「肺がん検診」でひっかかったら「肺がん」を疑うべき?医師が徹底解説!
肺がん検診でひっかかったらどうすべき?Medical DOC監修医が肺のレントゲンやCTで白い影が見つかった人の精密検査や対処法まで詳しく解説します。
≫「肺がんの検査方法」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!【医師監修】監修医師:
木下 康平(医師)
防衛医科大学校卒業
聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科にて専門研修
自衛隊病院にて呼吸器内科・一般内科診療に従事
資格:内科認定医、呼吸器内科専門医
肺がん検診とは?
毎年職場や市町村で肺がん検診を受けている人は多いのではないでしょうか?
この肺がん検診は一体何のために行なっていて、何がわかるのか疑問に思ったことはないでしょうか?
今回は肺がん検診についてわかりやすく説明していきます。
肺がん検診とはどんな検査?(胸部レントゲン検査・X線検査)
まず肺がん検診はたくさんの人に行い、少しでも異常がある人をピックアップするために行われています。そのため検査は簡単にかつ迅速に行えるものが選ばれています。
採血やレントゲンなどですね。
肺がん検診においては、胸部レントゲン画像を用いて肺の中の異常な影を見つけていきます。
検査内容は上半身下着姿で放射線によりレントゲン画像を撮影するのみで、ごく短時間で完了します。特に痛みなどもなく、また使用する放射線も微量で被曝のリスクはほぼゼロです。
検査の注意点として息を止めて撮影する必要があるのですが、ごく短時間なので心配する必要はほとんどありません。
肺がん検診は何科で受けられる?
肺がん検診は直接病院に受診するのではなく、市町村などの自治体で行われていることがほとんどです。40歳以上の方には自治体から案内が来ることがほとんどですが、気になるようであれば一度自治体のHPや電話にて相談することをおすすめいたします。
自治体からの案内をもとに連携した各医療機関で肺がん検診を行うことがほとんどです。
自治体によっては検診車での肺がん検診を行うこともあります。
肺がん検診前日や当日の注意点
肺がん検診では検診前日または当日の食事制限などはありません。
またアルコール制限もありませんが、他に胃カメラなどを同日に行う場合はそれらに準じた準備が必要です。
放射線を使用した検査ですので、妊娠の可能性がある場合は検査を行うことはできません。
肺がん検診の費用は?
検査を行う自治体によって肺がん検診の自己負担額は異なります。
参考までに各自治体のがん検診HPを記載します。一度確認することをお勧めします。
知っておきたいがん検診
肺がん検診・胸部レントゲンに引っかかったときの検査結果の見方と精密検査
ここまで肺がん検診について説明をしました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
肺がん検診・胸部レントゲン検査で引っかかる場合の主な所見
肺がん検診の胸部レントゲン検査ではいくつかの所見が記載されます。
その中には肺炎の痕などの特に問題のない所見もあります。
ただ肺がんを疑うような陰影(腫瘤影、結節影)では、さらに詳しい精査が必要になることがあります。
そのような場合は所見に“要精密検査”と追記されていることがほとんどです。
この場合には検査結果を持参し、近くの内科または呼吸器内科へ受診するようにしましょう。
肺がん検査・胸部レントゲン検査で異常が見つかった場合の精密検査内容
もし肺がん検診の胸部レントゲン検査で“要精密検査”となった場合は大きい総合病院の内科または呼吸器内科に受診するようにしましょう。
検査費用は受診する方の保険区分によるので、心配でしたら病院で相談するようにしましょう。
この精査はできるだけ早く受けることをおすすめするので、できれば2週間以内には受診するようにしましょう。
病院では胸部レントゲンより詳しく肺の内部を観察することのできる胸部CT検査を行います。胸部CT検査とは体を輪切りにするような画像を撮影することができるもので、細かく肺の中に異常が無いか調べることができます。
胸部レントゲン検査は簡易ですが、その精度はあまり高くないため胸部CTでは何も異常が見つからないことがあります。その場合は検査のみで終了となります。
ただし、胸部CT検査で肺に明らかな異常があった場合は、追加の検査または治療を行う可能性があります。
検査の種類は多岐にわたるため、以下の個別の病気毎に説明していきます。
肺がん検診で発見できる病気
ここではMedical DOC監修医が関連する肺がん検診で発見できる病気・疾患について解説します。
肺がん
肺がん検診で最も見つける必要がある病気が肺がんです。
肺がんは日本人の部位別のがんで男性では1位、女性では3位となり特に多いがんとなります。肺がんは早期発見早期治療が最も予後に影響を与えるため、肺がん検診は特に重要なのです。肺がんはタバコを吸うと発症する病気と思われがちですが、必ずしもタバコが原因とは限りません。肺がんにはいくつかの種類がありますが、タバコが原因とならない肺がんも増えてきています(これを肺腺がんといいます。)
肺がんの治療法はその進行の程度によって大きく変わってきます。
早期肺がんであれば手術で取り去ることも可能ですが、進行すると放射線や化学療法のみでしか治療できなくなることがあります。
