離婚を切り出された、年収1,200万の夫。妻から見て圧倒的に足りなかったモノは…
“男女平等”が叫ばれている、昨今。
しかし「6歳未満の子を持つ夫婦の、1日あたりの家事・育児関連時間」は妻が平均7時間34分。
それに対し、夫は1時間23分(総務省「社会生活基本調査」)ほどだという。
日本における夫の家事参加率は、先進国の中でも最下位なのだ。
家事・育児に非協力的な夫。それに対し不満を抱き、愛想を尽かす妻たち。
これは、そんな「夫力(オットリョク)」皆無の男が、離婚を免れるために日々成長していく物語である…。

ある日突然降ってきた、妻からの離婚宣告
「俊平、離婚したいの」
あれは平日の疲れが溜まっているからと、ひたすらダラダラと過ごしていた日曜の午後だった。
テレビからはゴルフ中継が流れていた。18番のティーショットを見ながら、僕はソファで横になりつつ、のんびりしていたのだ。
そのときソファの背後から、柚葉の声がしたのである。
「…だから、離婚したいの」
どうして妻は、同じことを二度も繰り返したのだろう。あぁ、そうか。僕が今、何を言われているのか理解できず、寝転がった姿勢のままソファからずり落ちたせいだ。
洗濯カゴを抱えたまま、地蔵のように動かぬ柚葉。
「どういうこと?今日って、エイプリルフールだっけ…?」
自分でも、ひどい返しだったことくらいはわかっている。
だがそんなことを言ってしまうほど、自分でも動揺していたのだ。
そして妻のこの一言がすべての騒動の始まりであり、今後半年に渡る、戦いの始まりだったのだ…。
結婚3年目。幸せだったはずの夫婦に訪れた、突然の悲劇
柚葉と結婚したのは、3年前。
当時29歳だった彼女と、33歳だった僕。お互い結婚適齢期だったし、交際2年を経てからの結婚は早すぎもせず遅すぎもせず…といった感じだった。
現在も、大手外資系の化粧品会社に勤めている柚葉。そんな彼女は、出会ったときから僕の憧れでもあった。
綺麗な黒髪ロングヘアと切れ長の目が印象的で、どこか人を惹きつけてやまない存在だったのだ。
仕事もできて、テキパキしている。でもクールな見た目とは裏腹に情け深く、後輩からの信頼も厚い。
僕のような小中高一貫の男子校出身で、競争社会とは無縁の世界で生きてきた“のんびり屋”とは、まるで正反対。いつも彼女に引っ張ってもらっていた。
唯一、僕が男らしさを発揮したのは、結婚を申し込んだときくらいだ。
「柚葉、結婚しよう」
月並みな言葉だったかもしれないけれど、僕なりに精一杯頑張ったプロポーズ。そしてその言葉を受け入れてくれた柚葉と、晴れて結婚。
僕の実家・田園調布からほど近い世田谷区に2LDKの中古マンションを購入し、愛の巣もできた。
この3年間。日々細かなことで柚葉から言われてきたことはあったけれど、基本的に毎日楽しく、幸せに暮らしていたはずだった。
だからこそ、突然の「離婚したい」という言葉に心底驚いてしまったのだ。
「ねえ、離婚したいって…。理由は?」
そう聞くのが、やっとだった。
だが柚葉は、やはり強かった。動揺する僕に対し、理路整然と離婚理由を述べ始めたのだ。

