カレーショップC&Cの「500円朝食」がくれる活力

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curry shop C&Cの朝カレーはワンコイン。でも、働く我々の背中を、そっと押してくれるメニューなんです(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第63回となる今回、訪れたのは「curry shop C&C(カレーショップ シーアンドシー)」です。

喫茶店を筆頭に、ファストフードやファミリーレストランなどの飲食チェーンが密かにしのぎを削っているのがモーニングメニューです。

集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く現れ、どれも魅力にあふれています。

電鉄会社が運営する、駅チカのカレーチェーン

今回はカレーライスのチェーン店「curry shop C&C」の「朝カレー」をご紹介します。「朝からカレーって……、そんな悠長な時間ないよ」と思った方、もしかするとカレーを誤解しているのかもしれません。

「curry shop C&C」は駅の改札を出て1分、食券をカウンターで出して10秒、食べ終わって店を出るまで締めて10分。脅威のスピードで客席は回転していました。


駅の改札を出て徒歩1分。店の壁面にはシズル感溢れるカレーの写真がどーん!(筆者撮影)

「curry shop C&C」は、19店舗を展開する東京都民にはお馴染みのカレーチェーンです。しかし18店舗が東京都内(長野県にもフランチャイズが1店舗ある)にあるため、知名度は限定的。東京もしくはその近郊に住んでいる方以外は、ご存じないかもしれません。

店名にCが2回登場するため、カレーチェーンの最大手「CoCo壱番屋」と関連があるのかと思っていましたが、調べてみると全く関係ナシ。運営元は京王電鉄を中心とする京王グループ傘下のレストラン京王でした。店名の由来は「コーヒーとカレー」の頭文字を取ったそう。

親会社の影響で、京王電鉄沿線を中心に駅チカの店舗が多いのが特徴となっています。都内に電車通勤するサラリーマンにとってお馴染みのお店なのです。

朝カレーのメニューは2種類


(筆者撮影)


(筆者撮影)

「curry shop C&C」の朝限定メニュー「モーニングカレー」は2種類。販売時間はオープンから朝11時までです。

・朝カレーA(ソーセージ) 税込400円
・朝カレーB(ソーセージ・やわらかたまご) 税込500円

ポスターに、どちらにも通常価格よりも100円お得との記載がありました。

ご飯の量については特に言及がありませんが、ポスターの最下部に小さく「小盛カレーにトッピングした場合と比べお得となります」との記載があるため、朝カレーはレギュラーメニューよりも小さめで提供されていることがわかります。

食券を渡して10秒で受け取り完了!


入り口入ってすぐに、タッチパネル式の券売機が2台並んでいました(筆者撮影)

店を入ってすぐに券売機があり、辛さ・ライスの量・トッピング・サイドと選んで「朝カレーB」を購入。食券を持って商品の受け渡しカウンターに行くと、ものの10秒でトレイにのったカレーを渡されました。

早い! 今まで経験したどのモーニングよりも提供時間が早く、驚きを禁じ得ません。ファストフード店の筆頭であるハンバーガーショップや、和風ファストフード店と称される牛丼店よりもはるかに高速です。


ルーの辛さやライスの量など、自分好みのカレーにするべく、タッチしていきます(筆者撮影)

「たまたま私だけが提供時間が早かったのでは?」と、気になり、受け渡しカウンター側に座り様子をうかがったところ、サイドや追加トッピングがある場合は多少時間はかかるものの、平均30秒ほど、少なくとも1分以内には提供されていました。

筆者が利用したのは平日朝9時。日本有数のビジネス街の駅の改札横にあるお店は、カウンター席を中心に30席ほどある細長いつくりです。

店内には5人ほどのお客さんが座り、黙々とカレーを食べています。流行っていないのかというと、さにあらず。回転率がすごいのです。


オペレーション効率のよさを重視した、シンプルな受け渡しカウンター(筆者撮影)

3分から5分おきのペースで新規のお客さんが入店し、1分後にはカレーを食べはじめます。そして、5分かそこらで勢いよくカレーをかっこんで、食べ終わったらつむじ風のごとく店を出ていくのです。

体格のいい人が冗談めかして「カレーは飲み物」と言うことがありますが、あながち嘘ではないようです。「朝にカレーを食べてる時間なんてない」ではなく「時間がない朝だからこそのカレー」という選択肢こそ「curry shop C&C」の真骨頂なのです。

中辛ルーにプリプリソーセージととろーりたまご


curry shop C&Cの朝カレーBセット500円(筆者撮影)

「curry shop C&C」の朝限定メニュー「朝カレーB」は、レギュラーメニューよりも量を減らしたカレーライスに、トッピングのソーセージとやわらかたまごがのっています。ソーセージは絹びきタイプ、やわらかたまごはゆでたまごと温泉たまごの間ぐらいの絶妙な柔らか具合です。

カレールーはトロトロとシャバシャバの中間で、サラリとしたとろみがあり、具材はほとんど溶けてしまっています。中辛にしては少し辛さが強め。口に入れた時に、まずはじめに甘みがくるので「甘口よりな中辛なのかしら?」と思ったのですが、後から辛さが追いかけてきました。


ほぼ具なしながら、たっぷりと玉ねぎのうまみが溶け込んだルー(筆者撮影)

食べ進めると、スパイスの刺激で額に汗がじわり。辛さの度合いで言うと「あくまで中辛だけど、どちらかというと辛め」という具合。辛いカレーが苦手な人でもおいしくいただけそうです。

カレー専門店ならではの、完成度の高いルー

ルーの味は昔ながらの正統派。インド風でも欧風でもなく、強いて言うなら昭和風です。

昭和50年代にデパートの屋上の売店で食べた懐かしい味わいもあるのですが、決して安っぽくはない。カレー専門店ならではの、味の深みがある、完成度の高いルーだと思いました。


絶妙な半熟具合に仕上げたやわらかたまごとルーの相性は抜群です(筆者撮影)

硬めに炊いたライスと合わせてパクリ。半分食べ進めたあたりで、やわらかたまごをくずして食べると、カレーにまろやかさとコクが加わり、さらに美味です。

通常よりもちょっと小さめサイズで、「お腹がいっぱいになりすぎて、食べる前よりかえって眠くなってしまった」というようなこともなく、多からず少なからずのジャストな量でした。

朝カレーをモーニングの選択肢に

朝カレーを食べると、スパイスが体の芯に火をつけるのか、炭水化物が脳や体を動かすエネルギー源になるのか、それともその両方か、食べ終わるころにはパッチリと目覚めて、「今日も1日頑張るぞ!」という、力がみなぎっていました。


カレーチェーンで朝メニューを販売しているお店はめずらしい(富士そば・ゆで太郎はそばとカレーがセットになった朝メニューあり)(筆者撮影)

この日訪れた店舗でも、サラリーマンと思しき男性の姿がチラホラ。黙々とカレーをかっこみ、ジャケットを羽織って店を出ていく背中は、気のせいかどこかシャンとしている気がしました。

それぞれの背中にいろんなものを背負いながら、それでも頑張って今日を生きる……朝カレーは、そんな働く人たちの背中を、わずか5分という時間で押してくれるメニューなのかもしれません。

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)