ジョリー(Jolie)は、シャワーヘッドがウェルネス商品だと人々に納得させられるという想定のもとに創設された。

この賭けは実を結んだようだ。同社は創設から約3年で、2023年には2500万ドル(約37億円)の収益をあげ、利益を出しているという。共同創設者でCEOを務めるライアン・バベンジエン氏は、成功の要因はブランドを宣伝してくれる熱心なファン層と、成長し続けるオムニチャネル戦略だとしている。

バベンジエン氏は米モダンリテールのポッドキャストに参加し、ジョリーの成長と将来のビジネス戦略について語ってくれた。

ジョリーはフィルター付きのシャワーヘッドを製造している。バベンジエン氏はシャワーヘッドを、すべての人のスキンケアルーチンの「ゼロ番目のステップ」だと説明した。「シャワーは唯一変わらないものだ。シャンプーを毎週変えることはできるが、シャワーは同じものだ」と、同氏は付け加える。

そのため、ジョリーは自社製品がホームセンターで売っている製品を超えたものだと売り込むために、多大な労力を費やしてきた。同ブランドの最初の店舗のいくつかは、従来とは異なる場所にオープンした。これは意図したもので、より良いウェルネス商品を探している人のための小売環境を見つけるためのものだった。たとえば、ジョリーの製品はエレウォン(Erewhon)やリボルブ・ドット・コム(Revolve.com)でも販売されている。「これは、いうなれば第一段階で、この製品に関心を持っている顧客が集まる場所で販売を行うというものだ」と、バベンジエン氏。「何も複雑ではない、ごく単純な常識だ。そして、ここから規模の拡大をはじめられる」。

顧客がジョリーを見つけたあとのマーケティングでは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)が大きな役割を果たした。「人はほかの人に影響を与える」と、バベンジエン氏は話す。これによって、この数年間で、2万点近い固有のユーザー生成コンテンツを獲得した。

この無料のコンテンツを使用して、高価なデジタルマーケティングを代替するというのが狙いだ。「有料マーケティングは10年以上良い結果を出せていない。それでも業界全体が依然として、マーケティング予算の大部分を有料マーケティングに費やしている。しかし、うまくいっていないのは明らかだ」。

そのため、ジョリーが重視しているのは、収益性に留意しながら、成長するということだ。美容とウェルネスの分野に特化してきたが、従来型の環境で販売しないわけではない。

「将来的にホームデポ(Home Depot)やコストコ(Costco)でも販売されるだろう。美容ウェルネスツールだが、ホームデポでは少しだけ異なる場所に置かれることになるだろう」と、バベンジエン氏は話す。

対談のいくつかの要点を以下に紹介する。明瞭化のため多少の編集を加えた。

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シャワーヘッドの提案について再考する

「従来、シャワーヘッドの使い道は水を押し出すことだけだった。それが本来の機能だ。現在では水を出すだけでなく濾過することが不可欠となったため、すべてのシャワーヘッドがやがてフィルター機能を持つようになると考えている。我々が市場に参入したタイミングは必然だった。すなわち、需要があったときに、幸運にも市場に参入したということだ。しかし、我々はそれをゼロ番目のステップと呼んでいる。美容トレンドは変化し続けている。美容業界では毎日のように新商品が発売されている。化粧水、美容液、髪、肌、SPF(日焼け止め)などを扱うので、ウェットビジネスとも呼ばれている。これもまた流行り廃りがある。顧客はある商品を6カ月使ってみてから、また別のものを試すかもしれない。それが美容業界の一般的な仕組みだ。そんななかで変わらない唯一のものがシャワーだ。シャンプーを毎週変えることはできるが、シャワーは浴びる。これをゼロ番目のステップと呼んでいる。これは、1ステップによるルーチンでも、10のステップによるものでも、どんなルーチンであろうと、もっとも重要な部分だと考えている」。

ジョリーのユーザー生成コンテンツへの特化

「万能の解決策はない。このような成功をひとつの要素のおかげだと考えることはできない。しかし、ユーザー生成コンテンツは成功のため非常に重要な要素だ。そして、人はほかの人に影響を与えると、我々は確信している。有料マーケティングは10年以上もうまく良い結果を出せていない。それでも業界全体が依然として、マーケティング予算の大部分を有料マーケティングに費やしている。しかし、うまくいっていないのは明らかだ。そのため我々は、人々を頼るという別の方法でマーケティングを行いたいと考えた。ジョリーをどのように使用しているかのストーリーを利用者に共有してもらうことにした。これは、実際の生活の食卓で(これは測定できないが)、友人とショッピングに出かけたとき、またはインスタグラム、TikTok、そのほか自分の好きなチャネルで共有することなどだ。この2年間で、ユニークユーザー生成コンテンツ数は2万件に近づいている。私の20年間のキャリアのなかでも、このようなものは見たことがない」。

卸売が重要な理由

「当初から常に、我々はオムニチャネルのビジネスをめざしていた。私自身、デジタル専業の消費者向けブランドが利益を出している例を知らない。そのため、ビジネスを支えるにはD2C以外の販売拠点が必要なのは明らかだ。そこで、その方法を採用した」。

[原文:‘Paid marketing just isn’t working’: Jolie CEO Ryan Babenzien on how to market a shower head as a wellness product in the post-DTC era]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)