高収入・高学歴の男性の中にも婚活に難渋する人がいるようです(写真:しげちゃん/PIXTA)

学歴も年収も平均以上、見た目も悪くないのに、婚活市場には結婚できない男性が一定数いる。お見合いの場合、最初の通過関門はサイトに公開されたプロフィールなので、そうした経歴のいい男性のお見合いは、成立することが多い。しかし、お見合いをすると、そこでお断りをされる。その原因とは何なのか?

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、条件はいいのに結婚できない男たちの原因を探る。

人生のパートナーを探して…

さとえ(45歳、仮名)は、半年ほど前に婚活をスタートさせた。“結婚はいつかはしたい”と思っていたのだが、20代で自分の仕事をステップアップするために大学に行き直したり、30代で職場で役職がついたり。気がついたら学びと仕事だけの人生で、歳を重ねてしまった。

「子どもを授かるのは難しい年齢ですが、コロナを経験して家族の大切さを知りました。人生のパートナーは得たいので、本格的に婚活を始めたいと思っています」

入会面談のときに、こんなことを言っていた。

婚活は生まれて初めてだったので、お見合いを申し込んできた男性には積極的に会うようにしていた。ところが、最初のお見合いを終えたときに、こんな感想を漏らした。

「ホテルのラウンジカフェなんてこれまで行ったことがなかったのですが、お見合い客が多いのにはびっくりしました。私が5分前に行ったら、もう8人待ちでした。お相手の男性はまだのようでしたので、私の名前を入れました。お相手は時間ギリギリにいらして、20分待ちで入ることができました」

気の利いた男性だと、予約できないカフェでのお見合いをする場合、20分から30分くらい前に到着している。混雑状況を確認して、あらかじめ席を確保しておき、時間になったら入口周辺などの待ち合わせ場所に女性を迎えに行く。

さとえは、3〜4回お見合いをしていくうちに、予約のできないラウンジカフェのときには、自分が早めに出向いて席を確保するようになった。というのも、これまでお見合いで、その気遣いをしてくれた男性が1人もいなかったからだ。

食事中パンくずを飛ばす男性

先日は、西新宿にあるホテルのティーラウンジでの見合いだった。

11時オープンのラウンジだったが、混雑することはわかっていたので、さとえは15分前に到着した。すると、すでにドアの前には長蛇のお見合い客の列ができていた。その列に今日お見合いをする男性が並んでいないかを確認し、いないようだったので最後尾に並んだ。

オープン時間になってラウンジの扉が開くと、並んでいた客は次々に入っていき、なんとさとえの2人前で、すでに満席になってしまった。入っていったのは、ほとんどがお見合い客だったので、出てくるのはおそらく1時間後。そうなると、1時間待ちとなる。

どうしようかと思っていたときに、お見合い相手のまさる(47歳、仮名)がやってきた。上場企業に勤める年収も経歴もいい男性だ。現況を報告すると、まさるが言った。

「僕は、ここじゃなくてもいいですよ。どこか知りませんか? 僕はこの辺は詳しくなくって。新宿は、歌舞伎町なら詳しいんですけどねぇ」

この発言に、さとえはカチンときたという。

時間ギリギリ、正確に言えば2分ほど遅れてやって来て、次のお見合い場所は私に丸投げで探せというのか。「新宿は、歌舞伎町なら詳しい」という言葉も癪に触った。

ホテルを出ると、近くにファミリーレストランがあった。そこに行ってみると、幸い待たずに入ることができた。席に通され着席すると、まさるが言った。

「朝ごはんを食べてきていないので、何か食べようかなぁ」

そして、ぶ厚いサンドイッチとアイスコーヒーをタッチパネルでオーダー。さとえは、飲み物だけを頼んだ。

そこからお見合いがスタートしたのだが、まさるは出会ったときからひどい咳をしていた。サンドイッチを食べなら咳き込むので、パンくずが周りに飛び散ることもあった。

だが、本人は、「風邪をひいてしまって。でも、病院で検査をしたらコロナではなかったので、安心してください」と、平然としていた。一方、さとえは見合いの間、咳と飛び散るパンくずが気になり、話には注力できずに一刻も早く見合いを終えることばかりを考えていた。

