健康診断で「ヘモグロビンが少ない」と指摘されたときの対処法はご存じですか? 治療法・注意点も医師が解説!
健康診断で「ヘモグロビンが少ない」と指摘されたときの対処法はご存じですか? 治療法・注意点についても「ハレノテラスすこやか内科クリニック」の渡邉先生に解説していただきました。
※この記事はMedical DOCにて【「血液検査で貧血と診断された…」血液内科の専門医が原因・症状・対処法を徹底解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
渡邉 健(ハレノテラスすこやか内科クリニック)
鹿児島大学医学部医学科卒業。その後、横浜市立みなと赤十字病院、横須賀共済病院、がん・感染症センター東京都立駒込病院などに勤務、東京医科歯科大学医学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)特任教授、東京医科歯科大学血液内科学教室助教などを務める。2019年、埼玉県さいたま市に「ハレノテラスすこやか内科クリニック」を開院。日本内科学会総合内科専門医、日本血液学会専門医・指導医。ICLSインストラクター、JMECCインストラクター。
編集部
ヘモグロビン値が低いと指摘された場合には、どのような治療がおこなわれるのですか?
渡邉先生
貧血の原因によって治療法が異なります。鉄欠乏性貧血の場合には出血の原因の検索をおこない、鉄剤の経口投与をするのが基本です。体内に貯蔵されている鉄を「フェリチン」と言いますが、フェリチンの値が十分になるまで治療を続けます。
編集部
鉄剤を投与すると、気持ち悪くなったり、胸がムカムカしたり、不快な症状を感じる人も多いと聞きました。
渡邉先生
たしかに、患者さんが治療を継続できなくなる原因として副作用の問題が挙げられます。これまでは鉄の投与量を減らすなどの工夫をしていましたが、2021年に「リオナ」という薬が鉄欠乏性貧血治療でも使えるようになりました。嘔吐や吐き気などの副作用を大きく改善した薬で、「これなら不快感なく内服できる」という人も増えています。もし、これまで医師に処方された薬に不快感を覚えているなら、リオナを処方してもらうのもいいと思います。
編集部
そのほかには、どのような治療法が考えられますか?
渡邉先生
点滴による治療があります。「内服による治療がどうしてもできない場合」「鉄の喪失が激しい場合」「胃の切除後や腸の病気で吸収が難しい場合」など理由があれば、点滴で治療します。最近では2~3回の点滴で回復する製剤もあり、患者さんにとっては非常に便利になっています。ただし、鉄はいったん体に入ると排出されないため診断をしっかりすることが大事です。とくに鉄欠乏性貧血と同様に赤血球が小さくなる「サラセミア」には注意が必要です。
編集部
サラセミアとはなんですか?
渡邉先生
サラセミアは、赤血球内のヘモグロビンの合成障害によって貧血を起こす遺伝性の疾患です。日本人にも0.1%程度の割合でみられます。サラセミアの場合、鉄剤の補給で貧血を改善することはできません。軽症型サラセミアの場合、基本的に治療は必要ないとされています。
編集部
貧血だからといって、安易に鉄剤を取るのは危険なのですね。
渡邉先生
そうですね。貧血のタイプに合わせた治療をおこなうことが大切です。自己判断でおこなわず、専門家の指示を守るようにしましょう。
編集部
あらためて、どのように貧血と向き合えばいいですか?
渡邉先生
貧血に限りませんが、速やかに症状を改善するにはできるだけ早く、正しい診断をつけることが大事です。原因がわかれば治療法も明確に定まります。一口に鉄欠乏性貧血といっても背景は様々ですから、一人ひとりに正確な診断を下すことが大切です。長く貧血を患っているとその状態に体が慣れ、症状が軽くなってしまい、治療が遅れることもあります。もし「階段を上るときに息切れがする」など、労作時に症状が出る場合には早めに医師の診察を受けましょう。また、お子さんの場合はスポーツや学校の成績が下がるなど、パフォーマンスの低下が診断の目安になることもありますから、ご両親は普段からお子さんの様子に気を配ることも大切です。