ジュビロ磐田は「クラブとして全然足りない」。選手は敗者の沼に陥り、自信を失っていた
10月29日、吹田。J1ジュビロ磐田はガンバ大阪の本拠地に乗り込み、2−0と敗れている。最終節を残し、クラブ史上3度目となるJ2降格が決まった。取材エリアに出てきた面々は沈痛な表情だった。
「ここまでいろいろあって、みんな頑張ったし......」
ミックスゾーンでは、選手が淡々とした口調で応じていた。しかし錯綜する思いで平静を保てなくなったのか、言葉を詰まらせ、目を赤くし、顔を歪ませ、しばらく無言で立ち尽くした。口元に差し向けられるレコーダーが残酷だった。
「ひとつひとつ整理して次に備える、としか言えない」
今年9月、急遽、磐田の強化責任者として戻ってきたOB藤田俊哉チームダイレクターは、記者たちに囲まれながら絞り出すように言った。
「初めてこういう瞬間に立ち会って、こんなにショックだと思わなかった。数試合しか見ていない自分は何か(総括すると)言う立場ではない。ただ、選手だけでなく、クラブとして全然足りない」
足りないことは明白だった。たった1年でJ2に逆戻り。かつて最強を誇った磐田は、遠い昔話となった。
ガンバ大阪に敗れてJ2降格が決まり、肩を落とすジュビロ磐田の選手たち
G大阪戦は、そんな今シーズンの縮図だった。
率直に言って、磐田は立ち上がりのパワーが不足していた。「90分間でのマネジメント」という戦略はあったにせよ、「勝つことが残留に望みをつなぐ条件」の挑戦者は、リスクを負うべきだった。しかし、ゴールが遠く、負け続けてきたツケか。前に入れるボールが入らず、シュートの場面でも足を振れない。消極的姿勢が目立った。捨て身とまではいかなくても、迫力を見せるべきで、それによって相手のミスも誘発できたはずだ。
「シュートで終わるべきところで、パスの選択をしたり、ターンしたり、大事にしすぎるところがありました。最後、思いきったプレーができるか。一瞬のタイミングのところで、結果に表れてしまったかもしれません」(磐田・渋谷洋樹監督)
実力を出せるだけの練度を、チームとして積み上げられていなかった結果だろう。
露呈した編成面の問題
一方、G大阪はホームの声援を背にペースを握ったが、彼らもそこまで熱を感じさせない。負けることが最悪の結果となる彼らにとって、勝負どころを見つけるのは磐田よりも難しかった。そのリズムで戦い続け、終盤まで同点だったら、足元を掬われていたかもしれない。
しかし、G大阪は宇佐美貴史が違いを見せる。25分に初めて守備ラインを籠絡したスルーパス。41分には自ら3人を置き去りにし、ラインを突破するドリブルで絶好機を作った。
「ハーフタイムに、『二つ三つ、ギアを上げないと勝てない』とは伝えました。それは自分に言い聞かせる意味も含めて。前に前に、守備もゴールに向かって、と」(宇佐美)
ただ、磐田も後半途中までは互角以上の戦いを演じている。ボランチの遠藤保仁、トップ下の山田大記がボールを触るたび、チャンスの予感があった。58分、山田がチャンスを広げ、右からのクロスに遠藤が走り込んで合わせたシーンは可能性を感じさせた。
「攻撃面で、自分たちが狙ったスペースとかは使えたと思います。ただ、相手のほうがチャンスの数でも上回っていました。やはり、そこは力不足なのかなと」(山田)
この決定機を外したことが、潮目になった。
後半、G大阪が食野亮太郎、パトリックを投入した一方、磐田は65分に山田をベンチへ下げる。磐田の攻め手は限られるようになり、中盤も疲労から動きが重くなった。結果的にボランチの背後にスペース与えて、66分に食野が危険地帯でボールを受けるのを許し、左足でファーポストに流し込まれた。
「反骨心が自分の真骨頂で。(G大阪復帰後、先発しても結果が出ない)悔しさをいいところに持って行けました。(バックラインとボランチの間の)あそこでボールを受けてほしいとは言われていたし、そこに入るのが自分のサッカーで、交代で入ってボールが来て、とにかく(足を)振るだけでした」(食野)
73分にも、磐田は"被弾"した。同じく交代出場のパトリックにオーバーヘッドでゴールネットを揺らされている。2−0とリードされた直後、総動員の3枚替えも、反撃する余地は残っていなかった。
今シーズンを振り返ると、編成面から厳しかったと言える。
期待された杉本健勇は完全に不発。ストライカー不在は深刻で、FWファビアン・ゴンサレスは契約の問題を抱え(タイのクラブと契約違反)、FIFAの裁定で磐田にも賠償金の支払いと新規選手登録の禁止処分が下されている(磐田は不服申立て)。また、守りも中心となる人材を欠き、人海戦術に頼るしかなかった。遠藤のプレーメイクは強みだったが、90分間、フルシーズンは無理だ。
何より監督のシーズン途中での交代で、継続性も展望もなかった。過去10年、OB監督を甘やかせすぎたり、凡庸な外国人監督を引きずったり、じわじわとパワーダウンしてきた。それは強化の問題だ。
選手が「敗者の沼」に落ちるように自信を失い、不信感に苛まれるのも必然だった。
「今日だけの結果ではなく、今シーズンを通じての結果なので、非常に残念です」
大勢の記者の前で、遠藤は言った。11月5日、最終節は本拠地に京都サンガを迎える。いつだって、終わりは始まりの合図だ。