長期低迷が続いた中国のスマホ市場は、2023年後半に底打ちしたとの見方が広がっている。写真はファーウェイの広東省深圳市の専売店(同社ウェブサイトより)

市場調査会社がまとめた中国のスマートフォン市場に関する2023年通期および同年10〜12月期の販売データが、2024年1月下旬に出揃った。それらを俯瞰すると、2023年の中国市場は出荷台数が過去10年間で最低となった一方、年後半からは市況底打ちのサインが見て取れる。

IDCの調査データによれば、中国市場の2023年通期のスマホ出荷台数(メーカー出荷ベース)は約2億7100万台と、前年比5.0%減少。とはいえ2022年通期の減少率が13.2%だったのと比べると、落ち込み幅が縮小した。さらに、2023年10〜12月期の出荷台数は前年同期比1.2%の増加に転じ、約2年半ぶりのプラスを記録した。

実売ベースで販売増の調査結果も

カナリスの調査データでは、2023年通期の出荷台数は約2億7300万台、前年比の減少率はIDCと同じく5%だった。一方、同年10〜12月期の出荷台数は、IDCとは異なり前年同期比1%のマイナスとなった。しかしカナリスのデータでも、四半期ベースの減少率は同年7〜9月期の前年同期比5%からはっきり改善している。

カウンターポイントは(メーカー出荷ベースではなく)実売ベースの調査データを公表している。それによれば、中国市場のスマホ販売台数は2023年通期では前年比1.4%減少したものの、同年10〜12月期は前年同期比6.6%増とメーカー出荷ベースを上回る数字を示した。

中国のスマホ市場は、2016年に記録した出荷台数約4億5000万台をピークに縮小が続き、2022年には10年ぶりに3億台の大台を割り込んだ。長期低迷の主因は、スマホの普及率がすでに飽和点に達したことや、魅力的な新製品の不足による買い替えサイクルの長期化などだ。


アップルの「iPhone」は、中国のハイエンドスマホ市場でシェアを落としている。写真は北京市内のアップルの専売店(同社ウェブサイトより)

そんななか、2023年後半から市況底打ちのサインが現われた背景について、IDCは「コロナ禍の収束後の経済正常化とともに、スマホ市場に対する(消費者の)注目が戻り、需要が徐々に増加した」と分析。ただし、市場回復の度合いは(スマホ業界の)期待値に届いていないとした。

一方、カウンターポイントのシニア・アナリストを務めるイーサン・チー氏は、市場の回復は特定要素の影響が大きいと見ている。

ファーウェイ復活でアップル苦戦

「2023年10〜12月期は(比較対象である)前年同期の販売が振るわなかったことに加えて、華為技術(ファーウェイ)が投入した5G(第5世代移動通信)スマホの新製品が大ヒットしたことが、販売データの改善につながった」(チー氏)

(訳注:ファーウェイはアメリカ政府の制裁強化により約2年にわたって5G用の半導体を調達できなかったが、2023年8月末に自社設計の5Gチップを搭載した新型スマホ「Mate 60シリーズ」を発売。中国市場で品薄になるほどの人気を得た)

中国のハイエンドスマホの市場では、ここ数年、アップルの「iPhone」が高い人気を維持してきた。しかしここにきて、ファーウェイの新製品がアップルの市場シェアを奪いつつある。


本記事は「財新」の提供記事です

カウンターポイントのデータによれば、ファーウェイの2023年10〜12月期の市場シェアは前年同期の9.5%から15.2%に上昇。それに対し、同四半期のアップルのシェアは前年同期の23.7%から20.2%に低下した。

(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は1月26日

(財新 Biz&Tech)