Apple Watch Series 9(Apple社公式サイトより)

写真拡大

2015年に初代が登場した米Apple社の腕時計型端末「Apple Watch」だが、2023年9月に発売された最新シリーズ「Apple Watch Series9」で9代目となった。

その人気はどのくらいあるのか。モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2023年12月11日に発表した「Apple Watchの購入と利用に関する調査」によると、知名度(認知)は約85%、所有率は約11%だという。

iPhoneに続き、誰もが知る端末になりつつあるが、「Apple Watch」はどこまで進化するのか。調査担当者に聞いた。

厚労省も医療機器として認定「小さなクリニック」

「Apple Watch Series9」の新機能は、機械学習のタスク処理速度が最大2倍にスピードアップ。また、ジェスチャーコントロールに新機能として「ダブルタップ」を追加。Apple Watchを装着した側の手の人差し指と親指を2回タップすることで、ディスプレイに触れることなく操作できる。

また、ヘルスケア機能では、心の状態を記録しメンタルをサポートする「マインドフルネスアプリ」を追加した。もともと健康アプリは、2020年9月に厚生労働省が一般向け製品では初の医療機器(心電計)として認定済みだ。心電図や心拍数、血中酸素、月経周期などが計測可能で、「小さなクリニック」として話題になった。

Apple Watchで取得したデータを外来診療する「Apple Watch外来」を開設する医療機関も出ており、2021年2月、慶應義塾大学医学部と慶應義塾大学病院がApple Watchを使った臨床研究を開始したと発表した。睡眠中・安静時の脈拍と生活習慣との関連の分析がテーマだが、そういった研究や外来診療に今後は「心のデータ」まで加わりそうだ。

20代の男女の2割が、Apple Watchの利用者

さて、MMD研究所の調査(2023年11月10日〜11月15日)では、予備調査は18歳から69歳までの男女1万4471人が対象。そのうえで、本調査として予備調査から抽出したApple Watch所有者1007人に魅力や使い方などを詳しく聞いた。

まず、1万4471人に「Apple Watchを知っているか」、また「所有しているか」を聞くと、「認知」は84.7%、「所有」は10.9%だった。性別年代別にみると、「所有している」と回答したのは20代男性(21.0%)が最も多く、次いで20代女性(20.7%)、30代男性(16.2%)、10代男性(15.0%)と続いた【図表1】。

さらにApple Watchの購入を検討している人と所有者に、それぞれ購入する際に重視することを聞くと(複数回答可)、購入検討者は「健康に関するデータを計測できる」(40.4%)が最も多く、次いで「スマホの通知を確認できる」(39.8%)、「一回の充電で長時間利用できる」(38.9%)となった。

一方、所有者は「スマホの通知を確認できる」(28.7%)が最も多く、次いで「健康に関するデータを計測できる」(23.1%)、「端末のサイズがちょうどよい」(20.3%)となった。外出先で、スマホなしでも同様の機能を活用できる利便性を重視したかたちだ【図表2】。

このことは、所有者にApple Watchを着用する頻度を聞いた結果でも明らかだ。「ほぼ毎日着用している」(45.0%)が最も多く、「学校や職場など平日に着用している」(8.1%)、「時々、必要な時や気分に合わせて着用している」(7.0%)と続いた【図表3】。

さらに、Apple Watch所有者に購入前に感じていた魅力と、購入の決め手になった魅力の違いを聞くと、興味深い結果が出た(複数回答可)。購入前は「スマホの通知を確認できる」(42.9%)が最も多かったのに、購入の決め手になった1位は、購入前では3位だった「健康に関するデータを計測できる」(36.1%)だったのだ【図表4】。これは、どういうことなのだろうか。

Apple Watchの通知があったことで命が救われた

J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者(女性)に話を聞いた。

――調査では、Apple Watchの認知は約85%、所有が約11%という結果が出ましたが、この数字は、スマートウォッチとしては高いと思いますか、低いと思いますか。

調査担当者 当研究所の調査では、iPhone所有自体が10代・20代では7割を超えていますから、Apple製品としてiPhoneとの互換性もあるApple Watchの所有が若年層を中心に高いことは分かります。

実際に私の周りにも、ほかのスマートウォッチの利用者よりもApple Watchの利用者が多い印象です。

――MMD研究所の前回調査(2023年4月)では、利用者が多かったのは20代男性、次いで10代男性、30代男性でしたが、今回は20代女性が2位に踊り出ました。女性としてこの理由は何だと考えていますか。Apple Watchのどの機能に若い女性は惹かれるのでしょうか。

調査担当者 Apple Watchに限らず、スマートウォッチの購入で重視することを聞くと、若年層では「ファッションアイテムとしても使える」が上位5項目に入ることから、男女を問わずデザイン性の高さが重視されていることが分かります。

特に、20代女性は「スマホの通知を確認できる」の次にくるなど、男性よりも重視されていることが分かります。私の友人でApple Watchを利用している女性に聞くと、生理周期を管理できるアプリの存在や、写真撮影を遠隔で操作することも女性が感じる魅力の1つになるのではと思います。

写真撮影の遠隔操作では、手を伸ばしてスマホを持ったことで、撮影ボタンが押しにくい時でもApple Watchが連携されていれば、手元で撮影の操作が可能になりますから。

――Apple Watchの購入前の魅力と、購入後の決め手の違いが面白いですね。購入前は「スマホの通知が確認できる」が1位でしたが、購入後は「健康データが計測できる」がトップです。この変化をどう考えますか。

調査担当者 よくApple Watch利用者で、心拍数が高いなど表面的には分からない深刻な病気を、Apple Watchの通知があったことで命が救われた例や、病院に行ってみたらApple Watchの通知された数値が高く出たといった例をSNSなどで見かけます。

購入前には魅力的に思わなくても、購入に際して情報収集をしている過程でそうした情報を知り、決め手となったのではと考えています。

ロック画面も変えられるので「推し」の画像にできる

――なるほど。確かに「Apple Watch外来」が増えるなど、医療機器としても使われていますね。

調査担当者 命を救われた人がいるなど、その精度の高さから医療現場で生かされることについては、良い動きだと感じます。

例えば、不整脈などでは「検査の日には発作が出なかった」「発作が出たが、病院に行くまでに治ってしまった」など、タイミングよく病院で診てもらうための心電図を捉えにくいなかで、日常的に記録され続けているため、病院での診察にも役立つのではないでしょうか。

――Apple Watchの進化は今後どうなるでしょうか。iPhoneが10周年を記念してiPhone Xを登場させたように、2024年に10周年を記念して、Apple Watch Xを期待する声がありますが、いかがお考えですか。

調査担当者 iPhone Xは、ホームボタンの廃止など、それまでほとんど変更されなかった部分が大胆に変更されており、とてもチャレンジングでした。プレミアムモデルと言われ、完成形のレベルに持ってきたように思いました。

今回のApple Watch Series 9を見ても、ジェスチャー機能の追加など、まだ進化を続けているところを見ると、Apple Watch Xでも、iPhone Xの時と同様に大幅な変化が期待できるのかもしれません。

――あなた自身はApple Watchを使っていないようですが、使っている友人たちはどんな点を評価していますか。

調査担当者 「非常に便利だ」という声をよく耳にします。電話やLINEの通知機能は鞄に入れていると気付きにくいですが、連絡もすぐ気付ける。アラームも腕につけているので無音で設定できる。

ファッション性があるので、身につける時計を選ぶ際に迷わなくてよい。バンドも自分好みにでき、ロック画面も変えられるので「推し」の画像にできる、など、利用者が利用しながら、それぞれ魅力を見出しているように思いました。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)