70歳で自宅を売却し、現在は高齢者向けのサービスつき住宅(分譲マンション)にお住いの真藤眞榮さん。30〜50代は、シングルマザーとして育児や仕事に追われ、定年退職後は母親の介護に多忙な日々を過ごされました。現在整理しているものや新たに始めたことを、これまでのやめヒストリーとともに教えてもらいました。

広い実家でひとりでがんばるのをやめました

「将来、私の介護を娘にさせたくない、と考えていたのが大きいですね。なるべく長い間、自立して暮らせる環境はないかと思い始めた矢先、このマンションに出合ったんです」(真藤眞榮さん、以下同)

知り合いのおばあさまが亡くなって部屋があいたと聞き、参考程度に見学させてもらったのが転機となりました。

「縁もゆかりもない土地で、しかも人生初の集合住宅、かつ初めてのひとり暮らし。周囲からは『大丈夫なの?』と心配の声だらけでしたが、住めば都、快適です。たとえ、失敗かも…と感じたとしても、70代前半ならまだやり直す時間も体力もある! と思っていたので、すんなりと決断できました」

●「隠居見習い」として人づき合いも整理中

「今は“隠居見習い”と称して、自分がやりたいことを優先しています」

子どもの縁で知り合ったママ友との関係は大事にしつつ、都内在住時の儀礼的なつき合いは、徐々に卒業することに。

「お世話になった方々への感謝はきちんとお伝えしたい。でも負担になるおつき合いは少しずつ整理しています。不義理にならないように、礼節は欠かさず、時間をかけて。ただ減らせばいいってものでもないですから」

年賀状は廃止し、出したいときに手紙やLINEで。お歳暮などは送り先を厳選し、毎回、同じものを贈っています。

「『毎年楽しみにしているのよ』と言っていただけるとうれしくて。『こちらも元気にしています』という、生存確認の報告も兼ねてます(笑)」

●趣味は始めたり、再開したり。新しい友達も増えました!

今の住まいは、部屋に入れば普通のマンションですが、建物内には大食堂や大浴場、運動できるホールなども。

「趣味のサークルもたくさんあって、おもしろそうなものばかり。ボケているヒマなんてありません(笑)」

一昨年、ヒザを痛めたのを機に再開したのが、40代にも習っていたヨガ。卓球も中学生以来ぶりに再開しました。マンション内の新しい友達に誘われて、ビリヤードとチェスもスタート。

「サークル活動以外にも、お隣さんやサークル仲間とランチに出かけたり、旅のお土産を交換したり。今までにないタイプの交友関係の広がりが楽しいですね。これがけっこう忙しいんです」

将来を見据えて環境を整えつつ、積極的に今を楽しむ。それが真藤さんの「隠居見習い生活」なのです。

【真藤さんのやめヒストリー】

30代:長女が7歳のときに離婚。初めて就職し、会社員に
離婚後は、母・自分・娘の女性ばかり3世代の生活に。「母所有の実家のビルを建て替えたときのローンもあったので、正社員として事務職に就き、家計を支えました」

40代:肌の負担を減らしたくて、ほぼノーメイクに。白髪染めもやめた
ファンデ、口紅、ネイルをやめ、出勤時は眉とアイラインだけに。白髪染めは50代で終了。「黒・茶・白の『三毛猫ヘア』で、グレイヘアへの過渡期を乗りきりました」

60代:定年退職。年賀状を減らし、クルマを手放す
還暦記念に購入し、9年間乗ったお気に入りの赤い自家用車。「もういいかなと突然感じて、69歳のとき、車検のタイミングで手放すことにしました」

70代:親の介護が終了。実家を売却し、シルバーマンションへ移住。免許も返納
自宅で母親を看取り、自身の老前整理に着手。実家を手放して現在のマンションに転居。「自分で運転することはもうなさそうと思い、運転免許を返納しました」

 

『これからの暮らし by ESSE vol.05』では今回紹介した以外に、50代〜60代の暮らし上手さんが「やめてラクになったこと」、老けない美容とファッション、どっちがおトク?、夏野菜おかずレシピなど、暮らしに役立つ情報が満載。