楽天モバイル下請け会社の「横領倉庫」に高級車150台!? 何があった? 貴重なハコスカ&ランボなど… すでに国外流出か?

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相模原市内の巨大倉庫に150台超の激レア旧車やスーパーカー多数

 楽天モバイルから配送事業などを請け負っていた株式会社TRAILは、自己破産手続きを申し立てました。

 同社の倉庫には、150台超の激レア旧車やスーパーカーなど多数が保管されていたといいますが、どのような状態だったのでしょうか。

突如として現れたTMARだがその運営会社はどのようなものだったのか?(画像は東京オートサロン2022のTRAILブース/画像@supra_kusonemi)

【画像】この光景は凄い… ハコスカ、ケンメリ…ランボなど希少車が保管された様子(12枚)

 日産スカイライン C10(数台)、日産スカイラインGT-R C110(2台)、日産 スカイライン C210、ダットサン・ブルーバード510(2台)、メルセデス・ベンツSL R107、日産 フェアレディZ S30(数台のうち1台がZ432)、日産 グロリア A30などの激レア国産旧車。

 さらに、ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJ、ランボルギーニ・ウラカンGT3、フェラーリ812スーパーファストなど入手困難な競技用車両含め、高額なスーパーカーも合わせた約150台の高級車たち。

 これらのクルマは2023年1月13日に事業を停止し、自己破産手続きを申し立てたTRAILがかつて所有していた車両群です。

 TRAILは、2021年秋頃までドリフト業界のトップレーサーを擁するTMAR(TRAIL MOTOR APEX RACING)という派手なドリフトチームを運営していました。

 2022年9月上旬までTMARの公式サイトがあり、TMARの活動が2022年1月にスタートしたことや、所属するレーサーの戦績やイベント情報などが紹介されていましたが現在は「工事中」となっており、通常の方法では見ることができません。

 TMARはレース活動、車両製作やチューニング、車両の管理、サーキットまでの車両回送などさまざまな活動でモータースポーツを盛り上げていくとして立ち上がった会社です。(同社公式サイトより)

 2022年1月の東京オートサロンにはホール5の一角に、大きなブースを構え、センチュリー(UWG60)、スカイラインジャパン(KGC10改)、ソアラ(GZ10)、ハコスカ(GC10)。

 さらにはNASCARのV8エンジンを搭載した競技用車両のハコスカ、同じく1000馬力を発生する35GT-Rなど初出展にしており、別名オレンジ軍団と言われる6台もの希少なカスタムカーを展示し大きな話題を集めました。

 このような派手さが印象的だったTRAILですが、前述の希少車など150台の高級車が保管されていた倉庫は別名「横領倉庫」と呼ばれています。

 なぜ、このような物騒な名前がついているのでしょうか。当時の事情を知る複数の関係者の話をまとめました。

――相模原市内にある高級車150台は、なぜその場所に保管されていたのでしょうか。

 TRAILの本社は相模原市内にあります。本社からのアクセスも良く、クルマの出入りがしやすい場所ということで集められたと思います。

――150台はどのような方法で集められましたか。

 TRAILの社長は私の印象ですと旧車やスーパーカーが「凄く好き!」というマニアではありません。

 換金しやすい、海外に高額な値段で売れるクルマだから、ということで集めたのでしょう。

 貴重な旧車をとんでもないカタチのドリフトマシンに改造した例もありますね。

 1台3000万円から1億円という高級車も少なくありません。市場価格でいえば国産旧車ではZ432が5000万円ほど、スーパーカーでもっとも高いのはアヴェンタドールSVJで8000万円位ですね。

TRAILは1月13日に自己破産を申請。負債総額は約54億円

――1月13日にTRAILが自己破産申請をしました。(負債総額は54億9964万円※2022年3月期決算時点)。いま、このクルマたちはどうなっているのでしょうか。

 殆どは海外に輸出されてしまっていると思います。

 ノーマルで出すのではなく、何かしらのカスタムを施して(カスタム代金が1000万円から5000万円)付加価値を持たせて中東経由で世界の富裕層に販売されていると思われます。

 しかし、なかにはつい最近、1月19日木曜日の業者オークションで関係者の所有と思われる緑色のスカイラインが出品されました。が、こちらは「流札」となっています。

 また2021年12月の大阪レトロカーに展示された旧車もあります。

 最初聞いていたときはほとんどが海外だと思われたのですが、実際には同社が買い集めた国産旧車(比較的安価なもの)は国内市場で流通しているようですね。

――車両のなかには緑ナンバーがついたものもありますね。

 中小企業が法人名義で通常のナンバーで高額なクルマを社長用に持つと、せいぜい数台しか認められません。

 2ドア車所有も経費で落とすのは厳しい。だからフェラーリ、ランボは法人名義でない場合が多いと思われます。

 ですが、緑ナンバー(営業用自動車)として登録されると減価償却は年式が古ければ1年で可能です。

 1年後帳簿上は簿価1円。横領はしているのに税のことは考えていたのでしょうか、謎ですね。緑ナンバーなら無制限で経費になりますから。

TRAILの倉庫にはかつて150台超の希少車があった?(公式サイトより)

――なぜ「横領倉庫」などと呼ばれるのでしょうか。

 すでにいくつかのメディアで報道されている通り、TRAILは楽天モバイルの基地局開設に関わる業務(資材置き場の確保、資材輸送など含む)を請け負った際、日本ロジステックと元楽天モバイル社員(2022年8月逮捕)とで共謀して、楽天に多額の水増し請求をおこないました。

 100億円以上ではという情報もあります。

 水増し請求(横領)したお金で購入した高級車が多数保管されていることから、巷では横領倉庫と呼ばれています。

 ちなみにTRAILの売上高は2019年3月期に約9億円でしたが、わずか3年後の2022年3月期には192億6159万円にまで急拡大しています。

 いっぽう、日本ロジステックは不正発覚から間もない2022年8月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。負債額は約151億円と巨額です。

 楽天モバイルに水増し請求した巨額のお金で高級車を買いあさり、派手なドリフトチームを作ってレース活動をおこない、オートサロンや各種のドリフトイベントを大々的に開催するようになりました。

 また、クルマ関係以外にも卓球選手やK-1選手などに対してもスポンサーとして支援していました。

――被害を受けている自動車業界の関係者も多数いるのでしょうか。

 TRAIL、TMARから車両カスタムの作業を受注してクルマは完成したけど入金がない…そんな業者さんがたくさんいると聞いています。

 カスタムは有名ブランドのほか、横領倉庫周辺の整備工場やチューニングショップなどに大量発注していました。

 TMARに在籍していたドリフトレーサーの一部も被害者といえるでしょう。

 2022年9月11日に開催予定だった北海道での「カムイドリフト」というイベントでは直前になってTMARがイベントから撤退。ポスターも「TMAR×LBWK」から「LBWK」だけになりました。

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 ドリフト界、カスタム界にも激震が走った巨額水増し請求事件。

 日本の宝ともいえる貴重な国産旧車は今頃どこにあるのでしょうか。