コラム「小1息子、学校行きたくないってよ」を書いてから早一年。

これが掲載されたあと、意外なことにたくさんの方から、「じつはウチもそう」「分かる!」「寄り添い向き合うコツをやってみる」という感想をいただきました。いわゆる「行き渋り」の子はけっこういて、おもにに母親たちが思い悩んでいることを知ったのだ。

そこで今回は、小2となった息子に起こったこの1年のことをさらすので、何かの参考になれば幸いです。願わくば、お母さんたちの心の負担が少しでも軽くなりますように……。


さて。
集団登校の子どもたちが出発した後、息子と娘と私は今日も、手をつないで通学路を小学校へと向かう。去年は学校に行くことがイヤで、なおかつ「煮え切らない何か」を抱えて暴れていた息子も、到着は遅れるものの、今ではすんなり教室へと入っていく。

……などと書いてしまうと、さも子どもに寄り添ってきた風だがそうではない。
手つなぎ登校がルーティンとなった今も私は、「いい加減ひとりで登校してくれ!」と叫ぶ日はあるし、「ダルいな〜。誰もほめてくれないし……」と思う。そのくせ、毎朝私たちを見ているママさんに「お母さん、エライ!」と褒められれば「いや、大したことなくて……」ともじもじしてしまう。

要は、息子も私も、葛藤を繰り返した果ての妥協地点にいて、そのバランスが今、たまたまちょうどいいのだ。この1年で私たちが培うことができたのは、「こんなもんだよな」と現状を受け入れる力(悪く言えばあきらめ)、そして共通の好きなコンテンツを通じて深めた友情と親子の信頼関係だった。

■ムリすると、こちらが倒れる長期戦


去年、息子が「学校に行くのは嫌だ、死にたい」と言い出し、紆余曲折を経てたどり着いたのは「キミの気持ちはわかった。でも、学校はできるだけ行っておこう。それ以外のやりたいことにはできるだけ付き合うからね」という方針だった。

いわば好きなことで人生の充実感を味わいながら、気の進まないことを惰性でこなすという方法だ。逆をいえば、それが私にできる最大の譲歩だったから。

「一週間くらい学校を休めば?」
と各方面から言われたが、それは無理だったのである。息子は、何がイヤかもよく分からないが、「とりえあえず!この状態が!オレがイヤだーーー!!」と四六時中イライラして、狂暴だった。怒りをあえてこじらせているのか、白目+過呼吸のようになって叫びながら殴りかかってくることもあった。

こちらは甘えているんだな、試しているんだな、と思いながら、手を出せないからキツい。なんというか、一発殴って解決してしまえばラクだろうけど、それを抑えながら正当防衛で畳にゴロンと受け流すしかない。8歳男児ともなればけっこう強くて、1回1回が「気を抜いたらヤラれる!」と冷や汗をかきながらのタイマンである。ある時は15回ほど転がしてようやく終息した。

というわけで、私は子の不調に対応する最適解は、ふだんからその子に接している大人が持っていて、その人が決めていいと思っている。学校を休ませた方が良さそう?ならそうすればいいし、旅行が良さそうならすれば良い。あくまでその親子にあったスタイルでいいと思うんです。

ウチの場合は、平日ワンオペで5歳児がいて、私はフリーランスのため案件を断りたくない。そして息子と家にいたくないという前提でカードを切る必要があった。月2〜3万ならプラスの出費はOK、週1〜2回なら夕方から2時間くらい時間が使える。事態が悪化しないなら、これらをうまく保ちながら長期戦の構えであった。

■軸足を好きなことに置いて、惰性で学校


時に狂暴化する息子だったが、好奇心があり、興味のあることが存在していて助かった。例えば、ボルダリング、和太鼓、料理、ダンス、絵、ドラえもん、ゲームなど。興味は2〜4週間のペースで入れ替わる。

だから私もボルダリングをし(ものすごい筋肉痛に襲われた)、押し入れで寝て(乾燥がひどくて喉を痛めた)、踊って絵を描き、歴史の知識を深めた。「学校から帰ってきたら●●しよう!」「朝、早く起きて○○しよう!」と生活の中心をコンテンツに置くようにしたのである。イイコトで心を満たして、イヤなことの麻酔にする感覚だ。

