新型コロナウイルスのパンデミックを起因とする半導体不足が叫ばれていますが、不足しているのは半導体だけでなく「HDD」や「SSD」も同様であるとテクノロジーメディアのExtremeTechが報じています。

Cryptocurrency Manipulation Is Causing Short-Term HDD, SDD Shortages - ExtremeTech

https://www.extremetech.com/computing/322261-crypto-manipulation-is-causing-a-short-term-storage-shortage



Hard Drive Prices Skyrocket In Asia Due to New Chia Cryptocoin, Scalpers Capitalize | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/news/hard-drive-prices-skyrocket-asia-scalpers-making-bank

ExtremeTechが複数の報道を基に、「新しい暗号通貨の登場を利用したパニック買いにより、アジアではHDDやSSDといったストレージが品薄状態に陥っている」と報じています。

ストレージ不足を最初に報じたのは中国メディアのTime Finance。比較的新しい暗号通貨である「Chia」に関するウワサを広めることで、PCコンポーネントの価格をつり上げたいと考えているハードウェアベンダーがストレージ不足を意図的に引き起こそうとしている、と報じています。



Chiaはこれまでほかの暗号通貨で使用されてきたコンセンサスアルゴリズムの「Proof of Capacity(PoC)」に代わり、「Proof of SpaceTime(PoST)」というアルゴリズムを採用しています。PoSTは同じストレージプールを繰り返し利用することができないという点で、PoCと異なるアルゴリズムです。

Chiaはネットワークの合計ストレージ容量にどれだけストレージを提供したかに基づいて報酬が与えられるシステムとなっているため、Chiaのような暗号通貨が成功すれば、ローカルストレージプールの価値を直接金銭的価値で測ることが可能になります。そのため、Dellのようなストレージを販売するメーカーは、「GB」や「TB」といったストレージ容量に基づいた時代遅れの表記ではなく、「500 Chia」のような「このストレージでどの程度の暗号通貨(Chia)をマイニングできるか」がわかるように表記するようになる可能性も指摘されています。なお、注意すべきなのが、Chiaはまだ公開されていない暗号通貨であるという点です。



Seagateは四半期決済報告の中で、「暗号通貨マイニングによりストレージの需要が急増したことを確認している」と報じていますが、Times Financeは「HDDやSSDの不足は、個々の再販業者がストレージを買いだめしているため」と報じています。そのため、ExtremeTechは「再販業者によるストレージのパニック買いと、Chiaによるマイニング需要が重なり、アジアでストレージ不足が発生しているものと思われる」と述べました。

また、テクノロジーメディアのTom's Hardwareによれば、中国ではSeagateやWestern Digital製のHDDが値上がりを続けており、中国で人気のオンラインストアであるJD.comやTaobaoでは両社の製品の多くが売り切れになっているとのこと。特に大容量の16TBや18TBのHDDが人気のようで、販売価格は最大66.7%も高騰している模様。

Chiaによる需要は中国に限ったことではありません。2021年4月21日に日本の情報系サイトエルミタージュ秋葉原が、マイニング需要で大容量のHDDが品切れ状態に陥っていると報じており、実際に販売店舗がHDDの購入制限をアナウンスしているケースもあります。



なお、ExtremeTechは「過去5年間でGPU市場のほぼ半分をマイニング需要が埋めてしまい、市場をめちゃくちゃにしてしまいました。そのため、マイニング市場が新たにストレージにまで影響するような未来はふさわしくありません」と報じています。