アメリカ・マサチューセッツ州のニューベッドフォード公共図書館から1904年に貸し出された本が、なんと119年ぶりに返却されました。図書館長は1世紀以上にわたり延滞していた本が返却されたことを受けて、「本を返すのに遅すぎることはない」と訴えています。

An overdue library book returns 119 years later : NPR

https://www.npr.org/2023/07/08/1186635180/overdue-library-book-119-years



Extremely overdue book returned to Mass. library 119 years later

https://www.boston.com/news/books/2023/07/08/extremely-overdue-book-returned-to-mass-library-119-years-later/

図書館で借りた本を返さないままうっかり期限が過ぎてしまった」という話をしばしば耳にしますが、数年単位で延滞してしまったという人はそうそういないはず。ところがニューベッドフォード公共図書館では、1904年2月14日に借りられたジェームズ・クラーク・マクスウェルの「An Elementary Treatise on Electricity(電気論の初歩)」が、実に119年の延滞期間を経て返却されるという珍しい事態が発生しました。

報道によると、ウェストバージニア大学図書館の学芸員であるスチュワート・プレイン氏が最近寄付された本を整理していたところ、もともとニューベッドフォード公共図書館の蔵書だったと思われる「電気論の初歩」を発見したとのこと。プレイン氏はこの本に「廃棄」のスタンプが押されていないことを確認し、ニューベッドフォード公共図書館の司書であるジョディ・グッドマン氏に連絡した結果、この「電気論の初歩」が1904年以来貸し出されたままになっている延滞本だったことが判明したそうです。

今回の件はニュース番組でも取り上げられており、実際に返却された「電気論の初歩」の姿を見ることができます。

119-year overdue book returned to New Bedford library - YouTube

この本が今回119年ぶりに返却された「電気論の初歩」です。ニューベッドフォード公共図書館の館長であるオリビア・メロ氏は、「100年遅れで本が戻ってくることは非常にまれです。5年延滞された本が戻ってくることさえ奇跡です」と述べています。



保存状態は非常に良好だそうで、メロ氏は、「この本は非常に良い状態だったので、持ち主が素敵な本棚に置いていたのは明らかです。おそらく、この本は家族の中で受け継がれてきたのでしょう」とコメントしました。



「電気論の初歩」が出版されたのはマクスウェルが亡くなってから2年後の1881年のことであり、ニューベッドフォード公共図書館の蔵書には1882年に追加されました。



メロ氏は、100年以上前に貸し出された本が返却されたという今回の一件は、非常に古くからニューベッドフォード公共図書館が存在し、歴史ある蔵書を受け継いできたことを示すものだとコメントしています。その上で同氏は、「本の歴史を振り返ると、私たちがどれほど長期間にわたりここに存在しているのかという、本当の意味での目的意識を与えてくれるのです」と述べました。



なお、ニューベッドフォード公共図書館では延滞1日につき5セント(約7円)の延滞料がかかるため、119年延滞すると延滞料は2100ドル(約300万円)を超える計算になります。しかし、延滞料の上限が2ドル(約280円)に設定されているため、実際に高額の延滞料が請求されることはないとのこと。メロ氏は今回の事例から得られた教訓として、「延滞した本を返すのに遅すぎるということはない」と訴えています。



メロ氏は、1904年に貸し出された本が壊れることなく119年ぶりに返却されたという事例は、コンピューター化により計り知れない情報へ即時にアクセスができるようになった現代において、依然として紙に印刷された言葉の耐久性が優れていることを示すものだと主張。「印刷された本の価値は、それがデジタルではなく消えることもないことです。手に取るだけで、120年前に誰かがこの本を読んでおり、それが今私の手の中にあるという感覚を得ることができます。この本は100年後もここにあるでしょう。印刷された本はいつまでも価値を持っているのです」と述べました。