「思い出はたくさんある」 今季限りで引退の中村俊輔を元主審・家本氏が回想、印象に残った2試合とは?
【専門家の目|家本政明】2011年、16年の中村とのエピソードを披露
J2横浜FCの元日本代表MF中村俊輔が10月18日、今季限りでの現役引退を発表した。
Jリーグで長年、ピッチ上でその存在を見てきた元審判員の家本政明氏が、“天才レフティー”との思い出深いエピソードを語った。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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引退の報道を聞き、「本当に寂しい」と率直な思いを口にした家本氏は、「中村選手との思い出はたくさんある」と前置きしつつ、「特に印象に残っている」過去のやり取りのシーンを振り返った。
まず挙げたのは2011年8月6日、J1リーグ第20節の横浜F・マリノス対柏レイソルの一戦(0-2)だ。この2日前、横浜FMで長年活躍した“ミスターマリノス”こと元日本代表DF松田直樹氏(当時JFL・松本山雅FC)が急逝。さまざまな感情が渦巻くなかで、選手たちは試合に向かうことになる。
家本氏は当時を振り返り、「あの時は、首位の柏レイソルと、3位の横浜F・マリノスの上位対決でした。マリノスの選手たちが複雑な思いを抱えながら試合に臨んでいるのは見て感じていました」と通常とは異なる空気感を実感したという。そしてこの試合で先発した中村に対しても「普段とは全く違う表情、プレーをしていた」と回想している。
「試合中、彼がらしくないプレーで反則をして、僕は100%警告と判断してイエローカードを提示しました。さらにその後、彼は再び警告が出てもおかしくない反則をしてしまいました。2回目は判定に選択の余地があるプレーだったので、僕はいろいろと考えたうえでカード出さず、彼と話をしました。その際、目線が合わずやはり普段の反応と異なっていたのを覚えています。いつもの中村選手ではなかった」
家本氏はその様子から、「彼のような選手でも100%集中できない状態がある」と痛感したという。さらに「試合後には審判アセッサー(試合のジャッジを評価する人物)から私情を持ち込むなとものすごく怒られました」と明かし、「僕はどちらとも言える反則だったので簡単に彼を退場させるのではなく、彼ともう一度しっかり話をしたうえで、マリノス側ともコミュニケーションを取りゲームをマネジメントするほうが望ましいと考え、そういった行動を取りました。今でもあの対応は間違っていなかったと思っています」と判定に至るまでの思いを語った。
この試合を通して家本氏は、中村が「仲間を思う本当に“熱い”気持ちを持った選手」だと改めて実感したことを明かしている。
ピッチで交わされた何気ない会話が1つの思い出に
もう1つのエピソードは、2016年のJ1リーグ・セカンドステージ(当時は2ステージ制)第3節横浜FM対ヴィッセル神戸(3-2)の一戦。後半40分のペナルティーキック(PK)のシーンだという。この時、キッカーを務めたのが中村だった。
家本氏は「中村選手が蹴る前に味方選手が明らかにエリアに侵入して、その後放ったシュートがゴールインしました」と当時の状況を説明。「競技規則上、ゴールは認められずやり直しなので『中村さんごめんなさい。仲間の方が入られたので、もう一回、やり直しです』」と笑顔で声をかけたという。
家本氏の言葉に対し中村も「絶対やり直しすると思った。そういうところあまり厳しくしないでよ」と応答。やり直しとなったPKは、再びキッカーを務めた中村がきっちりと沈めた。「そんな軽快なやり取りをした記憶と、何があっても常に冷静でチームやサポーターのために最高のパフォーマンスをする素晴らしい選手ということを実感したことで、すごく印象に残っています」とピッチ上のやりとりを明かした。
ここまで中村との思い出を振り返った家本氏は、「試合で会うと親しみ込めていつも“いえもっちゃん”と呼んでくれたり、ある時には『今日はどんなレフェリングプランなの? 要注意選手とかちゃんと把握してるの?』みたいな質問を投げかけてくれたりしました。いつも冷静で知性にあふれていて、心の底から尊敬している選手です」と特別な思いを口にしていた。(FOOTBALL ZONE編集部)
