iPhoneでは基本的にApple純正OSのiOSしか動作しません。しかし、これまでにWindows XPを動作させたり、Linuxを動作させたりと、愛好家たちによって多様なOSの起動が試みられています。新たに、iPhoneのSoCに隠された仮想化支援機能を利用して「iOS上で動作する仮想マシン」の中でLinuxディストリビューション「Fedora」をサクサク動作させるムービーが公開されました。ムービーの中では文書作成アプリ「LibreOffice」が動作する様子も確認できます。

Hardware-accelerated virtual machines on jailbroken iPhone 12 / iOS 14.1 | Worth Doing Badly

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iPhoneでFedoraを動作させることに成功したのは、ソフトウェア開発者のZhuowei Zhang氏です。以下のムービーでは、実際にiPhoneでFedoraが動作する様子を確認できます。

Fedora 36 VM in UTM.app with hardware acceleration - YouTube

Zhang氏が持つデバイスは、iOS14.1をインストールしたiPhone 12です。iPhone 12はジェイルブレイク(脱獄)済みで、画面にはオープンソースで開発されている仮想マシン「UTM」の画面が表示されています。



UTMの画面でFedoraを選択すると……



仮想マシンが起動しました。



仮想マシンが起動してから15秒ほどで、Fedoraのログイン画面が表示されました。



タッチキーボードでパスワードを入力すると……



デスクトップが表示されます。



さらに、ターミナルを起動して、システム情報を表示するコマンド「neofetch」を実行すると……



動作中のディストリビューションがFedoraであることを示す画面が表示されました。



次にメニュー画面を表示して、LibreOfficeを選択します。



数秒待つと……



LibreOfficeが起動して文書作成が可能になりました。



Zhang氏によると、iPhone 12に搭載されているSoC「A14 Bionic」はM1チップと同様に仮想化支援機能が搭載されているとのこと。仮想化支援機能はiOSによってロックされていますが、Zhang氏はmacOSの仮想化支援機能呼び出しシステムを模倣して仮想化支援機能を利用可能にし、仮想マシン上のFedoraをサクサク動作させることに成功。

iPhone 12でベンチマークアプリ「Geekbench 5」を実行したところ、iOSでのシングルコアスコアが1573で、仮想マシン上でのスコアは1504〜1511という結果が得られました。

仮想マシン上でのベンチマークスコアがiOSでのスコアに近いことやムービー内でのサクサク動作から仮想化支援機能は非常にうまく動作しているように見えますが、Zhang氏によると仮想マシンの使用メモリが900MBを超えるとiOSがクラッシュしてしまうとのこと。このため、使用可能メモリの少なさからWindowsやAndroidの起動には失敗してしまったとZhang氏は述べています。

また、Zhang氏は「『iPadで仮想化支援機能を使えるなら月額10ドル払う』というユーザーは私だけじゃないはずです」と述べ、Appleにモバイルデバイスでの仮想化支援機能有効化を求めています。