by Mallefet et al., Front. Mar. Sci., 2021

エサとなる魚をおびき寄せるために頭部の突起を光らせるチョウチンアンコウなど、海の生き物はしばしば生物発光により体から光を発することが知られています。ニュージーランド沖で見つかった深海性のサメの研究により、生物発光を行う脊椎動物としては最大の種が特定されました。

Frontiers | Bioluminescence of the Largest Luminous Vertebrate, the Kitefin Shark, Dalatias licha: First Insights and Comparative Aspects | Marine Science

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2021.633582/full

We Just Found The Largest Luminous Glowing Shark Species in The World

https://www.sciencealert.com/three-new-luminous-glowing-sharks-have-been-found-living-in-the-ocean-s-dark-depths

Glow-in-the-dark sharks captured on camera for first time ever

https://www.9news.com.au/national/glow-in-the-dark-shark-photographed-producing-own-light-in-world-first-by-scientists/4c441d3d-a427-4753-bf58-9e73eb1ab277

ベルギーのルーヴァン・カトリック大学の海洋学者であるJerome Mallefet氏らは、古くからその存在が確認されながらもその生態には謎が残されているヨロイザメ、フジクジラ、トゲニセカラスザメについて調べるため、各種のサメの標本を入手。暗所での撮影や解剖により、体表が発光している様子や発光器の有無について確認しました。

その結果、3種のサメ全てが体表などに光を発する器官を備えていることが分かりました。以下は、ヨロイザメの側面(上)と背面(下)を明るい場所及び暗所で撮影したもの。体の表面だけでなく、背ビレの一部(赤色の矢印)まで光っています。



by Mallefet et al., Front. Mar. Sci., 2021

今回生物発光することが特定された3種のサメのうち、特に体が大きいのがヨロイザメで、最大で全長180cmまで成長することが分かっています。このことから、Mallefet氏らはヨロイザメを「発光することが判明している既知の脊椎動物としては最大」と位置づけました。

また、以下はフジクジラの発光パターンを撮影したもの。フジクジラでは、特に腹側に発光器が集中している様子が観察されました。



by Mallefet et al., Front. Mar. Sci., 2021

ヨロイザメやフジクジラ、トゲニセカラスザメは、いずれも水深200〜1000mの「トワイライトゾーン」と呼ばれる領域に生息しているサメです。この深さの海にはごく微弱な太陽光が差し込むので、より水深が深い領域から海面の方向を見ると、泳いでいる生き物のシルエットがくっきりと浮かび上がります。

そのため、科学者らは「サメは、自ら発光して薄明かりの中に体を溶け込ませるカウンターイルミネーションを使って身を隠し、獲物に忍び寄っているのではないか」と推測しています。ただし、カウンターイルミネーションだけではヨロイザメのように背ビレまで光るという点を説明できないため、研究チームはさらなる調査が必要だと結論付けました。

世界最大の光る脊椎動物を特定した今回の発見に際して、Mallefet氏は「私の目標は、地球上で最も広大なのにもかかわらず謎が多い深海についてもっとよく知り、その環境を保全することの重要性について人々に知ってもらうことです」とコメントしています。