ヤクルトは投手陣に不安も「リーグ３連覇は間違いない」と真中満は断言 ドラ１ルーキー吉村貢司郎は「２ケタ勝利もある」
プロ野球2023開幕特集
真中満インタビュー後編 ヤクルト３連覇のカギ
３月31日、プロ野球が開幕。今回、解説者の真中満氏にセ・パ両リーグの順位予想を聞いた（前編、中編）。セ・リーグでは東京ヤクルトスワローズを１位とした真中氏だが、古巣であり、春季キャンプでは臨時コーチも務めたチームの状況をどう見ているのだろうか。リーグ３連覇の可能性について詳しく語ってもらった。
中編「2023年パ・リーグ順位予想」＞＞●ドラ１ルーキー吉村貢司郎は２ケタ勝利も
ーー2021年、そして2022年とセ・リーグ連覇を果たした東京ヤクルトスワローズは今シーズン、球団史上初となる３連覇がかかっています。OBとして、真中さんは「３連覇のカギ」はどこにあると思いますか？
真中満（以下、同） ３連覇のカギは間違いなく投手陣です。打線に関しては12球団有数の実力を誇っているので、問題はとにかく投手力。
先発の頭数がどうなるのか？ 中日ドラゴンズや阪神タイガースと比べると、やっぱり見劣りする感はありますから。
野球解説者の真中満氏 photo by Tanaka Wataru
ーー現状では今年のヤクルト先発ローテーションをどのように見ていますか？
小川泰弘、サイスニード、高橋奎二の３人が軸となって、そこにベテランの石川雅規、高梨裕稔、新外国人のピーターズ、エスピナル、ドラフト１位ルーキーの吉村貢司郎あたりになるのかな？
ピーターズ、エスピナル、吉村のなかから２人は出てこないと、ヤクルトは厳しくなると思うけど、逆に２人出てくれば、十分頼りになるローテーションになると思いますね。
ーーオープン戦では吉村投手の好投が続いています。真中さんは、ドラフト１位ルーキーのことをどのように見ていますか？
すごくいいと思いますね。ストレートに力があるし、変化球も低めに集められる。社会人出身だからマウンド上でも落ち着いていますよね。
牽制にしても、バント処理にしてもそつなくこなすし、身体能力の高さを感じられます。開幕ローテーションは十分、任せられる気がしますね。
ルーキーの吉村貢司郎 photo by Kyodo News
ーーシーズンを通じて活躍できそうですか？
体力もありそうだけど、もしも１年間ローテーションを守ることができたとしたら、２ケタ勝利も可能な逸材だと思います。
最近の例で言うと、広島東洋カープの森下暢仁みたいな存在になれそうな気がします。
ーー投手陣で言えば、守護神のマクガフ投手が移籍したことで、クローザー問題を含めて、中継ぎ陣の再編が懸案となっています。この点についてはいかがですか？
マクガフの穴をどうするか？ ここが最大の懸念なのは間違いないです。現状では、クローザー候補として獲得したケラの名前が挙がっているけれど、こればかりは何とも言えないですね。
郄津臣吾監督も「まだ白紙だ」と言っているように、ケラを第一候補としながら、しばらくの間は他の選手の可能性も模索していくことになると思います。
ーー真中さんは、誰がいいと思いますか？
候補はたくさんいます。清水昇、石山泰稚、田口麗斗、そして木澤尚文......。やっぱり、９回はコントロールのいいピッチャーがいいと思うんですよ。その点、ケラは未知数なので、昨年までの実績を考えると、僕は清水がいいと思いますね。
本当ならば木澤もすごく魅力的なんですけどね。ストレートに力があるし、マウンド度胸もいいし。コントロールに不安があるけど、その点をクリアできれば木澤のクローザーもアリかな。
ーー今春のキャンプで、真中さんは臨時コーチを務めました。打撃陣については、どのように見ていますか？
最初に言ったように、打線に関しては12球団有数の実力を誇っているので、何も心配はしていません。WBCに出場した村上宗隆と山田哲人の２人が軸となって進んでいくでしょうね。
去年、三冠王の村上は何も心配ないです。強いて言えば、キャンプの時期から山田はいろいろ試行錯誤しながら苦しんでいた点が気にかかるけど、山田なら大丈夫でしょう。
