気仙沼の“サンダーバード作戦” 小野寺議員が語る漁船復活の現場 - BLOGOS編集部
※この記事は2011年07月28日にBLOGOSで公開されたものです
震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市。漁業基地として栄えていた唐桑（からくわ）地区に5月5日に訪れたが、一面に広がる焼け野原に絶句してしまった。まるで空襲の後のようだ。焼け焦げたビルや家の残骸やスクラップになった車、陸に乗り上げた漁船で辺りは埋め尽くされていた。焼け焦げた油の匂いが充満している。かつてマグロの遠洋漁業の拠点として栄え、水産加工の工場が立ち並んでいた港町は今や跡形もない。訪れる人も少なく、さながらゴーストタウンのようになっていた。【取材・文：安藤健二（BLOGOS編集部）】
街を這いずり回った船たち
津波に街が流された後、長さ80メートル級の大型漁船が何隻も街を這いずり回り、鉄筋コンクリートのビルまで破壊。さらに燃料の重油に引火し、広い範囲で燃え上がったのだ。今回、東北各地の被災地を見て回った中でも、最も壮絶な惨状。コンビニもカマボコ工場もガソリンスタンドも、全てが痕跡だけを残して破壊されていた。
なぜここまで被害が広がったのか。そして、今後の対策は……。7月20日の自由報道協会が主催した会見で、自民党の小野寺五典（いつのり）・衆院議員に質問してみた。小野寺氏は気仙沼市で生まれ育ち、気仙沼市や南三陸町などを含む宮城第6区を地盤としている。被災地の議員として、どのように考えているのだろうか。
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陸地に積み重なるように乗り上げた漁船（5月5日、気仙沼市唐桑地区にて）
石油タンクから引火
―先日、気仙沼の唐桑地区に伺ったのですが、漁船が街の中に突っ込んでいて、かなり悲惨な状態にあるように感じました。ここまで被害が拡大した理由と、今後こうしたことを防止するために必要な対策を教えてください
小野寺氏：今回、火災が最も広がったのは震災の当日、3月11日の夜だったんです。「燃える気仙沼」という映像が世界に配信されました。あれは湾の入り口のところに、大きな石油タンクがいくつもあるんです。なぜかというと、漁港なので漁船が入ってきます。（魚を）水揚げをした後、ガソリンスタンドと同じように油を積んで、また出漁する。だから、漁船用の大きなガソリンスタンドのようなタンクが必要だったんです。
今回、それが津波で流されて……。それで実は油というのは軽いので（水に）浮くんですよ。津波と一緒に油が街のずっと奥の方まで入っていって、油だけが染みこんだ。そこで火花が散って燃えてしまったということです。
今後は「あの重油タンクを津波被害からどう守るか」というのが非常に重要だと思っています。
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津波の衝撃で横倒しになっていた石油タンク（5月5日、宮城県気仙沼市の唐桑地区にて撮影）
「サンダーバード」のように船が復活
小野寺氏：それと、漁船を大分見られたと思うんですが、漁船はちょっと壊れていても海に戻して再利用することができます。今回、私どもが一生懸命やったのは、初めは「これは全部処分だ。壊せ」ということだったんですが、船を壊しちゃうと造るのに2年かかるんです。もしカツオが来てサンマが来て、というときに備えて「船がきゃダメだ」という声があった。
それで国の方に掛け合って、多少無理して保険を少し面倒を見てもらって、実はすごく大きなクレーンで何隻も船を海に戻しました。その光景を見ながら、子供の頃にやっていた（特撮テレビ番組に出てくる）サンダーバード2号の活躍を見ているようでした。あんなに台車が出てきたり、クレーン車が出てきたりして、それは見事な物でした！
今も一隻、一隻やってます。大分、（海に）降りましたけど。だから地元はとにかくダメな船はやめる、でも少しでも生きる船は生かすということでやらせてもらっています。ただ、船というのは解体するにしても、相当、いろんな重機が必要なので、まだ解体せずに残っている船も大分あります。
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市街地に乗り上げた大型漁船（5月5日、気仙沼市唐桑地区にて）
サンマ漁船が出航
「サンダーバードのようだった」と、子供のように目を輝かせた小野寺議員の姿が印象的だった。クレーンで持ち上げられる漁船は、力強く復興する気仙沼の象徴だったのだろう。筆者が5月に、気仙沼の焼け野原の惨状を見たときは「復興まであと何年かかるか」と気が遠くなる思いだったが、予想よりも早く漁港は立ち直りつつあるようだ。
この会見の5日後の25日、津波で被災した宮城県気仙沼市のサンマ漁船の修理が終わり、漁を行う北海道沖に向けて気仙沼港を出港している。第二次大戦後の焼け野原から日本が復活を遂げたように、気仙沼が再び栄える日が来ることを心待ちにしたい。
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辺り一面の焼け野原になっていた市街地（5月5日、気仙沼市唐桑地区にて）
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