お米の魅力を伝える場として、2023年1月13日に東京・八重洲駅前にオープンした『YANMAR TOKYO』。農業や食についてわかる体験型ギャラリーやお米にフォーカスしたレストランなど、お米のテーマパークさながらの施設になっている。日本の食料自給率を支えているお米について、触れて知って考えて味わえる、注目のスポットだ。地上2階・地下1階からなる全エリアについてお届けします!

お米の幅広さを楽しく理解できる「ヤンマー米ギャラリー」

日本の食文化の象徴であるお米や農業に着目した『YANMAR TOKYO』。そう、みなさんご存知の農機などのメーカー・ヤンマーによる、お米の魅力を発信する複合施設だ。

ビルの真正面から見えるところに堂々と鎮座するのは、同社製のピカピカのトラクター。丸みを帯びたフォルムの美しさやタイヤの大きさなど、その迫力ある出立ちにマシン好きでなくても圧倒されるだろう。

施設を入るとトラクターがお出迎え。空間展示は茅葺き屋根職人でありクリエイターの相良育弥さんとのコラボレーション。稲わらの美しさに驚くばかり

1階の建物内に入ってすぐの場所にあるのが「ヤンマー米ギャラリー」(入場料無料)。1900年代以降の稲作についての歴史を振り返るパネル展示など、お米について学べる体験型のギャラリーだ。

まず出迎えてくれる「お米の性格診断」は、質問に「はい・いいえ」で答えていくことで、自分の性格をお米の品種に例えて教えてくれるというもの。

品種の主な特徴や生産地域、作付け率、他の品種との相性診断なども見ることができ、複数人で行くとより楽しいだろう。日本にはなんと900ものお米の種類があるそうで、こんなにいろいろな品種があるんだ! と診断を忘れるほど感動した。

楽しみながら学べる「お米づくりの知恵」。施設を訪れていたたくさんの親子が遊んでいた

「お米づくりの知恵」は稲作の際にどんな課題があり、それをどう解決するのかをゲーム感覚で理解できるもの。天候や獣害、地域づくりなど多岐に渡る、お米づくりの苦労や工夫を知ることができる。お米の一粒ひと粒にありがたみを持つこと間違いなしだ。

「お米の料理MAP」の料理一覧。どれだけご存知?

世界各地のお米料理のレシピや豆知識が見られる「お米の料理MAP」は、前菜・飲み物・メイン・デザート・保存食の5ジャンルから好きな料理を選ぶと、調理法などを提示してくれる。

料理は、日本の「赤飯」やウクライナのロールキャベツ「ガルプチィ」、イタリアの「トルタ・ディ・リーゾ」など12種類があり、名前を聞いたことのない料理名もちらほら。動画で作り方を丁寧に解説されていて、挑戦してみたいと思わせてくれる。

建物の外から回るお米&お米アイスのお店

「ヤンマー米ギャラリー」から外へ出ると、お米にまつわるふたつの店舗が並ぶ。

「ワインのようにお米を楽しむ」をコンセプトとする『KOME-SHIN(米心)』は、こだわりのお米とお米を楽しむテイクアウト商品を販売。

どのお米にしようか迷うのも楽しい『KOME-SHIN』。約30種のお米が並び、どんどん入れ替わるので、いつ行っても飽きない

テーマは「RICE TERROIR(ライステロワール)」。お米は同じ品種でも生産者や土壌、水質によっても味が異なるそうで、それぞれの特徴がわかるよう、無農薬や有機農業といった栽培方法の違いや、粒の大きさ、ふんわりまたはしっかりといった歯触りや粘りなどがバロメーターで記されている。

各地の生産者によるお米2合がワインボトルに詰められている(1600円〜)から、異なる生産者による同じ品種を食べ比べてみても楽しいだろうし、ゆかりのある土地のものから選び、自分の好みを見つけていくのもいい。

