美容整形や薬の服用、過去に起こした問題などは、婚活相手に打ち明けたほうがいいのでしょうか(写真:maruco/PIXTA)

人にはいろいろな歴史がある。華々しく人に誇れる白歴史もあれば、人には知られたくない黒歴史もあるだろう。結婚相手には全信頼を寄せているからこそ、将来の伴侶に選んでいるはず。しかし、過去の自分をすべて正直に打ち明けることが、正解なのだろうか。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、「過去のすべてを打ち明けるのが正解か否か」について、いくつかの事例とともに考えていきたい。

たかおみ(48歳、仮名)は、ゆみ(47歳、仮名)と真剣交際に入って、3カ月が経った。いよいよプロポーズが見えてきたのだが、「その前に、ちょっとご相談があります」と、連絡をよこした。


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面談ルームにやってきた、たかおみは言った。「今回は失敗したくないんです。薬を飲み続けていることを、言わないといけないでしょうか?」。

たかおみは、40歳を過ぎた頃に会社の部署異動があり、そこでの人間関係がうまくいかなくて、体調を崩したことがあった。病院で“うつ病“と診断され、休職を余儀なくされた。通院を始めてからは体調も回復し、2カ月後には会社にも復職できたのだが、今でも定期的に通院し、薬を処方してもらっている。

「薬を飲んでいる」と告げると交際終了

たかおみは上場企業に勤めていて、年収が1000万円近くあった。お見合い市場にいがちな40代後半や50代、60代になっても ”子どもが欲しい“と願う男性たちとは異なり、子どもは望んではいなかった。同世代や年上女性とも会っていたので、お見合いはスムーズに組めていた。

活動して1年になるが、これまでも数人の女性と真剣交際に進んでいる。しかし、「うつ病になり、休職経験があって今も薬を服用している」ということを告げると、女性側から決まって交際終了がきていた。そこで、今回は同じ轍を踏みたくないのだろう。

私は、たかおみに言った。「会員さんたちの中には、うつ病を患って休職した人、今でも通院している人は、何人かいらっしゃいます。病歴を打ち明けるかどうかは、人それぞれです。過去には、そのまま言わずに結婚した方もいますし、打ち明けてもそれをパートナーが受け入れてくださり、結婚していった方もいます。話すかどうかはご自身の判断です」。

これは私の意見なのだが、これまでうつ病とは無縁だった人が、結婚後にストレスを抱え発病することもあるかもしれない。隠しごとなく、すべてを打ち明けて結婚することが理想ではあるが、言ってご縁がダメになり後悔するなら、言わなくてもいいのではないかと思う。

ことに、たかおみの場合は子どもを望む結婚ではない。子どもを授かるとなると、服用している薬や遺伝などの影響が気になるところだが、これからの人生を共に歩いていくパートナーを探す結婚ならば、健康管理も自己責任ではないか。

一方で、打ち明けてダメになるご縁は、そもそもご縁がなかったと考える人もいるだろう。相手のすべてを受け入れてこそ、運命共同体の結婚なのだ、と。

こんな話をすると、たかおみが言った。「そうですね。もう少し自分でも考えてみます」。

本当に、これは人それぞれなのだが、皆さんはどう思うだろうか。

「二重に整形したこと」を相手に伝えるか

さとえ(36歳、仮名)は、としお(38歳、仮名)と真剣交際に入り、2カ月が過ぎた頃、としおの相談室から連絡が入った。

「こちらとしては、そろそろプロポーズをと考えています。さとえ様の結婚へのお気持ちは固まっていますか? プロポーズしたら受けてくださるでしょうか?」

結婚相談所の場合、プロポーズの時期になると仲人間で、お互いの意思確認をしあうことが通例だ。なので、プロポーズをして断られることは、まずない。としおの相談室からそのような連絡がきたことをさとえに告げると、とても嬉しそうだった。

ところが翌日、「ちょっと相談したいことがあります」と連絡を入れてきた。「実は私、長期休暇のときにまぶたを二重に整形したんです。それをとしおさんに伝えたほうがよいでしょうか」。

としおとお見合いをしたのは美容整形を受けた後なので、彼はさとえがもともと二重の女性だと思っている。彼女が会員になったのは1年前なので、私は一重の彼女に出会っている。年明けから何度か面談をしているが、まぶたを整形したことにまったく気づかなかった。それくらいナチュラルだったし、人は相手が一重だろうが二重だろうが、そこまで細かく気に留めていない。

そう伝えると、さとえは言った。

「えっ、気づかなかったですか? 私は毎朝鏡を見るたびに、“二重にして、可愛くなったな”“整形して良かったな”と思っていたんですよ。でも、会社の人とかは、気づいていないんですよね。気づいていても、言わないだけかもしれないけれど」

周りの反応がこうなのに、なぜ伝えなければいけないと思ったのか?