「本当に風邪だったかもしれませんが、あんなに人前で咳をするなら、お見合いは前もって延期していただきたかったです」

筆者に一部始終を伝えてきて、「交際は辞退でお願いします」というさとえの声が、憤っていた。この気の利かなさ、無神経さでは、どんなに男性の経歴がよくても、お見合い後に交際になることは難しいだろう。

割り勘でお釣りを渡さない

みわこ(39歳、仮名)が、まさあき(44歳、仮名)と先日お見合いしたときのことだ。老舗の落ち着いた喫茶店でのお見合いだったのだが、終えて連絡してきたみわこが言った。

「お返事は少し考えたいので、明日でもいいですか? ちょっと悩んでいます」

こう言いながらも、翌日には交際希望を出してきたので、何を悩んでいたのか聞いた。それは、お見合いを終えて会計でのできごとだったという。見合いは終始和やかムードで進み、1時間ほどで終わった。

「そろそろ行きましょうか」と、まさあきが言って席を立った。伝票がテーブルの上に置かれたままだったので、みわこはそれを取って自分のアイスティーの値段を確認すると、税込み957円だったので、財布から千円札を出して伝票と一緒に、「これ、私のぶんです」と差し出した。

すると、まさあきは「あ、はい」と、それを受け取った。

結婚相談所のお見合いでは、男性が女性のお茶代を支払うのは、暗黙の了解事項だ。まれに割り勘にする男性がいるのだが、そうした男性は見合い後に大抵、“お断り”される。

ただ、みわこは「お見合いの度にお茶代を男性に負担させるのは申し訳ない」と思っていた。なので、支払いのときには「私のお茶代は、どうしたらよいですか?」と、必ず聞くようにしていた。すると、これまでの男性たちは、「あ、大丈夫ですよ」と言って、ご馳走してくれた。

今回はテーブルに伝票を忘れ、それを手渡すときに自分のお茶代としての1000円札を手渡したから、その流れで受け取ってしまったのだろう。

なかには「お茶代は、大丈夫ですよ」と言って、1000円をこちらに戻してくれる男性もいるだろうが、自分が飲んだお茶代は払って当然のこと。そんなことを考えながら、まさあきのうしろについていった。

レジに行くと、まさあきは自分の財布から1000円札を出し、みわこの1000円と合わせて2000円を支払った。すると数十円のお釣りが来たのだが、そのお釣りをすべて自分の財布に入れてしまった。

みわこは、私に言った。

「数十円の話なので、そんなことにこだわる自分がケチくさいと思うんですけど、私のぶんのお釣りまで自分のお財布に入れてしまったことが、なんだかモヤモヤしたんです」

そして、続けた。「ただ私も39歳ですし、そんな細かいことにこだわっているから結婚できないのかなって。経歴も年収もいい方だから、お断りするのはもったいないし、交際してみようと思います」

ところが、ファーストデートを終えて、「交際終了でお願いします」と連絡を入れてきた。お断りの理由は、やっぱりお金だった。

2回目はランチデートだったという。都内のカジュアルイタリアンのお店に行ったようだ。ランチが税込みで1420円。食事が終わると、今回はまさあきが伝票を持って立ち上がった。

「僕はカードで払います」というので、「じゃあ、これ私のぶんです」と1500円を渡した。

すると、「あ、はい」と受け取り、自分の財布の中に入れてしまった。またもやお釣りがなかった。

「本当に数十円のことを気にしている自分が、せこいと思います」とみわこは言う。

「ただ、前回のお釣りを合わせたら、100円以上の金額になるし、このままお付き合いして行っても、お茶や食事をするたびに、お釣りが気になってしまう(苦笑)。彼とデートをするときは、小銭を用意して値段通りきっちり渡そうかとも思いましが、そんなつまらないことが気になるなら、もうお付き合いをやめたほうがいいなって」

