写真:つのだよしお/アフロ

 サントリー社長で、経済同友会の新浪剛史代表幹事(64)が、9月29日、日本記者クラブでおこなった会見が波紋を広げている。新浪氏は、ジャニーズ問題についてこう語ったのだ。

「(同様の事例が起きれば)欧米のスタンダードだと、その会社そのものが立ちゆくことは難しくなる。ニューヨーク・タイムズはじめ、いろいろなところから『日本はたいへん変わった国ですね』というネガティブな反応がある。正直、海外からは理解されておりません。

 ただ、海外で批判されているからではなく、日本の企業が持っている自らの行動規範のなかで、人権は非常に重要だ。そういう意味で、今回明確になったジャニー氏のおこないは、決して許されるものではない。

 私たち企業は、われわれ自身の判断で、児童虐待をしてきた会社と今後お付き合いすることはない、と明確にしている」

 新浪氏は、9月12日の定例会見でも「所属タレントの(CM)起用はチャイルドアビューズ(子どもに対する虐待)を企業が認めるということ。人権侵害は認めたり、看過できたりするものではない」と発言し、ジャニーズ事務所とのCM契約を見直すのは当然との立場を示した。これが、経済界のジャニーズ事務所に対する向き合い方を決定づけたことは確かだろう。

「29日の会見で『海外から、日本が「おかしな国だ」と思われることは大変遺憾だ』と述べた新浪氏は、ジャニーズ事務所との契約を切るだけでなく、企業側として『どうすれば取引再開できるか』を伝える義務がある、とも述べました。

 こうした意見には、賛同する声も多く寄せられましたが、他の経済人より踏み込んだ発言だけに、多くの批判もあがっています」(芸能記者)

 実際、ネットニュースのコメント欄には、

《2004年の性加害認定後も、多くのジャニーズタレントをCM起用しておきながら、どの口がほざくのやら》

サントリーさんは辞めジャニをCMに使ってますよね 当時ジャニーズ事務所の一番恩恵受けてたグループメンバーなんですけど、ちょっと不思議!》

《もう広告主でもなんでもない、関係ない会社なんじゃないの、サントリー。P&Gは『発言権があるから』ってことで契約継続してるのに。契約してない無関係の会社が口出しすることじゃないと思うよ》

《ジャニーズを擁護するつもりもないけど。権威を振り翳して言うことじゃないよ。性加害にはウンザリだけど、こういう上から目線も本当きついよ》

 といった意見が会った。さらに、安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会に、サントリーが酒類を無償提供していたことから、

《ジャニーズより政治に忖度していた 確かお酒の無償提供だっけ? あのことについて語ってほしいけどな》

 などの意見も――。

「実は、29日の会見で、新浪氏は『国民皆保険ではなく、民間がこの分野を担っていったらどうか』と、皆保険の “民営化” も提言しています。『国民は誰でも等しく医療を受けられる』という、日本が世界に誇るモデルの転換を示唆するもので、こちらにも批判が殺到しているのです」(経済担当記者)

 この発言は「働きたい人がいきいきと長く働き続けられるために、健康寿命を伸ばす必要がある。そこでバイオ・ヘルスケアの新しい分野を成長企業として重点投資していただき、病気になってからの対症療法ではなく、元気でいられるための医療に切り替える。そのための医療制度・保険制度に作り変えていく。国民皆保険ではなく、民間がこの分野を担っていったらどうか」と、サラリとしたかたちで触れられている。

 あくまで新浪氏個人の見解のようだが、弱者切り捨てになるという指摘もある。実際、

《国民皆保険を民営化しろとか、ジャニーズ事務所への恫喝ともとれる発言とか…相変わらずのパフォーマンスばかり。消費者は発言を覚えてますよ!》

 といったコメントも寄せられていた。

 新浪氏といえば、6月には「健康保険証の廃止について必ず実現するよう、納期としてしっかりやっていただきたい」と話し、「何様だ」と批判されたこともある。こうしたことから、SNSでは「サントリー製品は買いません」といった “不買” まで広がっている。

 経済同友会の代表幹事という立場で、ありとあらゆることに切り込んでいく新浪氏。このまま “敵” を量産していく姿勢を続けるのだろうか。