「もし生まれてきた子どもが一重だったら、整形を疑われるかなと思ったんです」

「としおさんは、二重なの?」

「あれ? どうだったかなぁ」

人の関心なんて、こんなものだ。それに遺伝には、隔世遺伝もある。親の顔を子どもがそのまま引き継ぐわけではない。それに、一重の子どもが生まれても、親はわが子が可愛いものだし、そこで妻の整形を疑ったりしないだろう。

「胸に詰め物が入っているから」と医師

私の知人にこんな男性がいた。結婚し、長男にも恵まれ、幸せに暮らしていた。長男が幼稚園に入る頃、妻が「乳がんになったかもしれない」と言い出した。胸にしこりがあるという。心配した彼は、妻を近くの病院に連れて行った。

当日、診断を終えた医師からこう言われた。

「胸に詰め物が入っているから、それが邪魔をしてX線撮影では判断ができません。いずれにせよ、しこりの部分を病理検査に出すので、良性か悪性かがそれでわかると思います」

病院からの帰り道、妻に「そうやって医者に言われたけれど、胸を整形したのか?」と、やや語気を強めて聞いたという。

すると、妻が逆ギレした。「アナタを喜ばせるためでしょ。フン!」。

結局、ガンではなかったようで、10年近く経った今でも彼女は元気に暮らしている。彼は飲み会の席で笑いながらこの話をして、付け加えた。

「俺を喜ばせるためって、出会う前なんだよな。そういえば子どもを出産した後に、母乳はあげずにすぐにミルクに切り替えていた。産後に胸の形が崩れるのが嫌なのかなと思っていたんだけれど、実は詰め物が入っていたから母乳が出なかったのかな」

美容整形の過去を伝えるべきか否か。それも人それぞれだろう。ただ結婚後にパートナーの整形がわかっても、それで離婚するカップルはまずいない気がする。DV、モラハラ、ギャンブル狂、借金、浮気が原因で離婚するカップルは、いるかもしれないが……。

よしえ(46歳、仮名)が入会面談にやってきた。バツイチの再婚希望者だった。

最初の結婚相手は、40歳のときに派遣先で知り合った2つ年上の同僚男性。しかし、彼はキレやすい人で、つまらないことでキレては、よしえを罵倒し、暴言を吐いていたという。仕事意欲にもムラがあり、休みたいときに仕事を休むので、会社での評価も低かった。結婚生活は1年持たなかったという。

離婚後しばらくは、“結婚は、もう懲り懲り”だと思っていた。しかし、コロナになって、これからの人生をともに歩んでいけるパートナーの大切さを感じて、再婚相手を探そうと婚活を決意した。

夫の犯罪歴をネット記事で知った妻

よしえは、最初の結婚について、こんなことを言った。

「同僚として働いていたときから、短気な性格なのは見えていたんです。でも、優しいところもあった。私が1人でお弁当を食べていると、『飲む?』と給湯室のコーヒーを持ってきてくれたり。結婚してからも、私の人格否定をするような暴言を吐くけれど、冗談を言って2人で笑ったり、楽しい時間もあったんです。せっかく結婚したのだから、楽しい時間を増やすようにして、なんとかうまくやっていこうと思っていたのですが……」

そんなとき、ある過去の事実が明るみに出た。

「弟が、元夫が“小売店強盗をして捕まった”という、過去のネット記事を探してきたんです。現行犯で店員に取り押さえられて、金品を奪うこともなく警察に捕まったので、執行猶予付きの判決だったようです。それを知ったときには、さすがにドン引きしました。

彼に『私に何か隠している過去があるでしょう?』と言ったら、そこでもまたブチギレして、暴れて、部屋の中がメチャクチャになりました。その怒り方が尋常じゃなかった。それまでは、なんとかうまくやれないかと私も頑張っていたのですが、狂ったように暴れている彼を見て、離婚の気持ちが固まりました」

人は、程度の差はあっても、過ちを犯すことがある。過去を反省し、現在真面目に働き、パートナーを大事にしている人もいる。

過去の犯罪歴を結婚するパートナーにいうかどうかは、やはり人それぞれだ。タレントの中には、過去に犯罪に手を染め、逮捕され、罪を償ったあとにテレビ番組や自身のYouTubeチャンネルなどで、その更生した過程を赤裸々に語っている人たちもいる。結婚している人も多いので、彼ら(彼女ら)のパートナーは過去もすべてを受け入れて、人生をともに歩んでいこうとしているのだろう。

過去をすべて語るべきか否か。そこには正解はない。パートナーのどんな過去を聞いても、それを認め、許容できることが愛情なのかもしれない。ただそこまで認め合うには、長い年月を一緒に重ねる時間が必要なのではないか。

出会って、数カ月で結婚を決めてしまう婚活では、パートナーの過去をすんなり受け入れることは、難しいのかもしれない。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)