京都サンガ躍進の原動力「U−22トリオ」海外遠征でも存在感、首位奪取へ怪気炎
J1のリーグ戦中断期間を前に、クラブ21年ぶりとなるJ1での3連勝(第5節終了時点)。上り調子の京都サンガF.C.にあって、その勢いをU−22日本代表にももたらしたのは、MF川粼颯太、MF山田楓喜、FW木村勇大の"U−22トリオ"である。
ヨーロッパ遠征に臨むU−22代表メンバーには当初、川粼と山田のふたりが選ばれていたが、その後、木村も追加招集で参加。1クラブから3人の選出はもちろん最多であり、J1での好調ぶりが、ここにも反映された格好だ。
ドイツ戦では川粼と山田が先発出場し、木村は途中出場。ベルギー戦では川粼と木村が先発出場し、山田が途中出場と、3選手そろって2試合ともに出場している。
ヨーロッパに入り、覚悟の言葉を口にしていたのは、21歳にして京都の新キャプテンに任命された川粼だ。
ドイツ、ベルギーと対戦したU−22日本代表でも存在感を示した川粼颯太
「もう毎年、毎年が勝負だと思いますし、毎年、毎年が転機だと思っていても、やっぱりこの一年は絶対重要だなと思います。
去年初めて J1を戦うなかでは、自分がまだ慣れていなくて、何とか模索しながらの一年でしたけど、今年はキャプテンとして、もう模索とか、試すとか言ってられない。本当に自分が京都を象徴するとか、Jリーグを象徴する(選手になる)ぐらいの気持ちでやらないと、この集団(U−22代表)には生き残っていけないし、生き残るだけでなく、チームの中心、代表の中心っていうのを目指していくなかでは、本当にこの一年が重要だなと思います」
もちろん、チームが変われば、サッカーも変わる。京都とは異なる代表でのサッカーに、不慣れな面がまったくないわけではない。
だが、川粼曰く、「代表はサイドで時間を作るところや、ボールを大切にするという面では、(縦に速い京都とは)ボランチの仕事も多少変わってくる」が、「自分の特徴であるボールを奪うところとか、ハードワークしてボールを奪ったあとに攻撃につなげるところ、前に出ていくところをなくしたら僕じゃない」。
2−2で引き分けた強豪ドイツとの試合では、まさに有言実行のパフォーマンスを披露。誰より出足のいい守備で、劣勢の時間帯でもドイツの強力攻撃陣に対抗し続けたのは川粼だった。
「僕はそこで勝負しているし、他の人より段違いに出足が速いぐらいじゃないと、自分の存在意義はない。どんなピッチだろうが、どんな流れだろうが、そこは絶対負けないっていうのは意識してやっています。
(ドイツ戦では)ずっと京都でやってきたよさが出せたかなと思いますし、自分のところで(相手の攻撃を)潰しきれば、絶対に流れは変えることができる。出足とかデュエルで負けないっていうのは、すごく意識して試合に臨みました」
そんな力強い言葉を口にする新キャプテンは、次のような言葉で今季J1でのここまでの戦いを振り返る。
「開幕2試合は(連敗と)、本当に自分たちらしくない試合をしてしまったけれど、自分たちの原点に返るというか、"京都スタイル"というものについて、改めてみんなで者(貴裁監督)さんと話したし、そういうところを出していくなかで徐々に勝てるようになりました」
3連勝となった第5節の横浜FC戦(4−1)にしても、「先制はされましたけど、自分たちのスタイルでやっていればひっくり返せるっていう自信があったからこそ、逆転できたと思います」。
キャプテンとして迎えた新シーズン、いきなりの開幕2連敗には、「ブーイングを受けたのも初めてでしたし、自分が先頭に立って(試合後のサポーターに)挨拶に行くのは、苦しい時間でした」。キャプテンであるがゆえの責任を「無意識に重く感じることもあった」という。
しかし、「だからといって、自分のプレーから積極性が失われていたわけではなかった」と川粼。「特に2試合目の名古屋グランパス戦は(敗れはしたが)、自分たちらしさが徐々に戻ってきていたので、これを続けていれば大丈夫だろうと思っていました」。
その言葉どおり、続く第3節からは3連勝。その反転攻勢のきっかけとなったのが、右ウイングで起用されたレフティ、山田だった。
連敗を喫した開幕からの2試合では出場機会がなく、「オレを使ったら勝てるのに」と忸怩たる思いを抱えていた山田は、第3節のFC東京戦で待ちに待った今季初先発初出場。
「オレが流れを変えるしかないと思いました」
はたして、京都は2−0で今季初勝利。「悪い流れを断ちきれたのはよかった」と語る山田は以後、先発メンバーから外れることなく、3連勝に貢献し続けている。
「その勢いで、自分も(第4節の湘南ベルマーレ戦で)ゴールを決められて、チームとしても(第5節の横浜FC戦で4−1と)大量得点が取れた。最初試合に出られなくても腐らずにやってきたことが、こういう結果に出ていると思います」
京都の救世主が、笑顔で続ける。
「それはもう、思ってますね。オレが流れを変えたって(笑)」
今回のU−22代表のヨーロッパ遠征についても、「京都から3人も選ばれて、京都でやっていることは間違ってないなって再認識できたので、めちゃくちゃ自信になっています」と山田。
川粼同様、京都とのサッカーの違いを感じてはいるが、「京都で強度の高いサッカーをやっているから、こっち(代表)にきても対応できるんかな、っていうのは感じます。これからどんどんA代表とかにも絡んでいけるように、結果で示していきたい」と意気込む。
「(代表活動を重ねて)自分がどういう選手か、周りの選手からわかってもらえてきたので、あそこ(右サイドの高い位置)でボールを持つと、『山田ゾーンや』みたいなことを言ってもらえる(笑)。自分は他の人にはないシュートの質を持っていると思うので、そこで違いを見せていけたらなと思っています」
実際、ドイツ戦では1点ビハインドの前半終了直前、得意の"山田ゾーン"で放ったカットインシュートがCKを呼び込み、そこから同点ゴールが生まれている。
「あのゾーンで仕事をするのが自分なんで。ドイツ戦はあのシュート1本しか打っていないですけど、それがCKになって、点につながったのはよかったです」
また、続くベルギー戦でも、山田は途中交代からアディショナルタイムも含めてわずか8分程度プレーしたにすぎなかったが、「あの短い時間でもシュートを2本打てたのはポジティブなこと」と、手応えを口にした。
そして、刺激に満ちた、およそ1週間のヨーロッパ遠征が終了。選手たちの帰国とともに、中断していたJ1も再開となる。
遠征中、山田は「こっちはこっちなので、Jリーグのことは何も気にならなかった」と言うが、リーグ戦再開後の初戦となるJ1第6節では、いきなり首位のヴィッセル神戸をホームに迎えての一戦が待ち受けている。
現在、神戸と勝ち点3差で5位につける京都にとっては、勝てば首位も見えてくる大一番だ。
ドイツ戦で痛めたという山田の右太ももにはテーピングががっちりと施されていたが、「帰ったら試合に出たいんで、すぐに治すだけ。神戸戦にしっかりフォーカスして準備していきたいなと思っています」と、笑みを浮かべた。
それぞれの手応えとともに、ヨーロッパから帰国の途についた京都のU−22トリオ。3連勝中の勢いを彼の地でさらに加速させ、首位叩きを目論んでいる。