中華の名店はこの4軒を押さえたい!ブームを作ったレジェンドたち
近年、東京の中国料理は“ネオ中華”や“ガチ中華”、“カウンター中華”など様々なブームを生み、大きく進化を遂げた。
その裏には、時代に合わせて柔軟な発想を持ち、挑戦し続けてきた料理人たちの姿がある。
現在の中華の流行を生み出した先駆けの名店4軒をご紹介!
1.フレンチのごとく、少人数多皿で楽しむヌーベルシノワを確立
『トゥーランドット臥龍居』@赤坂
脇屋シェフが世界中から集めたアートやアンティークの家具が調和を見せるモダンな店内はデートにもふさわしい
中国料理界のレジェンドである脇屋シェフの出発点、赤坂にある『トゥーランドット臥龍居』は、2011年にオープンした。
小澤さんは、脇屋シェフの料理に惹かれて飛び込み30年。「脇屋は、料理人としての自分の父であり、刺激を受け続けています」
“脇屋イズム”を深く理解する優れた右腕として、開店以来厨房をまかされているのは、Wakiyaグループの統括料理長でもある小澤善文さん。
定番のアラカルトから、4種類のグレードを用意するおまかせコース、さらには季節ごとのフェアの料理といった膨大なメニューを脇屋シェフとともに組み立て、提供する。
中国で縁起がいいとされる「9」にちなんだ「九つの喜び!九種前菜盛り合わせ」¥2,800。“美味しい料理を少しずつ食べたい”という願望を叶えてくれる
最もアイコニックな「九種前菜盛り合わせ」を筆頭に、「トウモロコシの二種仕立て」のようにビジュアルの美しさと季節感とを兼ね備えたモダンな料理群は『トゥーランドット臥龍居』ならでは。
旬の恵みを頂けるのもWakiya中華ならでは。「トウモロコシの2種仕立て」¥2,500。ユキツバメを入れた冷製スープと、カットした実とピューレを巻いた春巻は初夏定番の逸品
それと同時に「フカヒレの上海風煮込み」に代表される、中国料理といえば、の「乾貨(高級乾物)」も常に最善の状態でスタンバイ。王道を求めるゲストの心も満足させてくれる。
懐深く、あらゆる期待に応える、モダンチャイニーズの巨塔なのだ。
2.ガチ中華とナチュラルワイン。斬新な提案がブームに
『味坊』@神田
現在は個性的な中国地方料理店を12店舗展開。近郊に各種野菜を農薬不使用でつくる広大な自社農園も構える
2020年代に入りブームの高まりを見せている「ナチュラルワイン」。化学肥料や薬品を使わず、できる限り自然な製法で造られたワインは、多彩な味わいや軽やかな飲み口が支持され、チャイニーズでも扱うお店が急増している。
その先駆けが、神田駅のガード下にある至って庶民的な佇まいの店『味坊』であることをご存知だろうか。
「中国東北料理×ワインを提唱したのは世界初かも。勝山さんのおかげです」と語る梁さん。今では、自身もワインをこよなく愛するように
中国東北地方の黒龍江省チチハル出身の店主・梁 宝璋さんが2000年に開いたこちらでは、羊やジャガイモ、発酵白菜を多用した故郷の味が主役だ。
味坊の名物といえば「羊肉串」¥1,600(10本)。
クミンや唐辛子をブレンドした特製スパイスをまとった羊肉の味わいは、特にロゼワインと絶妙な相性をみせる。
その名も「梁さんのおすすめワインプレート」¥1,300。
干し豆腐の燻製、豚耳の煮こごり、牛すね肉の冷製などワインがはかどる品々が大集結。
ワインは冷蔵庫から自分で選ぶシステム。ボトル売りで¥2,500〜
2011年の夏のある日、日本にナチュラルワインを根づかせた伝道師・勝山晋作さんが店に現れた。
以来、足繁く通っては料理に舌鼓を打ち「この素朴な味わいは自然な造りのワインを飲みたくなる」と、店に置くことを進言。
ほどなく瓶に値段を直書きしたワインを扱い始めると、あちこちのテーブルで個性的なエチケットのボトルが抜かれるように。
中国の郷土料理とナチュラルワイン、一見縁遠いように思えるもの同士のマリアージュをきっかけに、東京のチャイニーズにおけるワインのラインナップが刷新されたのだ。