ーープロ13年目、今年31歳になる山田選手についてどう見ていますか？
やっぱり、長年第一線で活躍し続けてきたことでもちろん故障もあるでしょう。当然、一時期の身体能力からは若干の衰えが出てくるのはしょうがないけど、まだまだ老け込む年齢じゃないし、現状のコンディションと相談しながらバッティングフォームを模索しているところだと思います。
そしてきちんと結果を残す。そういうことができる選手ですから、山田は。
ーー臨時コーチ期間を通じて、気になった選手、期待のできる若手は誰ですか？
感じたのは、若い選手の底上げがすごいなということでしたね。以前は、一軍と二軍のレベルの差がすごくあったけど、そういう意味ではかなり層が厚くなったと思います。
印象に残ったのは何人もいるけど、昨年台頭した内山壮真もさらに飛躍しそうです。さらに、売り出し中の武岡龍世、ルーキーの北村恵吾、あとは２年目の丸山和郁も目立っていました。丸山は、非常にいいなと思いましたね。
ーーZOZOマリンスタジアムでのオープン戦でもレフト方向にホームランを打ちました。攻守にわたって、丸山選手は元気な活躍を見せていますね。
昨年のキャンプで見た時には、１年目の緊張感や疲れがあったのかもしれないけど、今年のキャンプは明らかにスイングスピードが違っていましたよ。
よく話をする子だし、いろいろ考えている選手なので、まだまだ伸びると思いますね。個人的にはレフトでレギュラーで使ってもいいと思いますね。
ーー以前、真中さんは「センター・塩見泰隆、ライト・サンタナはほぼ確定で、問題はレフトを誰にするか？」と語っていました。「レフト・丸山」がいいですか？
もちろん、昨年のようにベテランの青木宣親、中堅の山崎晃大朗を軸にして回していくと思うけど、丸山をたくさん使うことで、今後の可能性としてはかなり面白いと思いますけどね。
塩見が故障で出遅れているから、丸山の開幕スタメンセンターも可能性としてはあるんじゃないかな？
ーー球団史上初となるリーグ３連覇を目指す郄津監督は就任４年目となります。真中さんから見た「郄津采配」はどう映っていますか？
選手起用に関して、強い信念を持っている監督ですね。特に投手起用についてはひと言で言うと「我慢強い監督」かな？
昨シーズン終盤、チーム状況が悪い時でもローテーションを崩すことなく、選手のコンディション優先で起用していたし、たとえ失敗しても、若手にチャンスを与えることも両立していたし。やっぱり、「我慢強い監督」ですよね。
ーー郄津監督は、昨年の日本シリーズで敗れたことについて、「今年は去年の悔しさを引きずって戦っていく」と語っています。この発言はどう考えますか？
外部から見ればリーグ２連覇を実現したし、日本シリーズは勝ったり負けたりは時の運でもあるけど、おそらく監督のなかでは「うまくやっていれば勝てた」という思いが強いんでしょう。
力量的に大差で敗れたのであれば、そんな思いも芽生えないと思うので、「あと一歩で勝てたのに」という悔しさがあるんでしょうね。その思いを持って戦うのはいいことだと思いますよ。
ーーでは最後に、ヤクルト３連覇の可能性について、真中さんの考えをお聞かせください。
臨時コーチを務めておいて、「３連覇は難しい」なんて言えるわけないでしょう（笑）。でも、忖度を抜きにしても、やっぱり今年もヤクルトは強いですよ。
最初に挙げたように先発ローテーションがきちんと確立できるかどうかがカギになるけど、３連覇は間違いない。そう断言しましょう！
終わり
前編「2023年セ・リーグ順位予想」＞＞
中編「2023年パ・リーグ順位予想」＞＞
【プロフィール】
真中満 まなか・みつる
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト３位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計４回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。
