IMF通貨危機当時も韓国国内では楽観論…「韓国最高峰のお金持ち」が語る新聞の経済記事を鵜呑みにしない理由
新NISAのスタートで投資への関心が集まっている。投資の成功を助けるのが、経済への理解。韓国で100万部の大ヒット。とてつもなく貧しい境遇から成り上がり、韓国人として初めて、アメリカの外食産業で大成功した希代の起業家、キム・スンホ氏が語る「伝説のお金の授業」を邦訳版として書籍化した『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
■経済ニュースが報じる「解釈」を鵜呑みにしない
「経済に関する解釈と、政治的信念は別物である」
この言葉は、政治的信念のために経済の解釈にゆがみが生じてはならないという意味だ。
新聞の経済記事には、なんらかの意図や目的が隠されていることがよくある。だから、記事を額面どおりに鵜呑みにしてはならない。経済記事には否定的なものが多いが、これは肯定的なニュースより否定的なニュースのほうが読者の注目を集めるからだ。
街路を歩いているときに、「ほら、花が咲いている」という声よりも、「車に気をつけて!」という声のほうに敏感になるようなものだ。
アメリカの新聞の経済記事も、その新聞社の論調とは無関係に、6割が否定的な記事だ。韓国の場合は8割以上が否定的な記事となっている。批判的なニュースには監視機能があるので、否定的な記事の比率が高いのも理解できる。すべてはうまくいって当たり前、うまくいかなかったことを取り上げて大騒ぎで批判するのがメディアのおもな役割だからだ。と、ここまでは新聞社に対する好意的な解釈だ。
新聞社の問題のひとつは、経済記事を歪曲して政治的記事にするケースだ。同じ状況を報じているのに、「悲惨な自営業……1600カ所が廃業」という記事になることもあるし、「昨年の自営業廃業率、過去最低の10.98%」という記事になることもありうる。
その新聞社の論調によって、「経済政策はすべて失敗」という色眼鏡で記事を書くこともある。
他方で、1997年のIMF通貨危機当時などは、海外メディアが絶えず韓国の為替危機の可能性を指摘してきたのに、国内の新聞が楽観的な記事ばかり書いていた。むしろ当時の国内メディアは、「危機感を煽るのはやめろ」「経済を悲観する必要はない」といった社説を掲載していた。
こうした記事は、いずれも経済記事というより、政治的記事だ。自分の政治的立場が大きく偏っていると、経済状況を判断する能力が低下する。実物経済に対する判断を誤ると、ややもすれば投資で失敗することもある。
他人に対して強い嫌悪を感じるケースのひとつは、相手が自分と政治的立場が異なる場合だ。
むしろ、宗教が違う場合は問題ない。
学歴や経済の格差も、友だちとしてつき合うぶんには特に問題はない。Facebookでも、宗教が違うから友だちをやめるという話は聞いたことがない。
ところが、政治的立場が違う相手を露骨にブロックするケースはよく見かける。政治的立場が大きく異なる人同士は、殺し合いに発展するほど強い嫌悪感を引き起こすこともある。
歴史を見れば、実際に互いに殺し合うこともあった。
世界の歴史では、宗教対立から戦争に発展したこともあるが、その裏側には、宗教にかこつけた政治的な利害関係があったと言える。
結局、最も深い感情の対立は政治によるものだ。だから、一方の立場を全面的に支持するような強い政治的考えをもつと、新聞やテレビのニュースから自分の立場に合った記事ばかりを選んで見るようになる。そうなると、何かを考えたり判断したりするときも片方に偏ることになる。
もちろん、ある政治的立場をとること自体が悪いわけではない。
ただ、経済記事を読むときは、事実を判断するために実際のデータの資料を必ず参考にすべきという点を覚えておいてほしい。
見出しや論調が偏向していないか、常に疑うべきだ。
投資や事業は、一度でも方向性を見失うと競争で出遅れたり、さらには会社自体が潰れてしまうこともある。
例えば、住宅価格が暴落し、不景気で資金が底を突いているようなときに、いきなり「住宅価格に上昇の兆し」というような根拠のない記事が出ることもある。住宅購入を煽る記事を額面どおりに信じたら破産するかもしれず、そうなったとしても誰にも責任を問えない。だから、あなたも個人的な政治的立場と自身の経営判断は別個のものとして考えるべきだ。
【PROFILE】
キム・スンホ(Kim Shengho)
スノーフォックスグループ会長。韓国人として初めて、アメリカでグローバル外食企業を成功させた実業家。創業したスノーフォックス社は、世界11カ国に3900の店舗と1万人の従業員を抱えるグローバル企業。年間売り上げ1兆ウォンの目標を達成、米ナスダック上場を控えている。出版社、生花流通業、金融業、不動産業も営みながら、農場経営者の顔も持つ。韓国中央大学校ではグローバル経営者養成コースの教授も兼務。韓国と世界を行き来しながら、最近5年間で3000人あまりの事業家を養成。「社長を教える社長」として知られる。本書は、インターネット上で動画が1100万回以上再生された「伝説のお金の授業」の書籍化。2023年まで4年連続でベストセラーとなり、100万部に到達した国民的な「お金の教科書」。