病院へ行くべき目安ですが、肺がん検診で肺がんが疑われた場合はすぐに受診するようにしましょう。
また痰の中に血が混じるなどの症状が継続的に悪化する場合は、肺がんの可能性が否定できません。その場合は内科または呼吸器内科に受診するようにしましょう。
肺炎
肺炎も肺がん検診で見つかることがあります。
ただ肺炎は誰でもなり得る病気であり、あまり見つかっても心配する必要はありません。
また肺炎の痕が胸部レントゲン画像で指摘されることも多々あります。
ただし、特殊な肺炎として間質性肺炎というものがあり、これは精査が必要になることがあります。この間質性肺炎は胸部CTで確定診断し、場合によっては採血などを追加で行います。
間質性肺炎は原因が多岐に渡り、その経過も長くなることが予想されるので総合病院の呼吸器内科に受診するようにしましょう。
自覚症状は早期は認めないことがほとんどですが、進行すると歩行時に息苦しさを感じることがあります。
肺気腫
肺気腫は長期間の喫煙が原因で起こる病気です。
この病気はタバコにより肺が破壊されて起こる病気で、肺がんのリスクも通常より高いです。そのためタバコを吸っている、吸っていた方は肺がん検診を欠かさず受けることをおすすめいたします。肺気腫は一度なると完治はしません。
治療法は第一に禁煙を行うこと、また症状の悪化を防ぐ吸入薬を使用することとなります。
肺がん検診で肺気腫のみが指摘されることはほとんどありません。
自覚症状として階段を上がった際に息苦しさがあるようなら、早めに呼吸器内科に受診することをおすすめいたします。
気胸
肺は胸膜という膜に包まれた臓器ですが、この膜が破れて空気が漏れることで起こる病気が気胸です。気胸になる原因としてタバコによる肺気腫などがあります。
気胸は肺がん検診で見つかることはほとんどなく、その息苦しさや痛みなどで発覚することがほとんどです。
軽度の空気もれであれば進行は緩徐ですが、大量の空気漏れが起きた場合は生命の危機となる可能性があります。
突然の胸痛と息苦しさが出現した場合は、早めに内科又は呼吸器内科に受診するようにしましょう。
肺結核
肺結核は結核菌による感染症です。
日本では数は減っていますが、依然として起こり得る病気の一つです。
家族や身近な人が結核である場合に感染することがあります。
肺がん検診で偶発的に発見されることも稀にあります。
自覚症状は微熱や咳嗽、喀痰などですが、自覚症状がない人も多々います。
ただ自覚症状がない場合も、結核菌を人にうつす可能性があります。
結核菌が排出されている場合は、法律で入院治療が義務付けられています。
長期間の微熱や咳が続く場合は内科又は呼吸器内科に受診するようにしましょう。
「肺がん検診でひっかかった」についてよくある質問
ここまで精密検査について紹介しました。ここでは「肺がん検診でひっかかった」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がん検診で引っかかる確率はどれくらいですか?
木下 康平(医師)
具体的な数字は提示しかねますが、胸部レントゲンで異常が指摘されることは珍しくありません。これは胸部レントゲン検査は簡便ですが、その精度があまり高くないことによります。
レントゲン・肺がん検診で肺に白い影があると言われたら禁煙が必要ですか?
木下 康平(医師)
まずは精査の胸部CTを受けることをおすすめいたします。
CT検査で肺がん疑いや肺気腫を認めた場合は禁煙をお勧めいたします。
ただ異常がなかった場合でも、喫煙は肺がんや肺気腫のリスクであることから禁煙をお勧めしたいです。禁煙が困難であるようなら禁煙外来を利用することもお勧めです。
肺がん検診のX線検査で影が見つかったらどんな精密検査をするのですか?
木下 康平(医師)
まずは胸部CT検査を受けることがほとんどです。
胸部CTで疑わしい病気をある程度鑑別したのち、追加の検査を検討します。
肺がん検診で引っかかったけれども異常なしの場合はありますか?
木下 康平(医師)
ほとんどの場合は異常なしのことが多いです。
ただ以前胸部レントゲン検査で異常がなかったから、追加の精査を行わないなどは肺がんのリスクを見逃し得るのでお勧めできません。
肺がん検診で引っかかった場合、面倒でも必ず胸部CT検査を受けるようにしましょう。
まとめ 肺がん検診で異常が見つかったらすぐに病院へ
肺がん検診を受けることで怖い病気が見つかるんじゃないかと不安な方も多いと思います。
ですが肺がんやその他の肺の病気は早期発見・早期治療が最も重要です。
肺がん検診は毎年必ず受けて健康な生活を維持するようにしていきましょう。
「肺がん検診」の異常で考えられる病気
「肺がん検診」から医師が考えられる病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
心不全乳腺科系の病気
乳がん胸部レントゲンで心臓が拡大している場合、心臓の機能が落ちている心不全の疑いとなることがあります。この場合は内科に相談するようにしましょう。
また、あまり多くはないですが胸部レントゲンでたまたま乳がんが見つかることもあります。この場合は乳腺外科で治療が必要です。
胸部レントゲンで指摘された場所に何もなくても、胸部CTで何らかの病変が偶発的に見つかることもあります。
参考文献
[日本対がん協会]がんの部位別統計
[日本医師会]肺がん検診の方法
[東京都予防医学協会]肺がん検診
[がん情報サービス]がん検診について