2023年は、日本の鉄道で初めて「立食形式の軽食堂車」であるビュッフェが登場してから65年でした。ビュッフェは現在でも観光列車に連結され、乗客を楽しませています。その中でも「特にオススメしたい」列車を取りあげます。

徐々に上がっていったクオリティ

 我が国の鉄道で最初に「ビュッフェ(当初はビュフェと表記)」が登場したのは、1958(昭和33)年のこと。国鉄が東京〜大阪間に電車特急「こだま」を走らせた際、「本格的な食事は東京や大阪のレストランですればいいので、列車内の食堂施設は簡易的なものでいい」という考えで開発されたものです。ゆえにビュッフェは「カウンターで立食形式」「飲食物は提供するが食事は軽食のみ」という設備としてスタートしました。


JR東日本「SLばんえつ物語」のサービスカウンター(安藤昌季撮影)。

 食事メニューは「朝定食」「コールミート定食」のような最低限のもので、飲料メニューの方が充実していました。しかし1961(昭和36)年に急行電車で、1964(昭和39)年からは東海道新幹線に登場したことで、全国に広がりを見せるようになりました。

「本格的な食事は出さない」がスタートでしたが、1972(昭和47)年のメニューを見ると、「ビーフシチュウ定食」「カレーライス」「うなぎご飯」「ハンバーグステーキ」など食事も提供され、急行や新幹線のビュッフェには座席も付けられましたので、「ややメニューが軽い食堂車」といった存在になりました。ちなみに筆者(安藤昌季:乗りものライター)は0系新幹線のビッフェと食堂車でカレーライスを食べ比べたこともありますが、やはり食堂車の方が本格的な味でした。

 そうしたビュッフェですが、時代とともに多くは姿を消しました。ただし2023年時点では、観光列車の目玉サービスとして営業しているものが多くあります。列車によって名称が異なるので、ここでは

・カウンター形式など、簡易な供食設備
・軽食や飲料の提供にとどまり、本格的な食事サービスは提供しない(レストラン列車や、食事メニューが豊富な「しまかぜ」「青の交響曲」「サフィール踊り子」などは含めない)

 設備をビュッフェと定義し、筆者が特に楽しいと感じる列車を紹介します。

全国で乗れる! ビュッフェ車両いろいろ

 いま体験できるビュッフェの多くは、観光列車に設けられています。

■JR東日本「越乃Shu*Kura」サービスカウンター
 新潟県内を走る観光列車です。食事メニューのある旅行商品を予約しなくても、地域の地酒や天ぷら、暖かいお茶漬けなどを注文して楽しめます。

■JR東日本「SLばんえつ物語」サービスカウンター
 新津〜会津若松間を走るSL列車です。4時間以上の長旅であり、弁当、飲み物、酒、アイス、菓子、おつまみ、グッズ類など、様々なメニューが豊富です。

■JR西日本「ベル・モンターニュ・エ・メール」販売カウンター
 北陸地方の氷見線・城端線を走る観光列車です。寿司職人が乗車しており、車内で握りたての寿司が提供されます。沿線の地酒やおつまみ、グッズ類も販売されています。基本的には予約制ですが、少数ながら車内販売も行われます。

■JR四国「四国まんなか千年ものがたり」
 四国の多度津〜大歩危間を走るレストラン列車ですが、当日注文可能な軽食、飲料メニューが豊富なので紹介します。予約制食事メニューの品質も高いですが、当日飛び乗りでも楽しめます。


JR四国「四国まんなか千年ものがたり」にて(安藤昌季撮影)。

■JR九州「ゆふいんの森」ビュッフェ
 九州の博多〜由布院・別府間を結ぶキハ71系とキハ72系のどちらにも、ビュッフェが備えられています。地域の飲料とグッズが中心ですが、予約も可能なお弁当メニューもあります。特に、予約できる「おおいた和牛弁当」は非常に美味しいです。

■JR九州「36ぷらす3」ビュッフェ
 九州を「ぐるっと回る」ので、毎日違う場所を走る観光列車です。廃止された787系電車のビュッフェを「復活」させたとのことですが、隣のラウンジカーで座って食事できるので、かつての特急「つばめ」以上のサービスといえます。カレーライスやうどんなどのホットミールもあります。

私鉄もあるよ!

■JR九州「A列車で行こう」バーカウンター
 熊本〜三角間を走る観光列車です。本格的なバーカウンター「A-TRAIN BAR」があり、ハイボールなどの酒類や飲料類、地域のスイーツが楽しめます。内装が特に素晴らしく、ぜいたくな時間を過ごせます。

■JR九州「ふたつ星4047」ビュッフェ
 JR九州最新の観光列車です。予約制のスイーツと、当日注文できる飲料類やスイーツがメインです。食事メニューはありません。車内の内装が非常に凝っており、素晴らしい景色を座席から楽しめます。

■東武鉄道「スペーシアX」コックピットラウンジ
 浅草〜東武日光・寄付川温泉間を走る看板特急です。特徴的なのは、供食車両内の座席が指定席で、座席を予約していない人は使えないことです。なお、車内で当日予約をすることで、ほかの設備の利用者も「コックピットラウンジ」での注文はできます。飲料とスイーツがメニューの中心で、軽食はありません。

■富士山麓電気鉄道「富士山ビュー特急」特別車両
 大月〜河口湖間を走る観光特急です。1号車特別車両は「ドリンクサービス」があり、カウンターでお弁当や飲料なども注文できます。予約制の「スイーツプラン」は、ホテルのパティシエが手がけており、絶品スイーツを楽しめます。


富士山麓電気鉄道「富士山ビュー特急」の特別車両にて(安藤昌季撮影)。

 以上、筆者が特におすすめする列車ビュッフェ10選でした。