「はじめましての人」とそつなく話せる、なぜか好かれる人がやっている会話術を紹介します(写真:Ushico/PIXTA)

初対面の人相手に話すネタが見つからない。相手と価値観が異なりすぎて会話が噛み合わない。相手が自分と反対の意見を言う人だった。

こんな経験、誰しもあると思います。

相手がお客さま、会社の上司や部下など、会話のやり取りで失敗したくない、嫌われたくない場合はなおさらです。

こうした状況でも相手と仲良くなる術を知り尽くした会話の達人、スピーチライターでコミュニケーションコンサルタントのひきたよしあき氏の著書『雑談が上手い人が話す前にやっていること』より一部抜粋・再構成して、なぜか好かれる人がやっている会話術3選をお届けします。

話のネタがないときは周りを観察する

「ヤバい、何も思いつかない。ちょっと逃げ出したいかも」

「こっちから話しかけたほうがいいかな、でも話しかけられたくないかな」

「共通の話題があればいいんだけど、お互いないよねぇ」

あの、気まずい空気。お互いのことをよく知らない段階での雑談は、できれば避けたいと思ってしまう行為です。

仕事で懇親会やパーティーに行くと、知らない人と隣り合わせになることがあります。多いのがビュッフェ形式で、たまたまテーブルに集まった人と語らなければならない。強制的に、そんな状況に追い込まれてしまいます。

もちろん、ほぼ全員が「はじめまして」の状態。

お互いに、相手のことを知らない。そもそも、どこのどなたなのかすら知らないくらいの、浅〜い関係の人と話さなければいけない場合、軽いパニックに陥ってしまいますよね。名刺交換をして、ひとしきりお互いの仕事のことなんかを話したら、ネタ切れはすぐにやってきます。

そうしたら、地獄の沈黙タイム……これは、なんとしても避けたい。

素性もわからない人と話す。長く私もこれが苦手で、料理を手にしてもテーブルに近づきませんでした。「君子、危うきに近寄らず」なんて、自分を納得させながら。

あまりにつらくて、どうにかしたくて、解決策を編み出しました。「はじめましての人」とそつなく話せるコツです。

話題になる「共通点」を見つける

そのコツとは、「観察+感情」で話しはじめる、ということです。

「はじめまして」の人としゃべるのがつらいのは、共通点がないからです。どんな話をしたらいいか、まるでわからない状態です。

でも、実は、共通点はつくれるのです。

私は、次の2つのステップで、共通点を発見しています。

1.観察……一緒にいる空間を観察して、共有できるネタを探す
2.感情……その観察についての、「自分の感想」を述べる

というものです。

ポイントは「空間」です。

たとえば、飲み会で同じテーブルについたなら、こんなふうに……。

観察……隣の席で注文した焼きそば、おいしそうですよ
感情……あ〜、急にお腹減ってきたなぁ

という感じ。

そのあとに、「中華、よく来るんですか?」とか「注文、もう決めましたか?」などと、相手に質問して、相手にも口を開いてもらいます。

「あぁ、話すネタがない。話が続かなくなったらどうしよう」と悩んだら、深呼吸して周囲を見回してみましょう。

五感のすべてをはたらかせて、周りを観察します。そして、今、自分がどんなことを感じているかを考える。

観察し、感情をつぶやいたあとに、相手に話をふってみる。

話題に行き詰まったら、再び観察して、次の話題を見つける。

雑談はそのくり返しで成り立っていきます。

価値観が異なる相手への対処法

「会社の若い子たちとコミュニケーションとりたくても、話がまったく合わない。ジェネレーションギャップを感じて、話しかけるのが億劫になる」

「オジサンたちの話は、昔話が多くてぜんぜんピンとこない。もっと若者にもわかるような話をしてほしい。話も長いから、こっちから話しかけたいとは思わない」

わかります、どちらの意見も。

私はかつて若者でしたし、現在はオジサンをやっていますから。

違う世代や価値観の異なった人たちと話すのは、誰でも苦手に感じるものです。

「自分と違う人」とつき合うよりは、自分と「似ている」もしくは「同じ」だと感じる部分が多い人とつき合うほうが居心地がいいからです。

でも、その狭い世界だけで暮らしていくことは無理です。

だって、自分と同じではない部分を持っている人たちのほうが圧倒的に多いですよね。

価値観は、世代、環境、持って生まれたもの、社内風土など、さまざまなファクターによって、非常に細分化されています。価値観が違えば使う言葉も違うし、ギャップがあればあるほど、その相手とはコミュニケーションをとるのが大変に感じます。

