ガートナージャパン(Gartner)は6月28日、国内企業のソフトウェア/クラウド契約に関する調査結果を発表した。80%以上が何らかの契約上の不満を抱えていることが明らかになった。

契約上の具体的な不満(Gartner調べ)

2023年4月に実施した調査で、ソフトウェアやクラウド・プラットフォームの契約上の不満について尋ねたところ、「特に不満がない」との回答は20%弱にとどまり、80%以上が何らかの不満を抱えていた。

不満を持つ企業に具体的な内容を尋ねると、「ライセンス/サブスクリプション料金の値上がり」や「サポート料金の値上がり」が最も多く、次いで「サービス・レベルが不透明」やベンダーによる「突然/一方的な契約ポリシーの変更」となった。

一方、契約上の不満として、値上げ(調達コスト増)への対抗策を尋ねると「他ベンダーへの移行/移行検討」が最多であった。次いで「納得のいく説明をベンダーへ求める」、「価格上昇幅の上限をあらかじめ交渉」が上位に挙がった。

値上げ(調達コスト増)への対抗策(Gartner調べ)

Gartnerは今回の結果から、ベンダーへ合理的な説明を求める以外の対抗策に乏しく、十分な説明が得られない場合にはベンダーを変更するという思い切った手段も辞さない顧客企業の姿勢が垣間見えるとしている。

Gartnerのバイス プレジデント アナリスト・海老名剛氏は次のように述べている。「顧客企業は、物価上昇や為替変動といった値上げ要因について、それぞれの要因がどの程度の値上げにつながったのか、細かな説明を受けるべきです。実際にこうした追及をあきらめないことで、値上げ幅が抑えられる例もあります。現在の経済情勢を鑑みて受け入れざるを得ない値上げは受け入れる一方で、正当性のない値上げは拒否する姿勢が大切です。誠意ある説明を行わない場合には、ベンダー変更もいとわないという、毅然とした態度を示すことも時には必要です」

ただし、ベンダーを変更してもこれまでと同じコスト増の問題に直面する可能性はある。運用・保守プロセスの最適化に時間がかかるソフトウェアや営業秘密を含む重要データを大量に管理するプラットフォームを移行するには、移行プロジェクトとプロジェクト後の定着化に相当の時間を要し、結果的にDXで求められる迅速性が損なわれるリスクもあると同社は指摘する。

海老名氏は、次のように補足している。「契約の無駄や過剰を省くことはコスト削減への即効性があり、顧客企業主導で進めやすい施策の1つです。そのために、例えばビジネス部門とIT部門の情報共有を日常的に行う組織文化の醸成や、ソフトウェアやクラウド・プラットフォームの利用状況を正確に把握するためのツールへの投資といった、社内で打てる施策も考えられます。ベンダー変更の決断は、その他の施策や交渉がすべて不調に終わった場合の最終手段と捉えた方が良いでしょう」