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手頃な価格の中国製品を海外の消費者に直接届けるモデルで業績を伸ばしている中国発のECサイト・Temuが、より迅速に商品を配達するために現地の販売業者を採用する動きを強めていると、経済紙・Financial Timesが報じました。中国の販売業者を切り捨てるような方針転換に対し、サプライヤーからは反発の声が上がっています。

Chinese online store Temu faces supplier backlash over business model shift

https://www.ft.com/content/5a562326-df49-433d-8e8b-d015a55c46bb

2022年9月にサービスを開始したTemuは、積極的な広告戦略と、中国の倉庫から空輸された安価な商品を欧米の買い物客に直接販売するというビジネスモデルで台頭した通販サイトです。Financial Timesによると、この手法は同じく中国発のファストファッション通販サイト・SHEINを模倣したものだとのこと。

Financial Timesは、Temuの接触を受けた複数のサプライヤーの話として、Temuが2024年半ばからアメリカやEUに倉庫を持つAmazonの加盟店を積極的に採用していると報じました。



この動きには、大きく分けて2つの狙いがあると見られています。1つ目は、アメリカの税制改革への対応です。アメリカでは、少量の輸入貨物の関税を免除する「デ・ミニミス(De Minimis)」という非課税基準額が麻薬や違法な物品の流通を助長していることが問題視されており、税制の是正に関する議論が進んでいるとのこと。

Temuは、小口輸入により安値で中国製品を欧米の消費者に届けることで人気を集めてきましたが、もし税制の抜け穴をふさがれても対応できるように、現地のサプライヤーから商品を調達するルートを模索している可能性があります。

2つ目は、買い物客の近くで商品を保管することによる配達時間の短縮化です。そうすることで、Temuは家具や家電製品など「かさばるが利益率が高い製品」の販売をより有利にすることが可能になります。

また、現地のサプライヤーを採用することは、Temuが「完全管理型モデル(フルマネージドモデル)」から「半管理型モデル(セミマネージドモデル)」に移行していることも意味しています。Temuがこれまで成功を収めてきた完全管理型モデルでは、販売業者は商品の供給に専念し、販売や流通はプラットフォームが担ってきました。一方半管理型モデルでは、以前はプラットフォームが処理していた運送、倉庫保管、ラストワンマイルの配達のコストをマーケットプレイスの販売業者が負担します。



この方針転換に対し、中国のサプライヤーは反発しています。上海を拠点とするレギンスの製造業者はFinancial Timesに対し、「Temuのサプライヤーの扱いは持続不可能だと感じます。長く続くとは思えません」と話しました。

多くのサプライヤーがTemuに抱いているもう1つの不満は、商品の大幅な値引きを強要する姿勢です。広州のある業者は、Temuがサービスを開始した当初は1日に3万から5万件の注文を受けていたものの、記事作成時点では3000件にまで落ち込んだと話しました。Financial Timesによると、これはTemuがより多くのサプライヤーと契約し、価格を引き下げようとているからだとのこと。

興味深いことに、Temuの台頭に危機感を募らせているAmazonは2024年6月に、Amazon倉庫を介さずに中国の業者から直接商品を配送する方針を打ち出すことで、TemuやSHEINの手法を模倣しました。これは、TemuがAmazonと同様のビジネスモデルへの転換を図っているのとは逆の動きだと言えます。

AmazonがTemuやSHEINに似た低価格ストアを準備中、Amazon倉庫を介さず中国業者から直接配送 - GIGAZINE



すべての主要プラットフォームで取引を行っているという販売業者はFinancial Timesに、「Amazonの対応は遅きに失しましたが、今ではすべてのプラットフォームがお互いを模倣しようとしています。私たちの間には、『彼らはみんな、お互いに盗み合っている海賊だ』という業界ジョークがあるくらいです」と話しました。