また、テイクアウト商品としておむすびも用意。合計6種類あるので、お好みでどうぞ。

ボリュームたっぷりの「ポークたまごおむすび」(380円〜)。ツナマヨやキムチ(430円)などの計6種類

『SAKEICE Tokyo Shop』は、日本酒の酒蔵とコラボした日本酒アイスの専門店。池袋に続く2店舗目で、互いのお米への姿勢に賛同し、こちらにも出店したのだとか。

北海道産ミルクを使ったアイスに、お酒がたっぷり練り込まれている。伺った日は「隠岐誉 室町の純米酒」や「男山」、「富久長 純米ゆずレモン酒」などを使った10種類のアイスをラインナップ。一番人気の定番商品、八海山を使用した「日本酒アイス」をはじめ、その他はだいたいが月替わりで1種類程度入れ替わっていく。

「日本酒アイス」は、日本酒の芳醇な旨みのあとにミルクの濃厚さが楽しめる

アルコール度数が4%前後あるので、濃厚なミルクアイスに負けずに日本酒の風味がしっかりと感じられる。それでいて日本酒の芳醇さとアイスの甘みのバランスが絶妙で、後味はとてもすっきり。これならあれこれ食べられそうと思わせるほどだった。

ヤンマーと共同開発したノンアルコールのアイスも用意。こちらの需要もかなり高く人気なのだとか。

赤いもち米を使ったノンアルコールの「ピンクの米粉アイス」。やさしい甘みが口の中にまったりと広がる

シングル550円、ダブル750円、トリプル900円のほか、450円で持ち帰りタイプも各種販売している。

贅沢なお弁当と空間が味わえる地下1階

地下1階へエスカレーターで降りていくと、目の前にあるのが『海苔弁 八重八』。放送作家・プロデューサーであり、京都の料亭『下鴨茶寮』の主人でもある小山薫堂さんが監修した、ヤンマー直営のテイクアウト弁当店だ。

『海苔弁 八重八』

海苔弁は「八重」(1500円)に、「とり重」(1300円)、「さけ重」(1400円)の3種類。

羽釜で炊き上げた鳥取県日南町産の特別栽培米「コシヒカリ」は甘みが十分で、お米の一粒ひと粒がしっかりと主張してくる。香り高い愛知県三河湾産の「青混ぜ初摘み焼きのり」を合わせた、贅沢極まりない海苔弁なのだ。そのご飯の間には昆布、梅干し、明太子、高菜漬けが隠されていて、箸が止まらない。

海苔弁「八重」(1500円)

メインのおかずは「鶏の照り焼き」または「鮭の柚子塩麹焼き」が選べ、両方がのった「八重」もある。今回いただいたのは「八重」。鮭は、麹の甘さと焼きの香ばしさの中に柚子がふわりと香り、とても上品。どちらかというと、こちらを気に入った。

添えられた惣菜は発酵の力を駆使して、素材のおいしさを底上げしている。例えば「ちくわと醤油麹の磯辺揚げ」のサクサクの衣には、これでもかというほど青海苔が入っていて、これだけで販売していただきたいくらい好き。

ほかには、ダシいっぱいのしっとり玉子焼きに甘酒の風味が溢れ出す「甘酒の玉子焼き」も美味。一つひとつ異なる食感や味付けで、ご飯とももちろんマッチしていた。

同ビルの象徴になっている桜と本物のグリーンが癒しを与えてくれる贅沢空間の吹き抜け

このフロアには、イベントスペースの「HANASAKA SQUARE」がある。吹き抜けになっていて気持ちの良い空間だ。テーブルと椅子が設置されているので、出来立てのお弁当をここでいただくのもいい。

いずれイベントなども行われる予定だが、現在は無料で開放されているので、ちょっとひと休みしたい時にも使える。知っておくと便利だろう。

ヤンマーは“人の可能性を信じる”“人の挑戦を後押しする”文化を大切にしている会社。「HANASAKA」とはこの精神を根底とした考え方だ。地下1階の「HANASAKA STAND」では、同社のサッカー部が母体となったセレッソ大阪の育成アカデミーに集う選手やアーティストなどがんばっている人々を応援していることがわかる展示を見られる。

この地下1階が、八重洲地下街と2023年3月10日にグランドオープンした「東京ミッドタウン八重洲」と接続している。

東京ミッドタウン八重洲とは一体!?

