解約するとお金が戻ってくる貯蓄型の保険)、不動産など、お金に変えることができるものすべてを指しています。すなわち、資産を築いていくこと自体が、将来的に収入を生み続けていく源泉になるのです。

ちなみに、親からの相続が見込まれる場合、その相続財産も資産に含まれます。そして、退職金や企業年金などがある企業にお勤めの場合、こうした会社で積み立てられている資産も将来的にはその人の資産になります。

一方で、負の資産(ローンや借金)も考えられますので、その有無や金額も確認しておくことはとても大事です。借金については、お付き合いしていても伝えにくいことが考えられますが、車のローンや、住宅ローンも負の資産に含まれますので、まずはこうしたローンから現時点でどのくらいの残債があるのか確認することから始めるといいと思います。

我が家の場合、夫婦でお互いの資産一覧表をつくって、定期的に確認しています。どこにいくら投資しているのか、どんな保険に入っているのか、すべてが一覧になっていますので、投資や保険の見直しにも有効です。

iDeCoやNISAで行っている積立投資や、貯蓄型の生命保険などは時間とともに資産額は増えていきますので、見直しの際に最新の価値を上書きして一覧を更新するようにしています。

こうすることで、お金が貯まっていく楽しみも夫婦で共有することができますし、金銭的な価値観を定期的にすり合わせできることにもなりますのでお勧めです。

選ぶ保険から相手の価値観がわかる

相手がどんな保険に入っているのか聞いてみることで、相手の価値観が見えてくることもあります。保険にも掛け捨ての保険もあれば、積立型の保険もありますので、これから家族になり、どちらを活用しながら資産形成を行っていくのかなど話し合えることも必要です。

マイホームも「賃貸」がいいという人もいれば、「購入したい」という人もいます。ちなみに我が家は賃貸派です。家族の、特に子どもの状況によって住む場所を変えたいからです。一方で、不動産を購入していないかというとそうではなく、不動産投資をすることで、同様の効果を得ることができています。

そもそも、私たちは何のためにお金を稼ぎ、何のために貯めているでしょうか?

結局は何かにそのお金を使うためであり、お金はいかに使うかによって人生を変えることができます。上手に使えば人生を豊かにすることができます。

すなわち、お金は人生を豊かにするためのものであって、結婚するなら、使い方に違和感のない人、資産が築ける人、お金の上手な使い方ができる人をお相手に選びたいところです。

(長谷部 真奈見 : FinCube代表取締役、フリーアナウンサー)