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簡単確実 電動パーキングブレーキ

このところ、パーキングブレーキの仕掛けも変化している。

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操作を電気仕掛けでおこなう電動パーキングブレーキを採用する車種が増えているのだ。


エレクトロニック・パーキング・ブレーキ    トヨタ

「エレクトロニック・パーキング・ブレーキ」の略で「EPB」とも呼ばれるこのシステムの搭載は、パーキングブレーキの操作スタイルを大きく変えてしまった。

最大のメリットは、誰でも簡単で確実にパーキングブレーキを作動/解除操作ができることだ。

長く一般的だったサイドレバー式パーキングブレーキは、実は、確実な操作ができていない人も少なくなかった。

上に引けばブレーキが掛かるのだが、しっかりと作動させるには多くの人が考えている以上に強い力が必要。

本人はしっかりとパーキングブレーキをかけているつもりでも、実はしっかりレバーを引き切れていなくてきちんと作動しておらず、駐車場所が傾いていたために車両が動いてしまうというアクシデントも発生していた。

長い間、そのリスクと隣り合わせだったのだ。

逆に、力のある男性などがガチガチに締めると、女性は戻せないという短所もあった。

その後、軽自動車やミニバンなどで一気に普及したのが足踏み式パーキングブレーキ。

こちらは足の力を使うので力を入れやすく、サイドレバー式よりも確実にかけられるのが強みだ。

一方で、戻す際にはサイドレバー式同様に、ガチガチの状態からだと力の弱い人には解除しにくいのは解決できていない。

ホールド機能でさらに便利に

一方で、電動式になり、それら「力」にまつわるウィークポイントは払拭された。

スイッチを動かすだけで、力は微塵も不要で確実に作動し、解除も同様にできる。


ホンダS660のサイドレバー式パーキングブレーキ

それぞれのドライバーが持つ腕や足の力に関係なく、誰でもしっかりと作動/解除できることのメリットは大きい。

それだけで電動パーキングブレーキというアイテムの意味があるといえるだろう。

しかも、メリットはそれだけではない。

車種によっては「ホールド機能」などと呼ばれる仕掛けがあり、これはブレーキペダルから足を離しても自動的に停止状態を維持できる。

信号待ちなどで重宝し、発進時はアクセルを踏むと自動解除される。

また、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)装着車では渋滞時にもメリットが大きい。

ACCは前方を走る車両が減速すると自車も速度を下げ、渋滞対応ACCでは前方車両が停車すると自車も停車する。

その際、電動パーキングブレーキ装着車であればドライバーがブレーキペダルを踏まなくても停止状態を自動で保持してくれるのだ。

発進の際は、ある程度の時間(車種により異なる)までなら自動発進、一定時間経過後ならアクセルを踏むなどドライバーの操作をきっかけに再発進。

ドライバーの負担を軽減し、一度使って味をしめると、もう手放せなくなってしまう禁断の機能だ(電子制御シフト装着車のなかには電動パーキングブレーキ非装着でも停止保持できる車種もある)。

電動パーキングブレーキ どこか不安?

さて、本題はここからだ。

実はこのコラムのきっかけは編集担当Uの素朴な疑問から。


トヨタ・アクアの内装。先代はサイドレバー式だったが、新型になりすっきりとした印象となった。

「ATのポジションをPレンジに入れるとサイドブレーキがかかり、またDレンジに入れて発進するときには解除される電動パーキングブレーキが増えました」

「個人的には、どんな状況でも、手で引いたブレーキが安心材料です。だからDに入れてアクセル踏むと解除される仕掛けは、少し怖いと感じる事もあります」

「どう思いますか?」というのだ。

そこで、自動解除について考えてみたいと思う。

たしかに最近、そういうタイプが増えている。

ATセレクトレバーの動きに連動し、クルマを止めてPレンジに入れると自動でパーキングブレーキが作動。

発進時はDレンジに入れてアクセルを踏むと自動解除されるのだ(シートベルト装着時のみ自動解除されるメーカーもある)。

それ自体は便利な機能だし、パーキングブレーキのかけ忘れを防げるなど安全に対するメリットもある。

また、メルセデス・ベンツやレクサスの一部車種など自動操作を前提にパーキングブレーキのスイッチ自体を小さく目立たない場所としているメーカーもあるほどだ。

とはいえ編集担当Uのように、安全面から自動解除に不安を覚えるユーザーもいるのかもしれないし、それはわからなくもない。

たしかに、本人が意図しないところでブレーキが解除されるのを嫌がる人もいることだろう。

「意図せぬ発進」ありえない?

しかし、それは考え方の問題ではないだろうか。

そもそもDレンジに入れてアクセルを踏む状況は「発進する」という明確なドライバーの意図のもとにおこなわれること。


「クルマを動かすときだけDレンジ、動かすつもりがないときはPレンジ」を徹底すれば、自動解除によるアクシデントを心配する必要はなくなると筆者はいう。    シャッターストック

その際に、走行に支障となるパーキングブレーキが自動解除するのに際して「ドライバーに反している」という人はまずいないだろう。

なかには「もし発進するつもりがないのにアクセルを踏んでしまったら、勝手にパーキングブレーキが解除されるなんて危ない」という人もいると思う。

しかし、その理論は正しくない。

なぜなら、発進する意図がないのであれば「Dレンジ」に入れていること自体が間違いだからだ。

クルマを発進させるつもりがないのであれば、Dレンジに入れるべきではない。

Dレンジに入れなければ間違ってアクセルを踏んでも勝手にパーキングブレーキが解除されることはないし、発進もしない。

「クルマを動かすときだけDレンジ、動かすつもりがないときはPレンジ」

それを徹底すれば、自動解除によるアクシデントを心配する必要はなくなる。

その基本を徹底するべく、意識の切り替えが大切なのだ。

たとえば駐車場のチケット発券や料金支払いなどで、Dレンジのままパーキングブレーキに頼ってブレーキペダルから足を離すのは絶対にやってはいけないことである。

停車中はPレンジに入れることを守れば、自動解除を不安がる必要はない。

ただ、不安のある人のためには自動解除をキャンセルする設定もあれば親切といえそうだ。

信号待ち時のホールドモードに関しては、心配するのであれば活用せずにブレーキペダルを踏みっぱなしでいるのがいいだろう。

オートホールド時は自分がブレーキを踏んでいるつもりになり、いつでも対処できるように構えていることが大切だ。

このところ、クルマは急激に機能の電子化が進み、操作方法が変化したものも多い。

しかし、それに対して「慣れない」という理由だけで反発するのではなく、気になるのであれば使い方の基本に戻ってみる必要があるのではないだろうか。

「発進するつもりがないならPレンジ」をいま一度徹底するべき時だ。

「エアコン操作はやっぱりタッチパネルよりも物理スイッチがいい」と常日頃思っている、実は先進の操作方法に馴染めない筆者に言われたくはないだろうが……。