材料選びが重要!愛知県の郷土料理「味噌煮込みうどん」の作り方
秋の深まりとともに食べたい。アツアツの味噌煮込みうどん
愛知県全域の郷土料理として有名な味噌煮込みうどん。冷え込む季節にアツアツの土鍋で食べると、体も心もホッと温まります。
味噌煮込みうどんの歴史は古く、明治時代には愛知県一宮市の飲食店で提供されていたそうです。地域やお店で長きにわたって受け継がれてきた味は、なんとなく自宅で作っても簡単には再現できないはず。
教えてくれた人
名古屋文化研究者・名古屋芸能文化会代表/安田文吉さん
名古屋市生まれ。南山大学名誉教授、東海学園大学客員教授。名古屋文化研究をライフワークとし、東海近世文学会代表、名古屋芸能文化会代表、全国地芝居連絡協議会顧問などを務める。『なごや飲食夜話』(中日新聞社出版)をはじめ、名古屋の食と暮らしについての書籍も出版。
名古屋文化研究者である安田さんは、愛知県の伝統食、郷土料理にも詳しいそう。味噌煮込みうどんも幼い頃から親しみがあったと言います。
「現地の味を再現するには材料選びが大切です。材料は昔から受け継がれているものもあれば、時代とともに変わったものもあります。作る工程自体は、一般的な煮込みうどんとほとんど変わりませんよ」
愛知県ならではの特徴やこだわりがあるという材料。さっそく、選び方のポイントを教えてもらいましょう。
材料選びのポイント
味噌は赤味噌(八丁味噌)に限るべし
「味噌煮込みうどんを作るうえで欠かせない味噌ですが、必ず赤味噌(八丁味噌)を使いましょう。おすすめの八丁味噌屋は、『カクキュー』と『まるや八丁味噌』。どちらも江戸時代からの伝統的な製法を守る老舗です。だしの入った味噌ではなく、2年以上熟成して作られています。
色が濃いので辛口に見えますが、八丁味噌は塩分が控えめでまろやかです。濃厚なコクと旨味、独特の渋味や苦味がありますよ。煮込んでも味噌の風味がしっかりと残ります。
ちなみに八丁味噌の歴史は、江戸時代初期が始まり。名古屋が木桶(おけ)の産地だったため、木桶を用いた製法で作る八丁味噌が作れたと言われています」
だし汁はムロアジ節を使うべし
「だし汁には、昔からムロアジ節を使うことが多いです。ムロアジ節は、愛知県のソウルフードであるきしめんのだしにも使われています。使う直前に、ムロアジ節やカツオ節を削ると風味が増すのでより本格的に楽しめますよ。もし調理に余裕があれば試してみてくださいね。
ただ、お店によってカツオ節だったり、ムロアジとカツオの合わせだしだったりするので好みでも良いと思います。私は気分で、アゴだし(とびうおでとっただし汁)を使うこともありますよ」
肉は鶏肉を使うべし
「味噌煮込みうどんには基本的に鶏肉が入っています。鶏肉は、愛知県をはじめ近畿あたりまで、一般的に “黄鶏(かしわ)” と呼ばれていました。香川県発祥のかしわ天といえば馴染みがある人も多いと思います。かしわは、烏骨鶏の上に位置する名鶏で、現在の名古屋コーチンに引き継がれていますよ。
ただ、名古屋コーチンを使うのはなかなかむずかしいと思うので、使うのは鶏もも肉でOK。雑学として覚えてみてくださいね」
ちなみに…
「味噌煮込みうどんの麺は硬めというイメージをする人が多く、実際に硬い麺のお店もあります。“小麦粉と水だけで作る塩分を入れない麺を使う” のが基本と言われていますが、それはお店でうどんを手打ちで作ったこだわりのもの。
塩を使うと汁に塩分が溶け出してしまうなど、その理由は諸説ありますが、この麺の硬さによって食べにくさを感じる人もいるんです。
無理に硬い麺は使わず、自宅で作る場合はゆでうどん(白玉うどん)で十分。普通の硬さで楽しめるお店もあるので、食べやすさ重視で問題ありません」
材料へのこだわりや経緯を知ることで、作るときの意識も変わりそうですね!想像していたらお腹が空いてきました……。ここからは安田さんおすすめの味噌煮込みうどんレシピをご紹介します。
材料(2人分)
調理時間:約30分
・ゆでうどん……2玉
・油揚げ……1枚
・鶏もも肉……60g
・かまぼこ(赤)……40g
・長ねぎ……20g
・卵……2個
・だし汁……500cc
・赤味噌(八丁味噌)……大さじ3杯
・砂糖……小さじ1杯
「この材料が愛知県で食べられている主な定番具材です。お好みできのこを入れてもOK。鍋はひとり用の土鍋だと使い勝手がいいですよ。4~5人で食べる場合は、大きな土鍋で作って取り分けるスタイルでもいいですね」
下準備
・鶏もも肉は小さく切り、油揚げはさっとゆでて油抜きし短冊切りにする
・かまぼこは半月型の薄切り、長ねぎは斜め切りにする
・赤味噌と砂糖を混ぜておく
作り方
1. 土鍋にだし汁を入れて火にかけ沸騰させる
2. 混ぜ合わせた赤味噌と砂糖をだし汁に溶き、鶏もも肉と油揚げを入れて煮立てる
3. 煮立ったらうどんを加えて約5分ほど煮る
4. かまぼこと長ねぎをのせて卵を割り入れ、フタをしてひと煮立ちさせる
「うどんを入れてからの煮込み時間は5分が目安ですが、うどんによって火の入りが変わるので、煮込みすぎないように注意しましょう」
八丁味噌の旨味が体に染み渡る。本格味噌煮込みうどん
愛知県民に長年愛され続けている味噌煮込みうどん。おいしく手軽に作れるなら、自宅でほっこり温まりながら食べるのもいいですよね。
また、その料理の歴史を知ることで、材料へのこだわりや味わいの楽しみ方も変わるのではないでしょうか。つい誰かに教えたくなったり、食べて欲しくなったりするはずです。冷え込むこれからの季節に、本格味噌煮込みうどんをぜひ作ってみてください。
取材・文/内山 栞(macaroni 編集部)