2階は生産者と料理家と食いしん坊の架け橋になる店が並ぶ

2階には複合店舗の「YANMAR MARCHÉ TOKYO」がある。

「YANMAR MARCHÉ TOKYO」の外観。『TOCHI-DOCHI』は右手、『ASTERISCO』は左手に入って分かれる

ひとつは物販の『TOCHI-DOCHI』。ANA Xが企画・運営する日本各地の特産品を販売するお店で、その土地がもつ歴史的背景やストーリーを感じられる逸品が並んでいる。

2023年3月末までは、鹿児島県北薩摩地域を特集。名産品や調味料、お菓子などが並ぶほか、観光情報などもゲットできる。最短1ヶ月ごとに地域が変わり、4月以降は新たな地域を特集する予定だ。なお、今後は店内のオープンキッチンを活用したイベントの開催も計画されている。

四季折々の食材がもつおいしさを最大限に引き出す『ASTERISCO』。素材の持ち味を堪能できる

もうひとつはレストランの『ASTERISCO(アステリスコ)』。小山薫堂さん監修、『La Brianza(ラ・ブリアンツァ)』のオーナーシェフの奥野義幸さんがプロデュースする「お米と楽しむイタリアン」だ。旬の食材を活かした料理や鳥取県産コシヒカリを使った一品にデザート、羽釜で炊いたご飯がいただける。

東京駅を一望できるランチタイムはもちろん、美しい駅舎のイルミネーションが映えるディナータイムもおすすめ。ランチは、2000円、3300円、4800円のコース、ディナーは、アラカルトの他、5000円、8000円、12000円の3種類のコースを用意。

訪れた日の5000円のコースは、前菜&ヴィーガンブレッド、お米のニョッキとフレッシュチーズ、本日のパスタ、「真鯛のトマト西京味噌焼き」または「国産豚肉のロースト」から選ぶメイン、それにドルチェ&カフェがつく。

「国産豚肉のロースト」のポークは塩麹漬けにされている。ジューシーかつ柔らかで、炭の香りも抜群

特に気に入ったのは、美しいローズ色が目を引く「国産豚肉のロースト」と、素材の旨みが濃くて甘みと酸みもしっかりと感じられる「アステリスコ風生ハムのせナポリタン」。シンプルな調理法で素材のおいしさを引き出していて上品な味付け。バランスが素晴らしく、五感を刺激された感じでとても満足度が高かった。

なお、私は5000円のコースで十分満足だったので利用しなかったが、四季折々の食材を使用した小皿料理をワゴンサービスで提供する「YUMCHA STYLE(ヤムチャ スタイル)」もある。

席は、10名まで入れる個室も完備。気の置けない仲間や大切な方たちと訪れる際は活用したいものだ。

日本の豊かな恵みに出逢える『YANMAR TOKYO』。さまざまな楽しみ方ができること間違いなしだ。ぜひご体験を。

■『YANMAR TOKYO』
[住所]東京都中央区八重洲2-1-1
・『ASTERISCO』
[電話番号]03-3277-6606
[営業時間]11時半〜15時半(14時半LO)、17時半〜22時半(21時半LO)
・『海苔弁 八重八』
[電話番号]03-3277-6888
[営業時間]11時〜20時
・『KOME-SHIN』・『SAKEICE Tokyo Shop』
[営業時間]11時〜20時
・『TOCHI-DOCHI』
[営業時間]10時半〜20時

取材・撮影/市村幸妙