記事のポイント

GoogleがChromeユーザーの1%を対象にサードパーティCookieを無効化し始め、これがデジタル広告業界に大きな変化をもたらす段階に入った。

広告業界の幹部は、プライバシーに関する規制や消費者の態度の変化に対応し、新たなデータ識別子や広告手法の必要性を指摘。

広告主はファーストパーティデータやサーバー間トラッキングなど、Cookie以外の代替手段への移行を模索している。


CookieなきChromeの実現へのカウントダウンが始まった。GoogleはChromeユーザーの1%を対象に、サードパーティCookieを無効化した。影響が及ぶのは、全世界32億2000万人のユーザーのうち3200万人だ。Googleにとっては小さな一歩だが、デジタル広告業界にとっては未知への大いなる跳躍となる。

DIGIDAYは広告業界の幹部社員に、最新の変化に対する忌憚なき意見を語ってもらった。

ついにGoogleがCookieの段階的廃止に着手



このプロセスはあまりに長く先延ばしされてきたが、ついに始まる時が来た。サンプリング方式により、テストに参加するすべての人々がサポートされている広告ユースケースと結果を、統計的に確かな方法で評価することができる。しかし、極めて重要なユースケースが抜け落ちているため、結果としてサンドボックスがプログラマティック広告の今後の包括的アプローチになることは想像しにくい。──ヨヘン・シュロッサー氏、アドテクベンダー、アドフォーム(Adform)最高技術責任者

広告のCookie依存からの転換は不可避



現実を見れば、たとえなんらかの理由でCookie廃止のスケジュールが(さらに)遅れたとしても、広告主がこのタイプのデータ識別子に頼って顧客を理解することはもはや不可能という事実に変わりはない。こうした動きが今年であろうと来年であろうと、プライバシーの課題は出てくる。プライバシーに関する規制と消費者の態度の変化について、マーケターは長期的に、真剣に考えなくてはならない。これが新たな現実であり、上級マーケターにオーディエンスについて包括的に考え、これから足を踏み入れようとしている新たな消費環境を見定める備えがあるなら、より効率的なものにもなり得るはずだ。──スティーブ・バグダサリアン氏、測定企業コムスコア(ComScore)最高商務責任者

市場に蔓延する混乱



GoogleがCookieの終焉を(誇張ではなく)何年も前から予告してきたのは周知の事実だ。にもかかわらず、驚くべきことに、デジタル広告業界のかなりの部分が廃止に対して準備不足であるようだ。理由ははっきりしないが、効果的な代替トラッキング手段をめぐる混乱が、言い訳の定番になっているようだ。

プライバシーサンドボックスは、サードパーティCookieの後継のキャンペーン測定ソリューションを求める広告主にとって選択肢のひとつだが、その他のプライバシーを重視したソリューションも台頭するだろう。EU一般データ保護規則(GDPR)施行後の世界で発展してきたブランドメトリクス(Brand Metrics)は、2018年以来、ファーストパーティCookieやログインユーザーといった手法によるキャンペーンの効果測定に力を入れ、ポストCookieの世界の幕開けを前に、価値ある知見を積み重ねてきた。――ショーン・アダムズ氏、分析企業ブランドメトリクス最高マーケティング責任者

専門家に不足はない



我々の推定では、市場の60〜70%は「Cookieアルマゲドン」への備えができている。Googleからの予告がなかったわけではないし、業界はCookieの段階的廃止に備え、時間をかけて計画と検証を行ってきた。

Cookieの終焉に関して、プレシソ(Preiciso)の現在のアプローチは、中立的なスタンスでクライアントの意向に沿って進めるというものだ。完全に選択肢が消えるまでサードパーティCookieを利用したいというクライアントには、そのためのサポートを提供する。だが、ファーストパーティデータだけに絞る転換を進めたい場合も、我々にはその用意がある。

我々はすでにサーバー間トラッキングによるサポートを提供している。このアプローチでは、トラッキングツールはユーザーのブラウザから直接データを収集するのではなく、別のサーバーから転送されるため、Cookieの使用を回避できる。──ピエロ・パボン氏、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)プレシソCEO

あらゆる危機にはチャンスが眠る



Googleはデジタル広告費の巨大なシェアを握るため、注目を集めているが、Cookieなきオンライン広告はAppleのSafariなどですでに実用化されて久しい。これらは新たなデータ収集手法や戦略の試金石となった。

キュレーションは、同意に基づくデータの効果を最大化するとともに、プライベートマーケットプレイス(PMP)を通じてオーディエンスシグナルを送信することで漏洩リスクを抑え、広告主と顧客の両方に恩恵をもたらす、よく練られた方法だ。

サプライサイドへのデータの適用は、スケール化および広告主が求める顧客層の獲得を促進し、さまざまな方法論に基づくデータプロバイダーと識別子を超えて、オーディエンスへの最適経路を発見することを容易にするだろう。──サイモン・リード氏、アドテク企業マルチローカル(Multilocal)最高売上責任者

未来に向けた実践主義を



Eメールやその他のファーストパーティの代替手法は有望であり、ぜひ活用すべきだ。短期的には、こうした識別子をスケールできる広告主だけが恩恵を得る。この先、こうした形式の識別子が、データの応用に関して精査されることは避けられない。

だが、広告主は抜け目なく立ち回るために、さまざまな識別子やターゲティング手法を活用すべきであり、長期的にはブラックボックスやPII(個人情報)に頼らない広告主だけが生き残るだろう。個人データに頼らなくても関連性の高い広告は可能であり、Cookieの死が目前に迫るなか、コンテクストなどプライバシーを重視したターゲティング手法はますます注目を集め、利用が始まっている。──ピート・ウォレス氏、コンテクスト情報企業ガムガム(GumGum)EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域ゼネラルマネージャー

Eメール活用の基礎



Eメールアドレスはインターネットのパスポートであり、デバイスやプラットフォームを問わず、ブランドがオンラインでユーザーに接触する手段だ。Cookieやデバイスではなく、個人に確実に紐づいている。Eメールはオンラインとオフラインで利用できる識別子の主役となりつつある。リード(見込み客)生成、データ、インサイトをもたらす強力なファーストパーティツールであり、Cookieを利用することなくセグメンテーションとターゲティングを実現すると同時に、プライバシーと同意を事前に組み込む。

こうした理由から、Eメールは今日のマルチチャネルマーケティングの基礎とみなすことが
できる。Cookieの終わりの始まりは、マーケターにとってまったく恐れるべき事態ではないのだ。──スザンナ・チャップリン氏、Eメールベースのアドテク企業ESBコネクト(esbconnect)CEO

[原文:‘Dragging on for too long’: Ad execs sound off on the beginning of the end of third-party cookies in Google’s Chrome

Seb Joseph(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:分島翔平)