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アップルは中国政府に対して、顧客のプライバシーやセキュリティにつき妥協をしていると何度も報じられてきました。それに加えて中国で施行された新たな法律により、さらに多くの顧客データを中国内に保存するよう圧力を掛けられる可能性があると報じられています。

有料ニュースメディアThe Informationによると、中国で9月に施行されたデータ安全法と11月1日に施行予定の個人情報保護法は、いずれも企業により多くのデータを中国国内に保存し、国外への転送を防ぐよう義務づけているとのこと。これらは中国の強力な規制機関である国家インターネット情報弁公室(CAC)が指揮を執っていると伝えられています

The Informationいわく、アップルはそうした圧力を受けている複数の米国ハイテク企業の1つになるかもしれないとのこと。今回のレポートでは、他にもテスラやLinkedInなど圧力の対象となり得る企業名も挙げられています。実際、マイクロソフトは10月14日(米現地時間)傘下のLinkedInを中国市場から撤退させると発表していました。

もしもアップルが中国政府の圧力に屈した場合は米国の議員からの批判にさらされる可能性が高いが、屈しない場合は中国当局が処罰を下し「サービスを停止することで国内での活動を困難にする」かもしれないとのこと。つまり、アップルは米中間で板挟みになっているというわけです。

そして中国・北京にある法律事務所の専門家は「CACが主導しているため、施行はより広く深く、厳しいものになるでしょう」と述べており、アップルにとって状況はかなり深刻となりそうです。

すでにアップルは現地法に従って中国内にデータセンターを建設し、そこに中国の顧客のiCloudデータを移転し、中国の企業に管理を委ねています。もっとも秘密にしているわけではなく「中国本土における iCloud サービスを向上していく素地が固まり、中国の法規制にも準拠できます」と説明しています。

しかしThe Information報道によれば、上記の新たな法律は事態を次の段階に進めるもの。すなわちiPhoneの使用統計データや、アップルのサーバーを経由するデバイスの接続や通信ログなど、さらに多くの情報を中国国内に保管することを余儀なくされる可能性がある。これらのデータにはデバイスの位置情報や使い方に関する情報が含まれており、中国当局が個人の特定や追跡に使うかもしれないーーといった危険が指摘されています。

アップルも中国政府の圧力には(最終的に譲歩するとしても)抵抗しているとも報じられたことがあり、中国が香港に国家安全維持法を導入したさいに香港ユーザーのiCloudデータを米国サーバーに保存しているとの声明を発表していました。今後のアップルの対応を見守りたいところです。

Source:The Information

via:9to5Mac