「だって、俊平に家事能力がなさすぎるから。正確に言うと家事能力というより、家事に非協力的すぎる」
そう言う柚葉の勢いに圧倒されつつも、何も言い返せない自分がいる。思い返してみると確かに、家事を任せっきりにしていたのかもしれない。
「俊平、最後に洗濯機を回したのはいつ?そもそも、結婚してから掃除機という物を触ったこと、ある?」
ぐうの音も出ないというのは、まさにこういうときのことを指すのだろう。
― あれ?そもそも、掃除機ってどこにあるんだ?
それすら知らない。
「それに、ご飯は食べたら食べっぱなし。洗い物さえしない。私のこと、なんだと思ってるの?あなたの家政婦さん?それとも、ママですか?」
言われてみれば、食事を終えるといつもそのままソファへ行ってダラダラしていた僕。
でも後でお皿を運ぼうと思っていたし、食器が溜まったら一気に洗おうかと考えていたときもある。
ただいつも、気がつけば柚葉が先にやってくれていたのだ。
何度も「お皿くらい運んで」と言われたものの、のんびりと放置していた僕を横目に、妻がテキパキと片付けていた。
「ごめん。でもあれは、後でやろうかなと思っていて…」
そんな僕の言葉なんて一切耳に入っていない様子で、柚葉は冷静に話し続ける。
「それから、夫婦間における家事分担の不平等。2人とも仕事がある。お互いイーブンのはずなのに、どうして毎日、私だけが家事をしているの?それっておかしいと思ったことはないの?」
それだけ言うと、彼女はスウッと大きく息を吸い込んだ。
「総合的に、夫力が無さすぎる」
- オットリョク…?
まるでハンマーで殴られたかのような衝撃だった。そんなこと、一度も考えたことがなかった。
柚葉はいつも率先して動いてくれていたし、何より僕がやるよりも妻がやったほうが綺麗になる。
そもそも、僕は汚くてもあまり気にしない性格だ。
だから柚葉は、喜んで家事をしているのかと思っていたのだ。
妻が家事をするのを「当たり前」だと思っている夫に対し…
「気持ちが変わることはないのかな?悪いところがあれば、直すから」
もうプライドなんてない。そんなしょうもないもの、かなぐり捨てればいい。気がつけば、僕はソファの上で正座をしていた。
今はただ、愛する妻の気持ちを取り戻したい。
そして離婚を回避できる方法があるならば、全力で行動に移すつもりだった。
「悪いところ…?」
眉を片方だけピクッと上げた柚葉の声が、静かに響く(悔しいけれど、こんなときでも妻は美人だ)。
「夫力、あげられる自信はある?」
僕には今、その“オットリョク”とやらが、どれくらいあるのかもわからない。どうすれば上がるのかさえ、全く見当もつかない。
でも、今はやるしかないのだ。僕の答えは、ただ1つ。
「もちろん。僕、頑張るよ!!」
すると空を仰いだ妻が、腕を組んでしばらく考え込んだかと思うと、こんな提案をしてきた。
「わかった。じゃあ半年待つから、その間に証明して見せて。もし俊平が変わったならば、離婚の話はナシにするわ」
― 半年か。きっと、なんとかなるだろう。
中山俊平36歳。東京都出身、大手広告代理店勤務。趣味はサッカー。笑ったときに右側だけ出るエクボがチャームポイント。
そんな僕に、今こそ変わるべきときがきたのだ。
「わかった、頑張る!!絶対に頑張るから」
こうして、僕の半年に渡る“夫力を磨く修行”がスタートしたのだ。
だがこのときの僕は、知る由もなかった。
まさか妻の心が「流星くん」とかいう、妙にキラキラした名前の別の男にかっさらわれていたなんて…。

◆妻の日記◆
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8月31日(火曜日)
夫に、ついに離婚を切り出した。切り出した途端、俊平があまりにも驚くから、私も驚いた。
私の不満に全く気づいていなかったなんて…。
俊平は「頑張る」と言っていたけれど、夫の「頑張る」ほど当てにならないものはない(天気予報のほうがちゃんと当たると思う)。
でもしばらく、様子を見ようと決めた。ただ本当に俊平は変われるのだろうか?正直、期待値はかなり低い。
…そろそろ、流星くんに会いに行かないと。
大好きな流星くんがいるだけで、私の心は晴れやかになるし、 満たされる。彼がいないと、もう私は生きていけないのかもしれない…。早く会いたいな。
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遂に離婚を決意した妻。夫に待ち構えていた試練とは…?