3.気取らぬカウンターで、本格中国料理を嗜む贅沢さを知らしめた
『吉田風中国家庭料理 ジーテン』@代々木上原
開店以来、改装した箇所はほぼないという店内。歳月が醸し出す温かみが漂う
1999年、代々木上原駅のほど近い商店街にオープンし、今年25周年を迎える『吉田風中国家庭料理 ジーテン』。
今ほど飲食店が多くなく、どちらかというと住まうエリアという印象が強かった街に登場したカウンタースタイルのチャイニーズは、たちまち人気を集めた。
「中国料理を食べたら不調が治った」という経験から中華に興味を持ったという吉田さん。背後に見える蒸籠で看板の蒸し料理が作られる
実はカウンター中華の始祖は『ジーテン』のオーナーシェフ・吉田勝彦さんの師匠である河田吉功さんと言われている。
吉田さんは、河田さんが料理長をしていた代官山『Linka』で働き、河田さんの後を受けて料理長に就任。
その経験を踏まえ、自身の店もカウンタースタイルにした理由を「お客様との距離が圧倒的に近く、料理へのリアクションがすぐにわかるから」と語る。
料理については、薬膳を学んだり、香港で家庭料理を習得した経験から「なるべく“引く”ことを意識している」という吉田さん。
化学調味料を使わず、油や片栗粉を控えめにしたシンプルな調理法と、素材重視の優しい味わいが魅力。
「板春雨の海老巻き蒸し」¥2,200。
腸粉や春巻の皮ではなく、板春雨にアレンジしたことでエビの食感とのバランスの良さが高まる。
「鴨の燻製揚げ」(¥2,310)も開店以来人気の一品。クスノキのチップで燻製した鴨肉をカラリと揚げ、山椒塩を添える
そして、そうした料理をおまかせコースではなく、アラカルトで楽しめる点も、吉田さんの“優しさ”の表れであり、『ジーテン』が長年愛され続ける理由のひとつだろう。
4.枠にとらわれないネオ中華という新ジャンルを創出
『REI Chinese restaurants』@代々木上原
従来の中国料理店のイメージを覆すモダンな内装。店内にはBGMにジャズが流れるなど細部までお洒落を追求
近年、巷に溢れる「ネオ中華」という言葉を世に広めたのが『REI Chinese restaurants』だ。
京王プラザホテル『南園』や『火龍園』などで広東料理を学んだ高島さん。「店を開くなら地元が良い」と長年住む代々木上原に店を構えた
シェフの高島康弘さんによると「伝統的な中国料理に新たな要素を足したものを“ネオ中華”と呼び発信したのが発端です。半分、冗談で発した言葉でしたが、僕らが表現する料理と妙にしっくりきたんです」と語る。
目指したのは、ホテルの中国料理店のような上質な繊細さと、町中華で感じるようななじみ深い懐かしい味わいの融合。
「よだれ鶏“REI” スタイル」¥1,800。山梨の信玄鶏のもも肉を低温ボイルし柔らかな食感と旨みを引き出す。ワインとの相性も抜群。グラスワイン¥1,000〜
たとえば、スペシャリテの「よだれ鶏」では、高級中国料理店さながらの丁寧な仕立てで驚くほどしっとりとした肉の舌触りを表現。
これに、自家製ラー油や東南アジアのたまり醤油というべきシーズニングソースや、中国のスナック菓子を用いてなじみ深い味わいに落とし込む。
右からコンデンスミルクが隠し味の「エビマヨネーズソース」¥1,000、中華定番の大根餅にたっぷりのパルミジャーノをふりかけた「大根餅 パルミジャーノ」(¥1,200)を盛り合わせたもの。ともに創業時から提供し続けている人気メニュー
また、創業以来作り続ける「大根餅 パルミジャーノ」などは、パルミジャーノチーズなど中国料理では扱わないイタリアの食材を用いネオ中華を表現する。
加えて小ポーションの盛り付けにこだわり、少しずつ多種類を楽しめる提案もする。食材から文化まで新たなエッセンスを随所に取り入れた表現に「ネオ中華」の神髄を見た。
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