【女子必見】HPVワクチン積極的勧奨が「再開」である理由を「安全性」と一緒に学ぶ

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来年度からHPVワクチンの積極的勧奨が「再開」されることになりました。2013年に差し控えとなってから9年ぶりのことです。ただ、この間HPVワクチンは、打てなかったということではありません。自治体によって「ぜひ、打ってくださいね」「打った方がいいですよ」という「オススメ」が、あまり行われなかったということ。なぜ、「オススメ」されなくなったのか、そしてなぜ来年度から「オススメ」が再開できるようになったのか。ワクチンの安全性と絡めて、産婦人科医の稲葉可奈子先生に教えてもらいました。

監修医師:
稲葉 可奈子(予防医療普及協会)

医師・医学博士・日本産科婦人科学会専門医。予防医療普及協会 顧問。2008年京都大学医学部卒業、京都大学医学部附属病院での初期研修ののち、産婦人科へ進路を決め、東京大学医学部附属病院、三井記念病院を経て、東京大学大学院にて医学博士号を取得。現在、関東中央病院産婦人科に勤務。

編集部

このたびHPVワクチンの積極的勧奨が『再開』となりました。なぜ、今までは打てなかったのでしょうか?

稲葉先生

「再開」というのは、HPVワクチンを「積極的にオススメすることを再開する」という意味です。HPVワクチンは、2013年に定期予防接種(対象:小学校6年生~高校1年生の女子)になってしばらくして、積極的勧奨が差し控えられることになったものの、その後も対象年齢の女性たちは、希望すれば無料で接種することができました。

編集部

では、「接種の枠組み」が大きく変わった訳ではないのですね?

稲葉先生

そうですね。しかしながら、ほとんどの自治体では個別にHPVワクチン接種のお知らせを届けたりすることができなくなったため、ワクチンの存在を知らずに、接種機会を逃してしまっていた人が多かったのです。その状況を産婦人科医として見過ごすことができず、わたしを含めて多くの医師が啓発に尽力してきました。

編集部

「再開」は来年度と言われています。接種はそこまで待った方がよいのでしょうか?

稲葉先生

厚生労働省の事務的な「再開」はこれからですが、すでに安全性は確認されているので、実際の積極的勧奨再開を待たずに接種しても、安全面は全く問題ありません。

編集部

では、なぜ積極的勧奨が差し控えられることになったのですか?

稲葉先生

厚生労働省が積極的勧奨を差し控えたのは、2013年に副反応が疑われる症状の報告があり、その症状とHPVワクチンとの因果関係、HPVワクチンの安全性について検証するためでした。その後、日本国内の研究だけではなく、世界中の研究により、「副反応が疑われた諸症状とHPVワクチンとの間に因果関係は認められない」ということが分かりました。具体的には、接種した人と接種していない人、それぞれの集団において、諸症状の発生頻度に差がないこと、また、1人の人において諸症状がでる時期というのが、接種直後、特別に多いわけではなく、接種前から症状がみられている、ということが大規模な研究により明らかとなり、安全性についてもエビデンスが蓄積されています。

編集部

再開後に使用されるHPVワクチンは、既存のものと同じですか?

稲葉先生

今現在使用されているHPVワクチンの安全性が確認され、積極的勧奨が再開することになったので、再開後に使用されるHPVワクチンはこれまでと全く同じものです。再開にあたって新しいワクチンが開発された、というようなことではありません。ですので、これまでに接種した人のHPVワクチンと、再開後に接種する人のHPVワクチンは、有効性も安全性も全く同じものです。

編集部

自治体から案内がきていません、まだ打てないのでしょうか?

稲葉先生

2021年7月時点で、約1/4の自治体では定期予防接種の対象者に案内を送付していませんでした。ですので、定期予防接種の対象であっても、HPVワクチンの案内が手元に届いていない人は少なくないと思います。しかし、自治体からのお便りが届いていなくても、小学校6年生~高校1年生の女子は無料で接種できますので、お住まいの市区町村へお問い合わせ下さい。

編集部

高校2年生以上の人はどうなりますか?

稲葉先生

それらの人に対しても今後は助成がなされるという方針はでていますが、その運用についてはまだ2021年11月時点で明らかになっていません。HPVワクチンは早めの接種が望ましいことに変りはありませんが、自費で接種した分があとから払い戻されるかなどは分かりませんので、高校2年生以上で接種を検討している人は、どのような形で助成される予定か、お住まいの市区町村への確認をおすすめします。

編集部

インフルエンザの予防接種などと一緒に打てますか?

稲葉先生

インフルエンザの予防接種と一緒に接種するのはOKです。また、ほかのワクチンと同時に接種することも可能です。ただし、「新型コロナワクチンだけは、今現状、ほかのワクチンと2週間以上の間隔をあけましょう」ということになっています。医学的に接種してはいけない理由があるわけではなく、新型コロナワクチンがまだ新しいワクチンということで念のための措置です。

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