30日、「ブラビア」の発表会でブランド力に自信を示すソニーの井原勝美副社長(撮影:佐谷恭)

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ソニー<6758>とシャープ<6753>は8月末に、年末商戦向けの液晶テレビをそろって発表した。シェア拡大を狙う両社はともに、大型の拡販戦略を前面に打ち出している点が目を引く。

 ソニーは30日、同社として初めて50型を超える機種を含む、32型から52型の液晶テレビ9機種を発表した。同社が薄型テレビのブランドを「WEGA」(ベガ)から「BRAVIA」(ブラビア)に切り替えてから約1年、ブランドの認知度が向上し、不振だったテレビ事業に復活の兆しが見えてきた。この状況を井原勝美副社長は“「ブラビア」ブランドの第2幕”と表現し、液晶テレビの大型化で、黒字への転換に向けて弾みをつけたいとしている。

 シャープも31日に、8月に稼動を開始した亀山第2工場(三重県亀山市)で生産した液晶パネル搭載の、42型から52型の液晶テレビ6機種を発表した。同社は今月2日に、テレビとレコーダー、音響システムが専用リモコン1つで操作できる新機能「AQUOS(アクオス)ファミリンク」の発表と同時に、それに対応した中型の液晶テレビ6機種を発表したばかり。片山幹雄専務は「12サイズ39機種がそろい、大型だけでなく、キッチンや寝室、子ども部屋用の“2台目”としても選んでもらえる」とラインナップの充実を強調する。さらに、海外市場では「アクオス」の大型テレビでのブランドイメージを確立したいとも話している。

 ひと口に大型化と言っても、その戦略は微妙に異なる。ソニーが米国で人気のリアプロジェクションテレビを、大型人気の波に乗じてもう一度日本市場への投入を試みる一方で、“液晶の”シャープは、米国のリアプロの牙城を崩したいと意気込む。

 また、ブランドが確立したと自信を持つソニーは、需要増を外部の調達先を確保することでまかなうとしている。同社は液晶テレビの価格が全体的に下落しているにもかかわらず、ブランド力が奏功して歯止めがかかっていると自信を隠さない。一方、大型画面を効率よく製造できる「第8代マザーガラス」の世界初の工場の稼動を開始したシャープは、「同業他社で第8代の工場を来年の秋に稼動させようというところがあるが、当社は少なくとも1年先行している」と、新工場に期待を示し、「工場の差がテレビの差になる」とこちらも強気の構えだ。

 価格については、ソニーがフルHDパネル搭載で「1インチ1万円」を切る市場想定価格を想定しているのに対し、シャープの片山専務は「適正価格に落ち着いていくと思う。安すぎてもダメで、苦労して買うという“夢”を残したい」と、価格の大幅な下落を望まない姿勢を示した。【了】

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