【凱旋門賞】勝つために日本勢に必要なものは何か…
10月2日(日)に、パリロンシャン競馬場で行われた第101回凱旋門賞(G1・芝2400m)に、過去最多となる4頭の日本馬が出走するも、最先着はタイトルホルダーの11着と、今年も非常に厳しい現実が待ち受けていた。毎年必ずと言っていいくらい敗因に上がってくる馬場適性の差。レース直前の大雨もあり、今年も結果的にその馬場適性に泣いた格好となった可能性は高い。
昨年は日本の重馬場で圧倒的な結果を残していたクロノジェネシスが7着に敗退。今年は長距離の菊花賞、天皇賞・春を勝ち、重馬場適性が高いと思われたタイトルホルダーに、もしやの期待が寄せられたが(日本のオッズでは1番人気)それでもこの舞台では歯が立たなかった。
手綱を取った横山和生騎手は『直線向いてもしかしたら…』と手応えに期待を抱いたとは言いつつも『日本ではこんな馬場になることはないですし、外国馬は走り慣れていると思いました』と、経験値の違いを感じ取っていたようだ。
レース前には不幸にもスコールかとも思わせる激しい雨に見舞われ、厳しい結果を早くも予感させるものはあった。ディープボンド(18着)に騎乗した川田将雅騎手は『進んでいくのも難しいくらいの馬場状態』と表現し、ドウデュース(19着)に騎乗した武豊騎手は『勝ち馬はこの中で勝っているわけだから、(馬場は)言い訳にはならない』と強調した。しかし、ドウデュースはフォルスストレートから早々と下がっていき、更に武騎手は、馬の状態の良さは感じ取りつつも『自分から走る感じじゃなかった』とレースを振り返っている。
ドバイや香港ではきっちり結果を残している日本勢なだけに、競走馬としての能力が世界レベルであることは言うまでもない。晴れていようが、雨が降ろうが、ロンシャンの特殊な馬場に適性があるかどうかは、各陣営100も承知でのこと。『馬場を理由には出来ない』と関係者は口を揃えて語るものの、それを克服するために避けて通れない難題であることもまた事実。パリロンシャン競馬場の芝生を管理するシャルル・ド・コルドン氏によると『ロンシャンは重めのまとわりつくような芝が特徴。フランスの中でも芝の育成が1番難しいコース。コース全体の中でも雨の降り方が違う』と難解な特徴を語る。
そして、今回の凱旋門賞で、日本馬4陣営の中でも、印象的なトライだと感じたのはステイフーリッシュの矢作芳人厩舎。意外にも厩舎として凱旋門賞は初出走とのことだが、ステップレースから他陣営とは全く違うレースをチョイス。当該週の囲み取材では、約2ヶ月ほどの長期滞在や、ドーヴィル大賞を使ったローテについて『日本の時よりは走りが変わってきたのかなという印象があります。(前哨戦については)60キロの斤量を背負えたのは良かった。ニエル賞、フォワ賞よりは間隔を取れたので、そういう意味ではいい前哨戦だったと思います』と岡助手。背負い慣れてない斤量を経験させ、ある程度の間隔を取った方が良いのではないかという意図を明かした。
本番では試練の大外枠に加え、雨の影響をモロに受けた形で、中々前へ推進して行くような走りは出来ず、中団からそのまま下がってしまい14着に敗れたものの、割とスタンダードなフォワ賞、ニエル賞の中2週、またはぶっつけ本番というローテを採用せず、中1ヶ月の調整で元気いっぱい、何かを期待させるものがあったのは確かだ。
さらに矢作師は凱旋門賞レース後『四輪駆動の馬、力があって、スピードがあって、そういう馬を連れてくるようにこれから努力するだけです』と、この結果を受けて冷静に分析した。また、タイトルホルダーを管理する栗田徹師も『相当別のタイプの馬を連れてくるか、本当に条件の違う馬を連れてくるかしないとちょっとしんどいんじゃないかなと思います』と総括していた。『四輪駆動の馬』という独特の表現で栗田徹師と同様、タイプの違う馬を連れてくる必要性を語っている。
30日のサンクルー競馬場で日本でお馴染み、凱旋門賞4勝しているオリビエ・ペリエ騎手に話しを聞くことが出来た。日本馬が凱旋門賞を勝てない要因は?の問いに『逆のことも言えて、フランス馬も日本でしばらく勝っていない。日本の重馬場とこちらの重馬場は随分違う』と、要因の一つに馬場があると見解を示した。
凱旋門賞はまだ日本馬が勝ったことのないレースであり、今のところ正解は誰にもわからない。競馬である以上、当然要因は馬場だけではなく、血統、斤量、馬場、ローテ、枠順、展開と要素をあげればキリがないが、色んな形でどんどんトライしていけば、勝利に近づく日もきっと遠くはないはずである。また来年、日本勢の活躍に期待したいと思う。