私が真剣に遊ぶと息子は満足する。逆をいえば、真剣でないと不満である。だから私の得意なフィールド、歴史方面へ誘導し、一緒にゲームをして本を読み、息子のナゼ?にこたえて少しばかり尊敬も集めた。ふたりとも沼に沈んでいる状態であれば、沼の外が荒れていても心の安寧が保てる。オタク気質で良かったと思う。

こうしているうちに息子の「死にたい」は減り、2年生となって学童が変わった。そこが自由な雰囲気であったことが幸いし、息子は取っ組み合いのけんかの横でしれっと漫画を読み、工作好きな友だちはやがて親友となって、みんなで「にゃんこ大戦争」の沼に墜ちた。

その時、学校の息子のクラスでは学級崩壊を起こしており、2学期は1度しか連絡帳を書いてこない有様だったが、「にゃんこ」の絵は毎日大量に発掘され100枚を超えただろう。子どもたちの熱量を感じてうれしかった。

ありがたいことに、好きなコンテンツの力、それを一緒に楽しめる親友と親の存在、自由な学童と、担任の目が届かないゆえに縛りの少ないクラスとが相乗効果を起こし、息子は家でもよく笑うようになっていったのだ。

■コロナ休校とその後はいったん暗黒


2020年、予想外の出来事といえば無論、コロナ禍である。春ごろから人生自体が楽しくなってきたような息子だったが、コロナ休校中とその後、私たちはいったん落ち込んだ。

私が家事育児宿題仕事の4重苦でおかしくなり、子どもたちもその影響を被ったのだろう、狭い家の中ではきょうだいげんかが絶えず、息子の「5年間の恨み」が爆発。

【参照】「きょうだい喧嘩「仕返しOK」で平和になった本当の理由
http://mamapicks.jp/archives/52307771.html

この一件はターニングポイントにもなった。息子は徐々に怒りをおさめられるようになり、「ぎゅうして(抱きしめて)」など、してほしいことをきちんと言葉で伝える。甘えたくても言えずに、怒りを家出で表したり、かまってほしいのに「ひとりがいい」とうそぶいていた息子は、少しずつ素直になっていった。私たちはようやくコミュニケーションを円滑にとれるようになったのである。

現在の息子は、連絡帳を書いてくるようになり、学校や学童で宿題をやるらしい。かたくなに無視していた音読もこなし、「学校は少しイヤだけど、そのあとの学童が楽しいから行ける」と前向きになっている。校門の前では誰が見ていようとも必ず何度か「ぎゅう」をして向かっていく(恥ずかしいという気持ちはないという)。

こうして振り返ってみると、息子は好きな人と好きなことをやって心を満たしながら、「煮え切らない何か」をずっと煮続けて自分の中にくすぶる問題を小さくしていったように思う。やりたいことと、やりたくないことのはざま。できることと、できないことのはざまをジグザグとぬって模索したあとに、彼なりの納得にたどり着いた。いわば気持ちに折り合いをつけるプロセスを体験し、糧としたのだと思う。

私たちは今、ひとまず穏やかに過ごしているが、これから息子にも私にも壁は出現してくるだろう。今回の「沼にハマって辛さをやりすごす作戦」は今後も使える。むしろそういう大人は多いんじゃないか……何を隠そう私自身もそうで、一緒に楽しんでくれた息子と娘のおかげで、気持ちが満たされて笑うことができているのだと思う。

さて、最後にハマったコンテンツ一覧を。
親も本気で楽しめることがポイントだ。

  • 大縄跳び(Amazonで購入)

  • ジャズダンス

  • ボルダリング

  • ドラえもん(漫画&アニメ)

  • 押し入れで寝泊まり

  • 秘密基地ごっこ

  • 三国無双(ゲーム)

  • 戦国無双(ゲーム)

  • にゃんこ大戦争(ゲーム)

  • マインクラフト(ゲーム)

  • ヒカキンTV(YouTube)

  • 戦国炒飯TV(テレビ&YouTube)

  • 鬼滅の刃(漫画、工作、歌)

  • 銀の匙(漫画)

  • はたらく細胞(漫画)

  • るろうに剣心(漫画)

  • バスケットボール

  • 沼にハマってきいてみた(テレビ)

  • ぬりえ(大人用の細かいもの)

  • おしりたんてい(アニメ、本)

  • 迷路(書く)

  • トランプ

  • ことわざカルタ

プリキュアが大好きだった娘は、私たちに引きずられ、「信玄と謙信の方が好き」というまでになった。環境のちから、おそるべしである。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。