山田哲人の積極性を生んだ「1番起用」。館山昌平が指摘するヤクルト打線とオリックス打線の決定的な違いとは?
日本シリーズ第3戦が京セラドームで行なわれ、ヤクルトが7対1で快勝。通算2勝1分けとした。オリックス・宮城大弥、ヤクルト・高橋奎二の両先発で始まった一戦は、ヤクルトが5回、下位打線でチャンスをつくると1番・山田哲人の3ランで先制。7回に4番・村上宗隆の押し出し四球で1点を追加すると、9回には村上の2点タイムリー二塁打などで試合を決めた。勝敗を分けたポイントはどこにあったのか。ヤクルト時代の2015年に日本シリーズに出場した館山昌平氏に聞いた。
日本シリーズ第3戦で先制の3ランを放ったヤクルト・山田哲人
両チームとも打線を組み替えて臨んだ3戦目。スワローズの高津臣吾監督は山田選手を1番、ドミンゴ・サンタナ選手をDHで起用しました。
この采配で感じたのは、監督が動いて選手に責任を負わせないという意図です。たとえば同じ打順に置いて復調を待つのではなく、どうすれば選手が輝けるか、監督がその場所を探した。そして、選手が結果で応えたのがスワローズだったという印象です。
2戦目まで無安打と結果が出ていなかった山田選手ですが、個人的にはそれほど状態が悪いとは思っていませんでした。周りから求められる基準が高く、いろんなプレッシャーがかかるなか、フォアボールをとっていた。結果が出ていないなかでも、自分のやるべきことをしっかりやっていました。
山田選手にとって大きかったのは3番から1番に変わり、これまでとは違う景色のなか、1打席目で初球から振っていけたことです。それによって、バファローズバッテリーは2打席目を慎重に入らざるを得なくなった。
その2打席目はセカンドへの内野安打になりましたが、当たり自体は詰まっていた。そのこともあって、5回の二死1、2塁で迎えた3打席目でオリックスバッテリーは「これはいける」と思って、内角にストレートを突っ込んだと思うのですが、どんなに速いボールでも、どんなに制球力があるピッチャーであっても、しっかり打ち返す技術を山田選手は持っています。結果、ホームランという最高の答えを出しました。
この日の山田選手は「空振り三振してもいい」というくらいの感じで、初球からどんどん振っていきました。それで2打席目は詰まってでもヒット、続く3打席目はファーストストライクをとられた直後のボールを本塁打にしました。1打席目からの流れがすべてホームランを打つ3打席目までつながってきたわけです。
山田選手だけでなく、スワローズの各打者は凡打であろうと安打であろうとしっかり反省し、対策を練って次に向かうというルーティンができているように感じます。そうしたアプローチがチームとしてできているからこそ、ここまで全体的に優位に進められているのかなと思いますね。
オリックスに必要なのは積極性逆にオリックスで気になったのは、同じ1番の福田周平選手です。5打席のうち、見逃し三振が2つありました。はたして、本当に手が出ないボールだったのか。見逃し三振というのは、際どい判定もありますが、基本的にはストライクゾーン付近にボールがきています。やはり、バットを振らないと何も起こりません。
バファローズにとって今、一番大事なことは勢いを持って攻撃的に仕掛けることです。1番に起用された福田選手は引き出しが多い選手だけに、2つの見逃し三振はもったいなかったと思いましたね。
ここまでスワローズが優位に立てているのは、ディフェンス面によるところも大きいです。3戦目は先頭打者を4度出しましたが、いずれも次の打者をアウトにしていました。バファローズとすれば、次のアウトをすぐにとられたことで作戦が仕掛けられなくなった。
そしてバファローズが放った8安打のうち長打は4回に宗佑磨選手が放った二塁打の1本だけ。長打を打たせなかった要因は、中村悠平捕手の徹底したリードです。
とくに印象的だったのは、先制した直後の5回裏、一死1塁から福田選手を迎えた打席。1ボール2ストライクと追い込むと、先発の高橋投手にここまで1球も投げていなかったカットボールを要求し、見逃し三振に仕留めました。この3試合を見ていると、中村捕手主導で試合が動いているなと感じます。
これで2勝1分けとしたスワローズは第4戦、ベテランの石川雅規投手を先発に立ててきます。バッテリーを組むのは中村捕手か、若手の内山壮真捕手になるかわかりませんが、この3戦を踏まえたうえで石川投手がどういった投球をするのかがポイントです。
逆にバファローズは、どれだけ対策を練って石川投手を攻めていけるか。そして、試合中に見えてきたことをみんなで共有しながら修正していけるか。
ここまでひとつも勝てていないバファローズは、まずはどんな形であれ先制点をとることです。その積み重ねでしか、前に進めないと思います。
3戦目は1番打者の明暗が分かれましたが、攻撃で大事なのは基本に忠実になることです。つまり、ストライクゾーンの球は強く打つということですね。バファローズはここまでの3試合を踏まえて第4戦にどう備えるか、注目したいところです。