「デート代は男性が支払って当然」と思っている女性が多いなか、みわこは「割り勘でもいい」と思っている少数派だ。今回のお見合いは確かに数十円の話なのだが、毎回お釣りを返さない男性は、女性への配慮がなさすぎるだろう。

そもそも、“ご馳走をする”というのは、相手をもてなすという気持ちの表れだ。女性をもてなしてあげようという気持ちのない男性は、婚活市場ではまずは選ばれない。

“まだ結婚が決まったわけではないし、同等な立場で付き合いたい”と思っているのだとしたら、割り勘にしてもいいが、お釣りはきっちりと渡したほうがいい。

スカイラウンジでお見合い

きよみ(41歳、仮名)がお見合いしたのは、大学院卒で、大手の金融機関に勤めている高年収のしんたろう(47歳、仮名)だった。しんたろうの相談室の仲人が気を利かせて、都内ホテルのスカイラウンジ席をあらかじめ2人の名前で予約しておいてくれた。

当日スカイラウンジに行くと、ウェイターが席まで案内してくれた。すでにしんたろうは来ていたのだが、テーブルを挟んで奧の席に座っていた。

ティールームやレストランなどでは、奥の席は女性に譲るのが一般的なマナーだ。ほかにもお見合い客を含めて男女のカップルが何組もいたのだが、すべて女性が奥の席に座っていた。

きよみの姿を見たら、席を立って奥を譲るのかと思ったら、しんたろうは動こうとせず座ったままだった。

メニューと水が運ばれてきた。それぞれにメニューが渡されると、しんたろうが言った。「予約席なので、ケーキセットを頼むのが必須だと仲人が言っていました。好きなケーキを頼んでください」。

しばらくすると、ウェイターが注文を取りに来た。すると、しんたろうは、「僕は、モンブランとコーヒーで」と、メニューを閉じてウェイターに渡した。きよみは「じゃ、私はショートケーキと紅茶で」と注文した。

時間よりも早めに来て待ってくれていたのはよかったが、本来なら女性を座らせる奥の席にドカンと座り、注文も真っ先にしてしまう。お見合いが始まる前から、自分本位な態度に、カチンと来ていた。

話が始まると、しんたろうの口からは、「仲人がこうしろと言った」「仲人がこう言っていた」という言葉が度々飛び出した。そして、1時間程度話すと、「じゃあ、そろそろ行きますか」と言いながら、背後から紙袋を取り出してきた。

「これ、良かったら」

それは、菓子の入った紙袋のようだったが、見合い中、しんたろうの尻と背中に当たっていたことを考えると、きよみは嫌な気持ちになった。ただ拒否もできないので、それを受け取った。

そして、一緒にレジに行くと、しんたろうが言った。「あ、会計は僕が払うようにと仲人から言われていますから、大丈夫ですよ」

経歴も年収もいい方だったが…

お見合いを終え、「お断りでお願いします」と伝えてきたきよみが、げんなりとした声で言った。

「経歴も年収もいい方だったし、一流ホテルのスカイラウンジを予約してくださってのお見合いだったので、かなり期待して行ったんですけど、大はずれでした。レディーファーストやマナーも知らない。47歳のいい男が、“仲人が”を連発する。さらに、いただきたくないお土産まで。もう最悪でした」


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今回登場の3人の男性は、いずれも経歴も年収も悪くない初婚者だ。おそらくこれまで女性とお付き合いした経験がないままに歳を重ね、結婚したくなったから、相手を探すために結婚相談所に入ったのだろう。

経歴や年収がよければ見合いは組める。しかし、女性と対峙したときに、自分の発言や行動が相手にどう受け取られるのか、そこをもう一度考えてみたほうがいい。

相手に好感を持ってもらうためには、どんな発言をして、どんな行動を取ったらいいのか。その想像力がなければ、何回お見合いしても成婚に到達することはない。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)