でも、実はそういう相手と話すときのコツがあるんです。それを教えてくれたのは、外資系企業に勤める知人でした。  

知人の勤める外資系企業には、さまざまな価値観を持った人がいるそうです。国籍も違えば、世代も違う。

そんな会社の中で、どうやってコミュニケーションをとっているか、秘けつを教えてくれました。それが、

Friendly but politely.
親しみやすいけど、ていねい。

ということだそうです。

さまざまな考えの人と話す。そのとき、親しみやすい言葉を使うけれど、決してナァナァな友だち言葉にならない、ということに気をつけていると知人は言いました。具体的には、会話する中で、こんな心がけをしているそうです。

● 相手に尊敬の念をもって接する(あいさつを忘れないなど)
● 仲のよい友だちに語るよりも、ていねいにする
●「です・ます」調で話す
●「ありがとうございます」などの、感謝の言葉はしっかり伝える
●「食べれる」「見れる」などの「ら抜き」言葉はできる限り避ける
● 「やべぇ」「マジ」といった、ニュアンスが伝わらない言葉は使わず、その気持ちを別の言葉でもう少し詳しく語る

たとえば、相手が自分よりも年下であっても、経験が浅い人であっても、同じ態度をとるそうです。まずは、形から入って、たくさん相手と話をしていく中で、価値観などの違う人と話すことへの苦手意識を取り払えたらいいですよね。

反対意見の人には「とりあえず共感」

「あぁ、この人とは合わない」

「私とは反対の考え方だな」

話をしているときに、そんなことを思うことがありませんか。

たとえば、こんなとき。

「探偵ものといえば、コナンだよな! 劇場版を見て、泣いちゃったよ。金田一とか、ホームズとか、いろいろあるけどさ、やっぱりコナンが一番だよ」

もしも、あなたが、名探偵ホームズシリーズをこよなく愛していたとしたら、どうしますか。

「そんなことはない! 私はホームズが好き。コナンよりホームズでしょ!」

こんな気持ちを抱くかもしれません。

でも、そのことを相手に言っても、険悪な雰囲気をつくるだけですよね。

相手の意見と真っ向からぶつかるようなことは、あまりおすすめしません。

こういう場合、できるだけ早く、違う話題にそらしてしまうのも手ですが、これはけっこう高等テクニックです。では、「話が合わない」と思ってしまった相手には、どのような反応をすればいいのでしょうか。

私がおすすめしたいのは、「とりあえず共感」です。

相手と話が合わないと思ったら、とりあえずの「共感」を示すのです。ここでいう共感とは、相手の意見に賛同することではなく、相手の意見を受け止めたという、サインとしての共感です。

意見を戦わせるのが雑談の目的ではない

無理に相手の意見に賛同する必要もないですが、その場で反論する必要もありません。いろいろな環境で育った人が、いろいろな意見を持ったまま、一時のおしゃべりを楽しむ。それが雑談です。

意見が違った場合、相手の意見を尊重したうえで、自分の意見を添えることはあってもいいと思います。ただ、意見を戦わせるのが雑談の目的ではないと思うんです。

なので、まずは、「この人はこういう意見を持っているんだな」と冷静に受け取って、あとは「あなたの意見は理解しました」という共感を示せばいいのです。


受け止めて、共感する。

ぜひ、覚えておいてください。

相手と反対の意見を持っているのに、受け止めるといっても、共感を示すのは難しいと思う人もいるかもしれません。ただ、多様な意見があるのは当たり前のことですし、 違う意見に対して感情だけで反発してしまうのはもったいないと思います。

今回紹介したことは、どれも高等テクニックではなく、簡単な心がけで誰でもできることです。話し下手の人でも、心がけさえあれば大丈夫です。

会話中に、ピンチだな、と思ったら、ぜひ思い出してみてください。

実践しているうちに、苦手意識もなくなりますよ。

(ひきた よしあき : コミュニケーション コンサルタント、大阪芸術大学放送学科客員教授)