「狭小物件」のような狭い物件を利用する際の注意点は?

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 近年、「風呂なし物件」のほか、広さが3畳程度のいわゆる「狭小物件」が注目されているようです。これらの物件について、SNS上では「作業スペースとして1部屋欲しい」「金がないから」など、さまざまな声が上がっています。

 狭小物件は主に東京都内にあり、一般的な物件よりも家賃が安いといわれていますが、利用するときは、どのような点に注意すべきなのでしょうか。また、狭小物件の“ブーム”は続くのでしょうか。不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。

「臭い」「湿気」に注意

Q.そもそも、狭小物件の基準について、教えてください。どの程度の広さの物件を指すのでしょうか。

竹内さん「狭小物件の明確な基準はありません。近年、多くの自治体では、一定規模以上の共同住宅を対象に、条例(通称:ワンルーム条例)で最低住戸面積を定めています。東京23区では主に25平方メートル以上、首都圏の他の自治体では主に18平方メートル以上です。

仮に最低住戸面積が18平方メートルだとしても、約11畳です。そのため、例えばキッチンなどを含めて10畳未満の部屋は、狭い部類の物件に属すると考えられます」

Q.自治体の条例で最低住戸面積が定められているにもかかわらず、なぜ狭小物件の経営が認められているのでしょうか。

竹内さん「狭小物件は、条例が厳しくなる前に建てられた物件が多いからです。また、自治体によって基準が異なりますが、主に10戸未満の小規模物件は、最低住戸面積の規制を受けないため、現在でも建築することができます。

つまり『条例が強化される前の古い物件』もしくは『小規模物件』であれば、最低住戸面積の基準を満たしていなくても合法的に経営が可能です」

Q.主にどのような人が狭小物件を利用しているのでしょうか。また、狭小物件は増えているのでしょうか。

竹内さん「狭小物件は、主に家賃を抑えたい人が利用しています。都内は一般的な広さのワンルーム住宅の賃料が高いため、狭小物件のニーズは高いです。

近年、狭小物件は急激に増えているわけではありません。都内では狭小物件に興味を持つ人が多いため、その分、情報を発信する人も増え、あたかも物件が増えているような印象を持つのかもしれません」

Q.では、狭小物件を利用するメリット、デメリットについて教えてください。

竹内さん「メリットは、先述のように家賃が安いことです。ただし、家賃の総額は安いですが、1坪(約3.3平方メートル)当たりの単価は、むしろ一般的な広さの住宅よりも高い場合があります。坪単価だけを見れば、一般的な物件を借りた方が得な場合もあります。

デメリットは、狭くて住みにくいことが挙げられます。風呂や収納スペースがないだけでなく、家具が置けないなどの制約も多いです。形状の悪い物件も多く、実際の面積よりもさらに狭く感じる物件もあります」

Q.狭小物件について、これまでにどのようなトラブルが発生しているのでしょうか。

竹内さん「狭小物件は狭いため、『臭い』『湿気が多い』などのトラブルがあります。トイレやバス、食事のにおいが部屋中に充満しやすいほか、シャワーを使用したり、洗濯物の室内干しをしたりすると、湿気がこもります。また、都市部の物件が多いため屋外からの騒音も多く、上下左右の住戸からの音が気になる物件もあります」

Q.今後、狭小物件のブームは落ち着いていくのでしょうか。それとも、ブームがより加速するのでしょうか。

竹内さん「先述のように都市部の多くの自治体では、一定規模以上の共同住宅を対象に最低住戸面積を定めているため、狭小物件が急激に増えることは基本的にはありません。今後、新築される可能性のある狭小物件は、条例の規制に該当せず、合法的に建てられる小規模な共同住宅です。

ただし、小規模な共同住宅は賃貸経営の効率性が低いことから、それほど増えないでしょう。仮に狭小物件が増えるようなことがあれば社会問題化し、さらに規制が厳しくなる可能性も考えられます。従って、一定のニーズはあったとしても、供給ラッシュになるようなブームは起きないと見込まれます」