110周年を迎えた宝塚。東京宝塚劇場では雪組公演が始まっている

写真拡大

 '24年に入り110周年を迎えた宝塚歌劇団。記念すべき年の幕開けだが、華やいだ雰囲気は伝わってこない。

【写真】「吐きそう…」セクハラを告発された宝塚の演出家たち

「当初、元日からの公演予定だった星組は5日からスタート。トップスターの礼真琴さんが終演後に感謝を述べましたが、しんみりとした印象でした。110周年記念の行事は中止が決まっています。“スケジュールの過密回避”のためとしていましたが、劇団員Aさんの死で明るみに出たいじめ問題も大きな理由でしょう」(スポーツ紙記者)

 '23年9月30日に現役タカラジェンヌだったAさんが転落死。過重労働と上級生のいじめを苦にして自宅マンションから飛び降りたといわれる。

「過重労働で寝る時間もない状況で、上級生から集団いじめに遭っていたようです。Aさんは103期の中で常に成績がトップだったことで、標的にされてしまったようです。本公演で天彩峰里さんが務めていた役をAさんが新人公演で演じることになり挨拶に行くと、天彩さんが“私の髪形を教えるから”とヘアアイロンを押しつけ、ヤケドを負わせたようです」(劇団関係者)

演出家のセクハラ疑惑も

『週刊女性』では、元宙組トップスターの真風涼帆が“いじめ文化”を広めていたという証言について報じた。

「宙組公演は中止になり、'23年11月14日に劇団の理事長らが会見を開きました。しかし、過重労働は認めたものの“パワハラはなかった”と断言。それどころか、新理事長の村上浩爾氏は“証拠となるものをお見せいただくよう提案したい”と開き直る始末です。不誠実な態度に、批判は高まる一方でした」(前出・スポーツ紙記者)

 芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は、閉鎖的な環境に問題があったと考える。

「“清く、正しく、美しく”というモットーのもとで芸を磨くために厳しい“徒弟制度”みたいなものが必要だと思われていた世界です。しかもそれが美談や伝統として語られてきましたが、今は違います。きっと時代の変化に対応できなかったのでしょう」

 いじめ問題を最初に報じた『週刊文春』は、続報で劇団の大物演出家のセクハラ疑惑についての証言も詳報。

「演出助手だった男性が、宝塚の小池修一郎氏から受けたセクハラを告発。温泉に誘われ、夜になるとベッドに入ってきて関係を迫られたそうです。小池氏はタカラジェンヌに対するパワハラもひどく、“そんな演技するなら、出ていきなさい!”と怒鳴り、“脚が短い!”と身体的な特徴を挙げて侮辱したんだとか」(前出・スポーツ紙記者、以下同)

劇団は「お咎めなし」

 小池氏の後輩にあたる演出家の野口幸作氏もパワハラに加わったそう。

「新人演出助手を温泉やサウナに誘い、裸体を鑑賞。自宅に押しかけ、性的な嫌がらせをするところを動画撮影したそう。耐えかねて退職した人もいました。小池氏らが劇団からの聞き取りに全面否定すると、劇団側はそれを受け入れてお咎めなしに。今も指導を受け続ける団員たちからは“気持ち悪くて吐きそう”“指導されるのが怖い”と悲鳴が上がっているそうです」

 同じく演出家の藤井大介氏は劇団幹部からタカラジェンヌに対するAさんの件に関する説明会が開かれた後、酒を持ち込んで上級生たちと飲み会を始めたことも明らかになっている。信頼関係を保つことは難しいように思えるが……。

「どちらかというと“気持ち悪い”という感情のほうが強い気がしますね。嫌悪感を覚える人たちから指導を受け続けることは不快以外のなにものでもないでしょう」(前出・佐々木氏、以下同)

 不快で済めばまだマシだ。

「“怖い”と話す劇団員は、自分に矛先が向くかもしれないという思いからでしょう。もし女性にもセクハラ行為をしていたという事実があれば、劇団側も動かざるを得ないと思います」

 小池氏は脚本の執筆が遅れることが多く、そのしわ寄せでタカラジェンヌたちの過重労働が生じていたという話もある。事実確認のために小池氏に電話をかけたが、一向につながらない。劇団には書面で質問した。

 小池氏と野口氏のセクハラ、パワハラについては《報道内容につきましては、それぞれに当該演出家ら及び関係者からの聞き取り等により事実確認を行っており、掲載されている内容が事実でない旨確認しております》と回答。藤井氏の飲み会については、厳重注意を行ったという。

 小池氏の執筆については、《適正なタイミングで脚本を仕上げるよう、指示しております》とのこと。執筆が遅れていることは把握しているらしい。問題点を洗い出し、宝塚は再生できるのだろうか。

「これまでを見ていると、劇団に自浄作用はなさそうで、今回も保身に走っているように感じます。今の段階ではまだ動かないと思いますが、第二、第三の被害者が現れたら、対策を講じるでしょうね」

 セクハラ、パワハラの当事者がお咎めなしでは、タカラジェンヌとファンの信頼を取り戻すことはできない。

佐々木博之 芸能ジャーナリスト。元『フライデー』記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中