木製バットで本塁打量産 宇野真仁朗はどんな選手になる?【高校生ドラフト候補チェック】

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宇野は木製バットでも結果を残していることが評価されている(C)産経新聞社

 多くのドラフト候補が出場した夏の甲子園。その中でも強いインパクトを残した選手の1人が早稲田実の宇野真仁朗だ。初戦の鳴門渦潮戦、第1打席で強烈な当たりのレフト前ヒットを放つと、相手の守備位置が深いのを見ると一気に加速して二塁を陥れる(記録はツーベース)。さらに2点を先制された直後の第2打席では満塁の走者一掃となるレフトフェンス直撃のタイムリーツーベース、第5打席でもレフト前ヒットと3安打3打点の大活躍を見せた。

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 宇野の評価を上げているのが、今春から木製バットを使用しているという点だ。西東京大会終了時点での高校通算本塁打は64本だが、そのうち16本は木製バットで放ったものだという。金属バットに比べて木製バットは芯が狭く、遠くへ飛ばすにはパワーだけではなく高いミート力と技術が必要となる。そんな条件の中で、これだけホームランを放つことができる高校生はなかなかいるものではない。甲子園の大舞台でも持ち味を発揮したことで、視察していたスカウト陣からも高く評価する声が多く聞かれた。

 打撃以外の持ち味はその脚力と高い走塁技術である。先述した通り、鳴門渦潮戦では第1打席でレフト前ヒットをツーベースにして見せたが、第5打席のヒットでも相手のレフトが打球処理をミスする間に一気に二塁を陥れている(記録はレフト前ヒットとレフトのエラー)。また西東京大会でも6試合で4盗塁を記録しており、ただ脚力があるだけでなくスタートの良さも際立っていた。ホームランを打てる長打力がありながらも、これだけ走塁の意識が高いというのも大きなプラス要因と言えるだろう。

 一方でスカウト陣から不安要素として聞かれたのがスローイングだ。三遊間の深いゴロをさばいた時にはワンバウンドでの送球となることが多く、それ以外のプレーでも少しボールの勢いが物足りないシーンがあったことは確かだ。少し肘を痛めているという話もあり、プロ側としてはその回復具合はやはり気になるところだろう。ただ送球以外の守備に関してはフットワーク、ハンドリングも巧みで、イレギュラーした打球も軽快に処理するなど決して守備力が低いわけではない。U18侍ジャパンのメンバー入りも果たしたが、それも当然というプレーぶりだった。

 やはり気になるのはプロでもショートができるかという点だが、スローイングの不安が解消されない場合はセカンドで勝負するというのも一つの選択肢ではないだろうか。スナップスローも巧みで、短い距離の送球は安定しているように見え、フットワーク的にもセカンドは十分こなせる可能性は高い。実際、高校でも下級生の時はセカンドを任されており、難なくこなすことができていた。またプロのスカウトからは「あれだけ打撃が良ければ首脳陣が他のポジションでも使ってみたいと思う」というコメントも聞かれており、そこまで守備がネックで評価が下がることはなさそうだ。

 そんな宇野の将来像だが、個人的にイメージがピッタリ当てはまると感じるのが浅村栄斗(楽天)だ。浅村が182cmなのに対して宇野は178cmと一回り体は小さいものの、ボールをしっかり呼び込んで長く見て、鋭く体を回転させてとらえるところは共通している。また浅村も高校時代はショートで、プロではセカンド、さらにサードとコンバートされているが、それも打撃の評価が高かったからと言える。宇野もそういう意味では打撃でまずアピールしていくことが、より重要になってくるはずだ。

 U18アジア選手権(9月2〜8日、台湾)は木製バットで行われるが、実戦での木製バットの経験は宇野が頭一つ抜けていることは間違いない。U18侍ジャパンでもその打棒で、チームを牽引する活躍を見せてくれることを期待したい。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。