バブル世代が陥る老後資金問題“寿退社の罪”を専門家が指摘
バブル世代の女性といえばボディコン、太眉、赤リップ。アッシーメッシーを抱え、ディスコで踊り明かしたパワフルな彼女たちも、今では50代。活気にあふれたバブルの恩恵を享受したとされるこの世代だが、実は「老後のお金に注意が必要な世代」と、FPで夫婦問題コンサルタントの寺門美和子さんは指摘する。
■「寿退社」が年金受給額を減らした
「‘86年には男女雇用機会均等法が施行されましたが社会は子供のいる女性をなかなか”正社員”として認めませんでした。また、旦那さんも妻が働くことに対し消極的な方が多く、なんだかんだ”寿退社”してしまう方が多かったのです」
第三号被保険者の専業主婦は国民年金のみの加入となるため、働き続け厚生年金に加入していた場合に比べ、将来受給できる年金額が少ないのだ。
「それでも夫が『君の生活はすべて僕が支える』と結婚当初のようにふるまい続けてくれていたらいいかもしれません。しかし、いざ『働かざるをえない』となった場合、長い間家庭にいた女性にとっては働きに出ることは精神的ハードルがとても高い。また、スキル的にも良い条件の雇用はなかなかないという現実も……。それらの壁を超えられず『働かなければいけないとわかっていても働けない』という罪悪感を抱えてしまう女性もいるのです」
■『老後は年金暮らし』をいまだに信じている
また、バブル世代が若いころ、高齢者で困っている人が少なかったことも、現在の金銭感覚に影響すると寺門さん。
「同じ50代でも当時の50代はバブル期の株価上昇により資産をしっかり蓄えていましたし、『老後は年金暮らし』が世間的にも普通の考えでした。その結果、老後のお金に対し危機感をもつ機会がなかった。年金や資産運用など、それより下の世代の人たちには備わっているマネーリテラシーがないまま50代を迎えた、という人が多いのです。彼女たちは、自分が受け取る年金額さえよくわかっていないこともあるのです」
■長生きしないと思っている
「ちょうど更年期を迎えるバブル世代。女性は更年期を迎えると体調を崩しやすくなり、『もう何年も生きることはないな…』と思いがちです。しかし、自分たちの上の世代を想像してみてください、ピンピンしていませんか? 60歳を超えるころにはまた元気がわいてきますから、自分は70くらいで死ぬだろうと思っている人は要注意です」
さらに、生きるとしても平均寿命くらいだろう、という考え方も危険だという。
「女性の平均寿命は87歳ですが、女の人が最も多く亡くなる年齢は92歳です。その次は93歳。長生きはいいことですが、残念ながらお金の面では、思っている以上に長く生きることで苦労するという現実もあります。
まずは、自分が92歳まで生きるとして、月々どれくらいのお金が必要なのか、ざっくりでよいので計算してみてください。その次に、自分たちの年金がいくらもらえるのか調べてください。必要なお金からもらえるお金を引いた差額が、貯金や収入によって工面しなければならないお金です」
自分の年金受給見込み額は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や日本年金機構が運営するウェブサイト”ねんきんネット”などで確認することができる。
最後に寺門さんが、バブル世代にこうアドバイスする。
「成人式から約30年が経ちましたが、あっという間だったと思います。これからの30年も、きっとあっという間でしょう。しかし違うのは『想うようにからだが動かなくなる』こと。若いうちは、気力や体力でカバーできたことも、できなくなります。『備えあれば憂いなし』今こそ、その言葉の重みを考え、実践してください。」
老後のお金に対し、悲観的になりすぎるのもよくないが、楽観的に考えすぎるのも注意が必要そうだ。